熱を帯びた視線
「ムイ、収穫祭には参加するんだろ?」
シノとキノを相変わらず肩に抱えながら、カイトはムイの隣に腰を下ろした。
「はい、押し花の実演をして欲しいとミリアに頼まれているんです」
「ミリアはその時にムイの作った装飾品を商売をするんだろ。まったく商魂たくましいな、あいつは」
呆れた声で、カイトは言った。
「ムイ先生、僕と一緒にお祭り行こうよ」
シノがカイトの首に掴まったまま、ムイを誘う。
「僕たちと、だろ。ねえ、ムイ先生、僕も先生やミリア姉ちゃんのお手伝いするよ」
「そうね、たくさん買ってもらえるかしら」
「大丈夫だよっ。ムイ先生の押し花は世界一綺麗なんだからさっ」
「シノ、ありがとう」
ムイがにこっと笑うと、シノとキノとがきゃっきゃと笑った。
「世界一、綺麗だ」
その声でムイが顔を上げると、カイトの熱を帯びた視線と交わる。ムイは慌てて視線を逸らした。
「ムイ、四時にここに迎えに来るよ」
「あ、いえ。ミリアと三時に待ち合わせをしているのです。カイトさんはお仕事ですね」
「ああ、では三時からシノとキノを預かってもらえると助かるが。後で合流するよ」
「良いですよ」
わあっと、双子が歓声を上げる。
「ムイ先生、一緒にクルミ拾いやろお」
「ふふ、」
「僕、たくさん拾うー」
「たくさん拾って、マリアにクルミパンを焼いてもらいましょう」
いつまでも埋まらない心を持って、ムイは再び、野菜を洗い始めた。