第四十六話 俺はより高みへ―――、俺は新たな三人の仲間達と肩を並べて同じ光景を歩きたい
第四十六話
アルスが机を凍てつくその斬撃で一刀両断し、俺がその机をトンっと叩いて衝撃を与えれば、机は、まるで液体窒素のショーを見ているがごとく、粉々になったんだ。でもそんな俺達をじとっとした視線で見ていた彼女がいた。奈留じゃないよ、春歌だよ。どちらかと言えば、奈留はこういうことが好きそうだ。
「なにを二人で納得しているんですかっその壊れた机は健太が弁償してくださいね。・・・はぁ、二人してまるで小さい子のようです・・・」
まるで小さい子って・・・。あ、そうだ。俺は思いついたことを今から実行するぜ。俺は泣きそうな顔を、小さい頃を思い出して。
「ね、ねぇ・・・ぼ、ぼくが弁償なの?春歌おねぇちゃん。机を切ったアルスくんは?」
俺だけ弁償なんて春歌たん、それはないっすよ。金もないのにさぁ。いや、ほんとはあるよ。でもその金のほとんどは趣味に消えてるぜ。
「なっなにがっ『春歌おねぇちゃん』ですかっ。そんなにかわいく言ってもダメですよ、健太。貴方がアルスランを焚きつけたからこうなったんですっ。練習や鍛錬で能力を行使するするのであれば、ちゃんと警備局の訓練場を使ってくださいね」
「ちぇ・・・かわいく言ってもダメなのか。ねぇ春歌おねぇちゃん、ごめんなさい・・・ぼく」
俺はうるうると目をしばたたせながら、春歌おねぇちゃんを見つめた。
「っだから貴方は、もうっ」
なんか、最近春歌たんの注意の仕方が、その言葉の端々が、柔らかいものになったような気がする。
「うん、そうそう。アルスは健太の言うことを聞いてあげただけ」
「奈留たんまで春歌の肩を持つのかよー」
「いや。待つのだ、ナル、ハルカよ。オレがその机を壊したのだ。だからオレもケンタとともに償おう」
アルスは神妙な顔つきで頭を、春歌に下げた。
「さすが、アルス!!」
「アルスがやるなら、私も手伝いたい」
「おぉ、奈留たんまで!!」
さすが奈留たん言うことが違うねぇ。さっきまでとは全く正反対の意見だったくせに、奈留たんってば。奈留はいつもアルス好き好きオーラ全開だぜ。
「で、どうすればいいのだハルカよ? オレ達はまず木を切ってこればよいのか?」
「はぁ・・・」
アルスの問いに春歌は疲れたように溜息を吐いた。
「いえ、それに及びませんよ、アルスラン。私が損傷報告書を書いておきますから、必要経費で落としますよ・・・」
「そうか、なんかすまんな」
「いいえ。私も貴重なもの見させていただきましたのでかまいませんよ。それより今後このようなことをする場合は、必ず『警備局訓練場』にて行なってください。いいですね健太、アルスラン」
「お、おう」
「うむ、解った」
春歌にまた迷惑をかけてしまったようだ。これからは気を付けよう。
「―――」
それよりも、だ。俺は自分の能力を、早く師匠である定連さんに見てもらいんだ。定連さんに早く見せたいぜ、俺がこの『氷華』から放つ斬撃をな。俺はその手に持った『氷華』を見つめた。これがあれば、この『氷華』という刀があれば、俺は―――より高みへと上がっていけるんだ!!
