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歌を披露する


「大変です、リューン様。城の門の前に人が集まり過ぎて……」


リューンが廊下でローウェンと話をしていると、廊下の先からバタバタと騒がしい足音が聞こえてきた。

侍女のジュリが息を切らして走ってきて、二人の前でお辞儀をする。


「皆さんが、ムイの、ムイ様の歌を聴きたいと、口々に……」


ジュリが胸の前で手を握って、はらはらとしている様子を見せる。


「とにかく、城に入れるわけにはいかない。ムイは金輪際、歌は歌わないと言って、追い返すしかないな」


「リューン様、」


ローウェンが進み出て、リューンへと顔を向けた。


「まあ、いっときの騒ぎだとは思いますが、ここで逆手を取ってムイに歌を歌わせる、ということも有りですよ」


「何を言っている、ローウェンっ。そんなことをしたら、領地外からも人々が押し寄せ、る、ぞ」


ローウェンの顔にいささか余裕があるのを見つけると、リューンはふむ、と考え込んだ。


「人々を外から集め、大勢の前で堂々と結婚式を行える、ということか」


「そうです。なんせムイには国王陛下の元歌姫の肩書きもありますからね。その歌姫が歌を歌うとなれば、たくさんの人が集まるでしょう。リューン様、あなたも大勢の観客の前で、ムイは俺のものだと誓いのキスまでできますし、一石二鳥ではないですか」


物怖じしない物言いに、リューンは睨みをきかせてから言った。


「お前を殴りたい気分だ」


「それはどうも」


ツンと顔を背けると、「これは忙しくなりそうだ」と言って、その場を離れていった。


「リューン様、それではアランに頼んで立て看板を立てましょう」


ジュリが急いで廊下を戻る。


リューンは踵を返して、ムイの部屋へと向かった。


(国王がどう出るか、気になるところではあるが……)


リューンはドアの前に立ち、トントンとノックをする。中から声がかかって、ドアを開けた。


「ムイ、お前に話したいことが、」


ムイの他に、一人女性がいる。二人は同時にリューンへと顔を向けると、膝を折って挨拶をした。

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