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許しを


リューンは握ったこぶしに力を入れた。


「とても可愛がっていたのだよ。もちろんソフィアもムイを同じように可愛がっていた。それにムイの歌のファンがそこら中に大勢いて、俺の鼻も高かった」


「…………」


「ムイの真の名前はまだソフィアにしか使われてはいないが、この後、俺がこの国を統治していくのに、必ず必要不可欠となろう。ムイは渡さない。例え、お前たちがどれだけ愛し合おうともな」


「ムイは、真の名前の持つ力を忌み嫌っております。力を使えば、必ずムイは不幸になるでしょう。それは、私自身がそうだったから分かるのです」


「そうか、そうだったな。リューン殿も、名を握る領主と呼ばれておったな」


「はい、ムイのお陰で力を失いましたが、その頃よりも今の方が心も安らぎ、幸福です。人を操るなど愚かな行為をムイに強制させないでください」


「なんだと、俺を愚かだと言いたいのか?」


リューンはシャルルをじっと見据えた。


「逆にお聞き致します。ムイは真の名を失うまでの間、反対される陛下に対して、力を使いましたか?」


「うむ、それは……」


リューンは声に力を込めた。


「ムイは善人なのでそれを良しとしないのです。妃殿下を始め、今はブリュンヒルドのライアンの元に嫁いだサリーの病を治すこと以外には使っていないはずです」


「む、」


「どうぞムイを解放してやってください。ムイは特別な力など欲してはいない。その力を行使しろと命令しても、言うことは聞きますまい」


「聞いておられるようですよ」


背後で声がして、リューンはげんなりとした。この世で一番、聞きたくない声だった。


気分が悪くなるのを我慢して振り向くと、リアン宰相が大広間へと入ってくる。


「お話し中に失礼致します」


リューンの横に並んで片膝をつく。


「なんだ、何の用だ、リアン」


シャルルのイライラとした不機嫌そうな声で、リアンが陛下からも嫌われていることがわかる。


(邪魔をするな)


リューンは心で思うが、国王の前でその側近の一人に向かって口には出来ない。横目で見るリアンの顔が、ニヤニヤとにやけていて、リューンはさらに胸を悪くした。


「陛下、大変なことになっているようですよ。リューン殿の領地、リンデンバウムがあろうことか陛下に対して反旗を翻しております」


「なんだとっ‼︎」


シャルルではなく、リューンだった。


「どういうことだ、それはっ‼︎」


今にも胸ぐらを掴みかかりそうなリューンから離れて、もう一度シャルルに向かって話した。


「ムイが真の名を使って、領民を煽動しているようです」


「そんなバカなことがあるかっ‼︎」


「歌のリサイタルと称して人々を集め、国が貧しく民が苦しいのは、国王の責任だと鼓舞しているそうです」


「なんだと」


シャルルがとうとう立ち上がった。


「まさか、ムイがそのような……」


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