「はは」
自然と笑みが零れる。定連さん、きっと驚くだろうし、喜んでくれるだろうな。
「健太? どうかしましたか、そんなに嬉しそうに」
「いや、べっつにー」
俺の心はうきうき、わくわくと心が躍っていた。
「うん。ただ早く定連さんに会いたいなぁって思ってさ。俺の力をみてもらいたい」
だからだろうか、春歌にぽろりと自分の心の内を明かしてしまったのは。
「そうですね。定連隊長ならきっと喜んでくれますよ。健太、貴方のその強さを見て」
春歌まで笑顔でそんなことを言ってくれたんだ。春歌は俺の喜びに共感してくれて、まるで自分のことに喜んでくれる女の子だ。
「うん、ありがとう春歌」
///////////
あれから数日後、今度は俺のほうから定連さんに連絡をとり、わざわざ俺のために任務の時間を空けてくれた定連さん。
「―――」
そんな定連さんの前で静かに鞘から『氷華』を引き抜く。ここは警備局訓練場だ。春歌に言われてちゃんと規則は守ってるからな。
「―――」
『氷華』―――もう軽く目を瞑るだけで、その日之刀の冷気を、まるで手の平の上で球を転がすかのように、自在に操り、その冷気の強弱もつけることができるようになったんだ。
「・・・」
定連さんにこのこと、俺が『氷華』を遣えるようになったことを、電話で報せたときのことがふぅっと頭をよぎった。
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『定連さんッ俺の力をみてください・・・!!』
春歌も、定連さんは喜んでくれるって言ってくれたし、あれからすぐに定連さんに連絡を取ったんだ。
『健太、お前―――『妖刀-零零五号』を使いこなしたんだってな』
『し、知ってたんすか?定連さん』
『当たり前だ、あんないわくつきの代物を使いこなせるやつが出りゃあ、な』
電話の向こうの定連さんは呆れ半分驚き半分といった感じで頭をバリバリと掻いていた。
『そういえば、春歌のやつも驚いてましたよ』
『そりゃあなぁ、驚くだろ普通・・・。もうほとんどの隊長がお前のこと知ってんじゃねぇの?』
///
俺は任務においてはもう、春歌やアルス、奈留の足手まといにはなりたくない。だから俺は絶対に強くなって見せる。みんなと新たな三人の仲間達と肩を並べて同じ光景を歩きたいから―――だから、俺は強くなる!! 『妖刀-零零五号』―――
「―――・・・改め『氷華』」
俺は静かに正眼で構えた抜き身『氷華』を見つめた、集中力を高めて―――。そんな俺の様子を定連さんも真剣な目つきで見つめてくれていたんだ―――
「――――――」
この惑星イニーフィネ―――フィーネさんの導きでこの五世界に転移してきた、俺。そんな俺に彼女が与えてくれた異能『刀が好きなのね』。俺を、自身の惑星イニーフィネに導いてくれたフィーネさんと俺は再会し、俺は自身の異能を識った。
「―――・・・」
それからあの、錘使いのおっさんとの戦いで折れてしまった『夢幻』。あれは俺がこっちに来る前に日本のオタクショップで買った模造刀。その模造刀を俺は勝手に『夢幻』と名付けた。あれはきっと俺が能力に目覚めるきっかけになったはずだ。今、俺がこの手で構える『氷華』の柄を握って念じれば―――・・・
「―――・・・」
そう、『あの感覚』がきて―――妖刀『氷華』の刀身に霜が降りる。
「いいぞ、健太。その『妖刀-零零五号』は冷気の刀だ」
「―――」
知ってます定連さん。この日之刀は冷気が凝縮された業物の妖刀。だが、俺はこの妖刀に銘を付けた。その銘は―――
「・・・―――『氷華』」
それはその瞬間だった、『氷華』の刀身から恐ろしいほどの冷気が溢れ出したのは。空気中の水分が凍り、キラキラと舞う。
