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執事ローウェン


ローウェン=スラー。


ウェーブのある黒髪を綺麗に後ろへとまとめ、組みひもで結んでいる。落ち着きのある視線。そのグレーの瞳は、吸い込まれそうなほど深く、濃い。


彼は代々この領主に執事として仕え引き継がれてきた、スラー家の長男に生まれ、幼少の頃からリューンの側につき、その世話をこなしてきた。


リューンとローウェンは、その頃からほぼ対等に近い関係で、あるいは幼なじみとも言っても過言ではない親しい間柄だ。


先代の領主、すなわちリューンの父親が病気で亡くなったときのことだった。


不思議なことが起きた。

リューンがその王位や名前を継ぐ、その時が来た。「名前を握る力」、先代の持つその忌まわしき力も、なぜなのかはわからないが、リューンへと受け継がれたのだ。


その時リューンはまだ13歳の若さ。ことの重大性を認識することはできなかっただろう。


ローウェンはリューンより2歳、年上だ。リューンが名を握る力を得た時、彼は執事として仕えること、そしてそのために自分の名前を差し出すことに、抵抗はなかった。


自分の運命を家柄上、いとも簡単に受け入れた形となる。


(だが、私にとってこれが自然の流れだった。執事として使われることに別に不満などはないが、)


けれど、時々。


なにも知らされずにこの城へと職を求めてくる者たちがいて、名前を握られることによってこの領主と城にがんじがらめになってしまうのを見ていると。


本当にこれが正しいことであるのかと、懐疑の念に襲われることがある。


ローウェンは、小さな小さな溜め息を吐いた。


(だがまあ、ちゃんと契約書を交わして、本人の納得と了承を得てからなのではあるが、な)


この歪んだ主従関係。


実はリューン自身が、この主従関係に心を痛めていることを、ローウェンは知っていた。


城で使う者は最小限に抑えようとすることからも、そんなリューンの葛藤が垣間見える。


けれど執事という立場上、その歪んだ主従関係を否定することも批判することも許されない。それを苦く思うリューンの気持ちを知っていたとしても、たとえ幼なじみとしてであっても、慰めることなどは到底できないのだ。


ローウェンは長年、その複雑な思いを自分の胸に仕舞い込んでいたのだった。


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