表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

178/205

謁見


「国王陛下、ご無沙汰しております」


リューンがひざまづいて頭を垂れると、国王シャルルは組んでいた足をほどなくして組み替えた。


シャルルとは、リューンが子供の頃に一度だけ顔を合わせている。その時の国王ははまだ即位したばかりであまりにも若く、そしてさらに若かったリューンにとっては雲の上の存在で、終始緊張して恐れていたことを思い出す。


「リューン殿、息災であったか?」


「はい、」


「ムイと結婚したそうだな」


挨拶もほどほどにこの話題かと思うと、苦笑いしかできない。垂れていた頭を上げて、ひざまづいたままシャルルを見た。


「はい。陛下にもお心を配っていただき、誠に感謝を申し上げます」


結婚の許可状に、シャルルのサインが無かったのをリューンは苦く思い出した。


「リューン殿への許可状をユウリに持たせはしたが、どうやら不備があったようだな。申し訳ない」


口から謝罪の言葉が出てはいるが、その目は冷ややかで冷たかった。


「いえ、それを今日、いただきに参りました」


胸に手を当てる。内ポケットには、以前ユウリから渡されたサインのない結婚の許可状が入っている。


それを出そうとして、制された。


「悪いが、サインはできない」


リューンが手を止めた。途中まで出された紙は、行き場を失ったように固まった。


「何故ですか」


「ムイは俺の歌姫だ」


「楽団は退団しています」


「ああ、それもムイには聞いている。歌を歌えなくなったと。そればかりでなく、真の名も覚えていないとほざきおった」


「…………」


「あれほど目をかけてやったのに」


吐き捨てるようにシャルルは言った。


「とにかく声も名前も取り戻せたのだから、またここの楽団で歌を歌わせる。リューン殿には申し訳ないが、ここは折れてもらわねばなるまい」


「ムイはもう私の妻です。ムイを愛しています」


シャルルに真っ直ぐに向き直って、リューンは力強い声で言った。その様子を見て、シャルルも負けじと声を張った。


「リューン殿がそう言うなら、俺も言おう。同じように俺もムイを愛しているとな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