『刀が好きなのね』フィーネさんの言葉を俺は悟ったんだ、自分に与えられた異能の力を。俺は媒体―――刀に備わっているであろう属性を引き出して空想や妄想を想像することで行使できる能力者だ。
そして俺が―――いろんな、他のいろいろな刀を手にし、『刀を遣うことができたなら』―――炎属性の『紅蓮』とか、魔を断ち斬る『破邪』とかっていう刀がもし在れば、この手にとってみたい。そうすれば俺に無限の可能性が拡がるはずだ。
「そうだ」
あれをやってみるか―――。俺は軽く左右に頭を振って、今まで考えていたことを頭の端っこに追いやると、俺は改まって『氷華』を鞘に納めた。それは剣術の構えから抜刀術の構えに移行するためにやったことだ。
「―――」
俺の行動を静かに見つめる定連さんの姿を、視界の端に認めて俺は静かに抜刀式の構えに移った。
「小剱家第三十二代目当主小剱 愿造が孫―――小剱 健太―――」
敵は我が眼前にあり―――脚を止め、腰を落とす。左脚を下げ、右脚を半歩前に出し、左手は『氷華』の鞘を握り、右手は『氷華』の柄を握る―――
「―――・・・」
この『氷華』に宿りし『モノ』―――『氷華』は遣い手の氣を喰らい、途轍もない冷気に換える業物の『妖刀』だ。俺の氣を喰わせて、まるで飛ぶ氣の斬撃のように、『斬道に沿って、三日月状の氷の刃が二つ、連刃になってどこまでも飛ぶ』―――それを夢想して俺は『氷華』を小剱流抜刀式で抜き放つッ・・・!!
「小剱流抜刀式―――氷刃華ッ二連刃!!」
「―――」
俺は抜刀式で一文字に横薙ぎにした『氷華』の刀身をそのまま、返す刃で縦に切り下ろした。ちょうど斬撃が『十』の形になるようにな。
俺は、力を加減した覚えはない。全精神力、全力を出し切ったはずだ。だからかな、こんなにも俺の身体に力が入らなくて、身体がだるくて重いのは。俺は『氷華』すら持てなくって―――俺の右手からするりと『氷華』が滑り落ちて板張りの床に、その鋩から刺さったんだ。
「す、凄ぇぞ、健太!!」
定連さんが身を乗り出す。
「く―――そ・・・アニムスを全部―――」
やっぱアニムスを遣いすぎた―――。俺が『氷華』から氷の斬撃を二つ放った直後のことだ。俺の身体から力が抜けていったのが分かったんだ。―――くそ、視界が霞む・・・!! 身体の姿勢を保てられない・・・。そうして、俺の視界は暗転し―――
「く・・・」
力が身体に入らなくて、ただ、惰性のように俺は膝をつく。―――そしてそのまま崩れ落ちるかのように、訓練場の板張りの床に俯せに倒れ伏したんだ―――・・・
Kenta VIEW―――END.
―――ANOTHER VIEW―――
「『妖刀-零零五号』から氷刃の斬撃を飛ばすか。能力を抑制する、この訓練施設にここまでの損害を出すとはな―――こいつ」
定連 重陽は訓練施設の、自分が立っている向かいの壁に、二つほぼ同時に直撃した氷の斬撃によって、刻まれた『十』の字のような損傷を認めたのだ。それは訓練施設の厚い壁を外まで貫通した氷の斬撃の証だったのだ。十字の損傷から外の光が入り込み、まるで光る十字に見える。
「―――・・・」
その壁を無言で見やると、定連 重陽は呆れたようなため息を吐いたのだ。能力を抑制するこの施設に、このような損傷を与えたのは健太をおいて他にはいない。飛んでいった二つの氷の斬撃は、貫通したそのあとどうなったかは定連 重陽にも分からなかった。壁を貫通したところで砕けたのか、はたまた空中を飛んでいき蒸発したのか、それは不明だったのだ。
「こいつ―――」
そうして気を失って、自分の足元で倒れている健太に、定連 重陽は視線を戻したのだ。
「―――『刀』に秘められた属性を最大限引き出し、空想・具現化する能力か・・・おもしろい。―――さすがは『転移者』だ・・・!!」
