表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

130/205

慰めたい


「陛下もお喜びになりますわ。陛下はムイ様をとても愛でていらっしゃるのですから」


「わ、私はっ」


「陛下に愛されていらっしゃって、正直、羨ましいですわ。ですから、お互いに一緒にいて幸せな相手を選びましょう」


「リュ、リューン様はっ」


「リューン様はわたくしをお選びになった、ということですわ。とても情熱的に、わたくしを求めてくださいました」


ムイは、自分の顔が真っ青になっていくのがわかった。血の気が引く、ということを今、実感している。


涙が、ほろ、と落ちた。同じように言葉が溢れ落ちる。


「……けれど、私はリューン様のお側に」


「邪魔なのよっ‼︎」


ユウリは声高に言い放った。早朝の廊下だということと、ローウェンを警戒してか、声をいくらか低くして続けていった。


「邪魔をしないでいただけますか。わたくしとリューン様は愛し合っているのです」


「…………」


次から次へと、ぽろぽろと溢れていく涙を頬に感じながら、全身から力が抜けていくような感覚に陥った。


そしてそのまま、ムイは座り込んでしまった。廊下の床の冷たさでなく、中心から少しずつ凍っていくような寒さに身震いする。


「心だけでなく身体も結ばれたのだから、ムイ様、あなたはどこかへ去っていただかないと」


ムイを冷ややかな目で見下ろしながら、それだけ言い捨てると、ユウリは立ち去った。


「どうしよう、どうしよう、どうしよう、」


自分でも知らないうちに、ムイは何度も呟いていた。

涙がとめどなく溢れてくる。


「どうしたらいいの……」


そのまま、うな垂れるしかなかった。涙が廊下の絨毯を染めていく。




「ムイ先生っ。僕たちがいるからね」

「僕がお花をたくさん持ってくる」


その声で我に返る。気がつくと、カイトやシノキノの腕の中で涙を流していた。


知らぬうちに唇をぎり、と結んでいた。けれど、感覚は麻痺していて、痛みはない。


「ムイ」


カイトのその声で顔を上げた拍子に、涙が散った。


「ムイ、誰が君を泣かせているんだ。俺に話してくれ。何だっていい、何があったか教えてくれ。君の力になりたい」


「う、」


抑え込んでいた感情が、ぽろりぽろりと剥がれ落ちて、裸になっていく。


「君を慰めてやりたいんだ」


腕にそっと力が入る。


頬に。カイトの頬が重ねられた。


「泣かないでくれ」


耳元でそっと囁かれ、ムイは声を吐き出した。


「うう、ん、うぅ、」


背中が小刻みに打つ。その背中を、カイトの大きな手が抱きしめながら、優しくさする。


そして、頭をぐっと抱かれ、カイトの広い胸に押しつけられた。髪にキスをされたような気がしたが、ムイはそのまま泣いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] つらい展開が続きますね。 リューンとムイは擦れてなさすぎるのでしょうか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