眠り姫1
遅くなってしまい申し訳ございませんでした。
後書きにこれからの投稿予定について記載します。目を通していただけると幸いです^^*
父上とセバスティアンから庭園使用の許可が降りた。
次にする事はお茶会で使うテーブルなどの家具探しである。
私の部屋には小さいサイドテーブルしか無いし、そもそも室内家具を外に持っていくと片付ける時に土を綺麗にしたりと大変。買うのにもそんな時間はないし・・・。
「何があるかな・・・。」
なので、私は物置に来ていた。
最近の人が踏み入れた形跡は無い。
埃っぽいけれど、我慢、我慢。
別に、私が自分で物置に入る必要はなかったんだけどね。
探検したくって。
入ることを許可する代わりに、執事のセザールを連れていくように言われた。
彼は『自称』力持ちらしいので、どんどんこき使っていこうと思う。
昔、父上が茶会を嫌々開いていた時に使用していた家具がここにあるらしい。
周りを見渡してみると、早速良さそうなテーブルを見つけた。
うん、形も丸くて可愛いし、テーブルクロス掛けたらぴったりね。
いくつかあったのでその中から綺麗なものを二つ程選んだ。
セザールに頼んで運び出してもらう。
そして、手際よく埃を叩いてくれるナディア。ありがとう。
その後、椅子も人数分運び出し終わった。
私は探検してみたかったのでセザールに一言告げてもう一度中へ入る。
かなりの広さと奥行きがあるにもかかわらず、圧迫感すら感じるこの物の量。
とっても高そうな絵や彫刻が沢山あるのでよく足元に気をつけながら進んでいく。
奥へ進んでいくに連れて、入口から差し込む光では薄暗く感じるようになってきた。
なので、手に持っていたランプで周りを照らした。
その明かりで見えた埃の量にうっ、となる。
レティシアが埃アレルギー持ってなくてよかった。
あ、でもそれはそうだよね。
どこかのルート──確かカイルートだったけれど、フローリアを古くて埃っぽい倉庫に閉じ込めるシーンがあった。
そんな、the・悪役なシーンでくしゃみ連発していたらちょっとアレだもの。
まぁ、その時はしっかりカイが助けに来るんだけどね。そのスチルがまた美麗で・・・!
そんなこんなで自問自答していたら突き当たりについた。
「あれ、これ・・・」
そこには埃をかぶった大きな大きな家族の絵。
この不機嫌そうな女の子は私。その後ろにそい立つのは私の両親。
若くて綺麗な二人は、心なしか今より距離が近く感じる。
四、五歳ほどの私と──。
おかしい。訳がわからない。
でも・・・確かにこれが嘘だと確定する材料を私は持ち合わせていなかった。
何故だか途切れ途切れでしか思い出せないそのころの記憶。
その時だった。
──時は満ちた。真実を求めよ。──
そんな、誰かの囁きが聞こえたような気がして。
ブワッと私の中で何かが溢れた。
なんだか、心の中をかき乱されている気がして苦しくなった。
・・・どうやら私は、今見たことを忘れたいらしい。
息苦しさから薄れていく意識の底で、私が理解したのはそれだけだった。
そして、瞬く間に世界の彩度が落ちていく。
私はついに意識を手放す。
ガタンッ、と大きな音を立てて私は倒れた。どこかでナディアの慌てたような声を聞きながら。
新月の夜、闇が深まる深夜二時。
私達の住む屋敷に裏門から一人、男が忍び込む。
何処から情報を入手したのかは分からないが、屋敷のつくりは完璧に把握しているようだ。
入り組んだ廊下を迷うことなく進み、たどり着いたのは父上の部屋。
中に入ったそいつの顔は──あれは、一度見かけたことがある紅茶娘の父親だ。
紅茶娘の父親は、眠っている私の父の上でキラリと光るナイフを振りかざした。
「やめてっ!」
私はかすれた声で叫びながら飛び起きた。
暑いどころかよく澄んだ夜中の空気は冷たいくらいなのに大粒の汗が首筋を流れた。
起きる時間、間違えたな。とか、ボーッとして考えていると、
「お嬢様っ!」
「レティシア様!」
ナディアとセザールが部屋に入ってきた。驚いたような顔から、たちまち二人は表情を崩した。
手に持っていたタオルを投げ出して、ナディアは私に抱きついた。
「お嬢様、お嬢様・・・っ、レティシアお嬢様・・・」
私の名前を繰り返し呼びながら涙をこぼすナディアの目元にはうっすらくまができていた。
困ってしまってセザールを見ると、そちらも涙目。びっくりです。
「レティシア様は、一日半目を覚まさなかったんですよ。」
そう言ったセザールの手には水の入った桶。
よっこらせと鉛のように重たい身体を起こすと、額から湿ったタオルが落ちてきた。
後になって父上から聞いた話によると、二人は一睡もせずに付きっきりで看病をしてくれていたらしい。
自分たちの不注意だから、と。・・・二人は何も悪く無いのに。
「目覚めてよかった・・・。」
再び、噛みしめるようにナディアが呟き、微笑んだ。
レティシアのために泣いてくれた二人を見て涙腺が緩んだが、それは死ぬ気で堪えた。
これ以上、二人に心配かけるわけにはいかないもの。
その代わりに、沢山お礼を言って、最高の笑顔を見せて。
そのうち、窓から光が差し込んできた。朝になったのだ。
すると、急に大きなお腹の音がなった。
空腹感を覚え、恥ずかしさから私はえへへ、と笑って誤魔化す。
そんな私を見て、ナディアが、
「直ちに食事のご用意をいたします。」
なんて言ってくる。
「だっ、大丈夫よ!他の人に頼むから!」
私はまだ働こうとするナディアを焦って止め、セザールに向き直る。
「セザール、疲れているところ申し訳ないけれどナディアを連れて休んできてくれるかしら?」
私はニコッと微笑みかける。
こうでもしないと、ナディアは働き詰めてしまいそうだもの。
セザールは殊勝に頷き、ナディアの手を引く。
一方、ナディアはまだ申し訳なさそうにしていたけれど、私が急かしたため渋々引き下がった。
私の部屋を揃って出て行く二人の後ろ姿を見つめながら、意外とお似合いなんじゃない?とか思ったり。
後ろ姿が見えなくなり、私はベッドから立ち上がる。
・・・うん。少しふらついたけれど、大丈夫。
すると、急に妙な感覚に襲われた。
──あれ、私、なんで物置なんかで倒れたんだっけ。
あそこで何を見たんだっけ。
しかし、その感覚はすぐに消え失せる。
私は内心首を傾げながら、父上の元へと向かった。