そうこうしているうちに緊急警報が警備局の敷地内で鳴り響き始めたのだ。その発信源である警備局の訓練場にたくさんの人々がやってくるのも見えた。しかし、定連 重陽が慌てることはない。
「こっちは上半身を、君は下半身を抱えてくれ」
「せぇの・・・!!」
警備局の訓練場に、このような損傷を与えた当事者で気を失っている小剱 健太と彼が所有する氷華は警備局医務隊の手により、担架に乗せられて医務室へと運ばれてゆく。
「―――小剱 健太・・・か」
定連 重陽は運ばれていく健太をしばし見やっていたが、そこに彼自身が予期せぬことが起きたのだ。
そうして唯一の事情を知っているであろう定連 重陽は、同僚で同格の少女一之瀬 春歌に詰め寄られていたのだ。
「定連さんッなぜ、こうなる前に健太を止めてくれなかったのですかッ!?」
「健太は強くなることを望んでたんだ、だから俺は好きにやらせた。それだけだ、一之瀬」
「で、ですがッ、やり過ぎです!! あの『妖刀』ですよ!?健太の行動は止めるべきでしょう!!危険すぎますよッ定連さん・・・!!」
「『それ』をすることで、止めることで、健太の『可能性』が永久に閉ざされることになってもか? お前も解っているはずだ。『転移者』小剱 健太という存在の無限の可能性をな、違うか、一之瀬 春歌―――・・・」
「く―――・・・」
春歌は、本当に悔しそうな、気が気ではないような顔で、悔しそうに唇を噛んだのだ。
「冷静になれ、一之瀬」
「私は冷静です。こんな大惨事があったというのに定連さんこそ、落ち着きすぎなのではありませんか?」
「そうかぁ? 危険な任務のときこそ冷静にならないとな。この前の第六感社との有事のときとかよ。あいつらは企業という体裁を持つものの、実態は法を無視する無法集団であり、軍産複合体だ。そいつらと渡り合うような任務でこそ冷静に―――」
春歌は、定連 重陽が何かを言い終える前に、珍しく彼女自身の我を通し、自分の言葉で、定連 重陽の言葉を打ち消す。
「この健太の一件は危険な任務ではありません。それなのに健太を危ない目に遭わせるなど―――くどくどくど」
定連 重陽は、初めは面倒くさそうな表情で春歌の言葉を聞いていたが、ややあってその表情を改めた。
「―――お前」
「人の話を聞いているのですか―――、定連さん」
その定連 重陽の顔は、今までのようなめんどくさそうな顔ではなく、まともな顔をしていたのだ。
「一之瀬、ひょっとしてお前―――」
正直言って定連 重陽は、春歌のそのくどくどしい小言を聞くのが鬱陶しかったのだ。面倒だったのだ。うんざりしていたのだ。だから定連 重陽は、全く見当違い、百パーセント有り得ないであろう言葉を思いついたのだ。この会話の流れを全く違うものにし、差し替えるために。
「一之瀬。ひょっとしてお前、健太に惚れてんじゃねぇのか? だからお前はそんなにムキになって俺に突っかかってくるんだろう? 健太に惚れちまったか、一之瀬?」
「――――――!!」
その定連 重陽の、自分をからかうような口調で、その言葉を聞いた春歌は、驚きに目を見開いたのだ。
「ってまさかな。お前が健太に惚れてるなんて、そんなわけないしな」
「―――っ!!」
春歌は定連 重陽のその言葉を、自身で反芻し理解した。そして春歌は、己の心の内なる事実を認め、目を見開いたまま、自分の口元に左手を当ててほんの数秒固まる。そしてその―――ほんの数秒後のことだった。春歌はハタッと我に返り、踵を返す―――
「っ・・・健太―――・・・いま行きますから―――!!」
春歌は、健太が倒れて運ばれたであろう医務室へと、まるで脱兎の如く、この場から逃げるように。そしてまた、早く健太の元へと駆けつけたいと、その焦る気持ちからか、パタパタと全力で走り去っていったのだった―――。
