後悔
「収穫祭は本当に楽しみですこと」
「……そうだな」
「わたくし、お祭りは大好きなのです」
「そうか。それは良かった」
ちらと、リューンはムイの席を見た。昼食の用意はされていない。席にいないからだ。
(またあの男と、……いや、それはない。ローウェンが、木こりは今日は森だと言っていた)
「ムイ様が、」
その声に頭が跳ね上がる。
「なんだ?」
そのリューンの様子を見て口元を歪ませると、ユウリは言い放った。
「ムイ様は収穫祭で花を使って何かをやられるそうですね」
「あ、ああ。押し花を作っているんだ。それを使って絵を描いたり、首飾りを作ったりして、い、る……」
リューンの脳裏に、アネモネの花びらで作ったシガレットケースが浮かんだ。
ついに。
リューンはそれを受け取れなかった。
そしてそれを考えるだけで、リューンの胸は痛みを宿す。
(きっと、心を込めて作ったのだろうに。あの子はそういう子だ。俺が受け取らなかったことで、傷ついたかもしれない。いや、傷つけたに決まっている)
今になって後悔が波のように襲ってくる。
「あの、客間の……」
ユウリの声に再度、顔を上げた。
「あの花の絵は素晴らしい出来ですわ」
「そうだろう、あれは本当に良い作品だ。デザインも品があるし、ムイは才能があって、」
リューンの言葉を遮って、ユウリは言った。
「歌が歌えなくても、この押し花の才能なら、陛下もご満足ですね」
「なに、」