表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

107/205

幸せな日常


「このようなもの、みな様のお目に届くような場所には……」


「いや、これは客間に飾るべきだ。アランも目を丸くしていたのだから間違いない」


「それは、アランたちが、甘く採点してくれているだけです」


ムイの手がリューンの腕を掴むと、リューンが足を止めてくるりと後ろへと回り込み、あっという間にムイを抱え込んでしまった。


「リューン様、どうかそれを廊下にお戻しください」


抱えられながらも、嘆願する。


「いや、これは客間に飾るべきだ」


そんなやりとりをしていると、廊下の遠くの方から、ローウェンの声がした。


「昼間っから、何をいちゃいちゃしているんですか」


リューンが右手に額縁を、左手にムイを抱えながら、ずかずかと歩いていく。


「ローウェン、これがいちゃいちゃしているように見えるのか?」


ローウェンの大きな溜め息の横を通り過ぎて、リューンは客間へと入った。


「大切なお客様に、リューン様のセンスを疑われては困ります」


抱えていたムイを下ろすと、リューンは額縁を客間の壁に飾り、持っていた釘を打ちつけた。


「リューン様、どうぞご勘弁を……」


ムイがリューンの前へ出て、両手を広げ、身体で絵を隠す。そのムイの身体を、リューンはひょいっと抱えると、「ムイ、やはりローウェンの言う通りにしよう」


そしてそのまま自室へと連れ帰ってしまった。


ベッドの上にごろんとムイを下ろすと、リューンもその隣に転がった。


「リューン様、どうかあの絵を廊下に、お戻しください」


ムイが何度も懇願する。


「まったくお前ときたらこのような状況で、まだそれを言うか?」


リューンがムイの頬にそっと手を伸ばす。リューンの手の温度を感じると、その温かみを堪能するように、ムイは目を瞑った。


「早くお前を俺だけのものにしたい」


結婚の意向は、国王にも伝達済みだ。


リューンはワグナ国王の私有地、森の奥に住まわされていた家よりムイを連れ出す際、国王へと書簡を出している。


そこにムイを自分の婚約者として、リンデンバウム城へと帯同する旨、記述したのだった。


リューンからしてみれば、ムイを連れ戻すのにも正式な手順は踏んでいるし、後は国王から正式な許可を得て、式を挙げるのみと思っている。


リューンはムイの腰を引き寄せると、耳元で囁いた。


「ムイ、愛している」


結局、ムイの作った押し花の絵画は、そのまま客間に飾られた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