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収穫祭


一年に一度の収穫祭が始まろうとしている。


リンデンバウム領地の領民は、みなこぞって準備に精を出していた。


収穫祭とは農作物の豊作を願って、収穫した穀物や野菜を奉納する祭りで、ここリンデンバウムの地では、一年に一度、秋口に入る頃に行われている。


「持ち寄った野菜を使って、大鍋でスープを作るんだよ」


マリアが、抱えきれないほどの野菜を持って、マリアの家の中庭を何度も往復する。


「ムイ、お前さんも祭りに来るだろ?」


マリアに向かって頷くと、ムイはたらいの野菜を洗う手を止めて、無理にでも笑った。その顔を見て、マリアは野菜をどんっとその場に下ろすと、ムイの隣に座り込む。


「ムイ、そんな無理に笑いなさんな。あんたはちょっと悩みすぎだよ。リューン様があんたを手離すはずがないだろう」


「……私は、リューン様のお側にいられれば、」


「だからって、掃除や洗濯なんてやらなくても良いんだよ」


マリアは呆れた顔で言った。


「あんたはリューン様と結婚するんだろ? だから、国王さまにだって結婚の許可を貰ったわけだしね。そんな気が無かったら、そんな面倒なことをしないで、とっくにほっぽり出していらっしゃるよ」


「結婚なんて、恐れ多いのです。お側にいられるだけで私、」


「何を言ってるんだい。じゃああんたはもしリューン様が他の女と結婚しても、側にいるってのかい?」


「…………」


黙り込んでしまったムイを見てマリアは困った顔つきで、余計なことを言ったね、悪かったよと言って、野菜のカゴを抱き上げて家の中へ入っていった。


(もし、リューン様がご結婚しても……)


ムイは目の前にある押し花の一つをそっと取った。ふわっと花の香りが微かに漂う。


(それでも側にいたい)


その覚悟も持っているつもりだ。リューンとリューンの妻や子供を見るのはきっと辛いだろう。けれど、それでもムイは側に置いて欲しいのだと心を決めていた。その為には、掃除や洗濯、料理の準備、できることを何でもするという気概でいるのだ。


「ムイ、収穫祭には参加するんだろ?」

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