そうして、一人ぽつんと残された定連 重陽だったが―――
「マジかよ、あの堅物女が―――やれやれだぜ。健太と一之瀬『にこいち』は勘弁してくれよな・・・ったく、ほんとやれやれだぜ。『にこいち』だと、俺の任務達成率が下がるじゃねぇかよ―――」
走り去った春歌の後ろ姿が完全に見えなくなったあと―――聞いている者は誰もいなくなったあと―――彼定連 重陽は。
「なぁ、お前もそう思うだろう颯希?」
彼は背後を振り返り、そんな言葉を誰かに零したのだった―――。
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二人の男女はグレー色の絨毯が敷かれた廊下を歩いていたのだ、その目的の部屋に向かって。
「対象No.2小剱 健太を保留ってどういうことだよ?颯希」
彼、定連 重陽は今までとは正反対の指示を、同僚の颯希という女性から聞き、明らかに不服そうな顔を隠さなかったのだ。自分が転移者の小剱 健太を自らの手元に置き、さらに彼を成長させたのだ。その苦労は並大抵のことではなかったのだ。
「仕方ないってばぁ、取締役会で決まったことだって」
「はぁ・・・やれやれだぜ」
定連 重陽は盛大にため息を吐いた。
「俺です、松本さん」
「おう、重陽。到着ご苦労だったな」
部屋の中の松本という男の声は重厚なものだった。しかし、彼の声は部下に対して親しみやすさのあるものだ。
「私もいますよー、松本さん」
「おう、颯希も一緒か。入ってくれ」
「「失礼します」」
定連 重陽はゆっくりとその部屋の開き戸を開けて、颯希も彼に続いてその室内に入った。
「いろいろと会社の方針転換があってな。まぁ、座ってくれ二人とも」
松本は、朗らかな笑みを湛えて自らの部下を労うように、コップ入りのコーヒーを一つ定連 重陽に、もう一つのミルクティー入りのコップを颯希に振舞う。
「颯希、重陽。いつもごくろう」
「ありがとうございます、松本さん」
「・・・はい・・・松本さん」
上司の松本からそれを振る舞われた颯希は楽しそうな返事を、定連 重陽のほうは他にも何か言いたげではあったが、無言でその自分の席に座ったのだった。そして、定連 重陽の横の席は以前、一之瀬 春歌と刃を交えた野添 碓水が座っていた。
「久しぶりだな。定連殿、九十歩殿」
「お久~のっち」
「おう、碓水」
三人の同僚は互いに短くフランクに挨拶を行なったあと、
「そういえば旦悟は?見たところいねぇが?」
「定連殿、芦原 旦悟殿はしばらく出向ですぞ?」
「あぁそういえば、そうだったな。あいつ」
定連 重陽はばりばりと頭を掻いたのだ。それから三人は一番前の席に座っていた諜報部の執行役員である松本諜報部取締役に視線を向けたのだった。
「高級諜報員達のお前達に昨日、我が第六感社の取締役会で決まったことを完結に伝える」
「「「―――」」」
定連 重陽、野添 碓水、九十歩 颯希の三人の諜報員の表情が真剣そのものになったのだ。
「諜報部は一丸となり、開発・育成部のバックアップをする、ということになった」
「針崎所長の開発・育成部っすか?松本さん」
「そういうことだ、重陽。取締役会で開発・育成部からエアリス(日之国)系転移者よりもオルビス(月之国)系転移者のほうがより希少という話が持ち上がってきてな。よって我が社は開発・育成部の計画に沿って、エアリス系転移者小剱 健太や稲村 敦司よりも、あのオルビス系転移者アルスランという者の確保を最優先で行うこととなった」
「結局、俺らの任務内容はあんま変わんないような気がするんすけど」
「そうだねぇ、シゲ」
「そうですな。確かに九十歩殿や定連殿の言うとおりだ」
部下三名の発言を聞いて松本は口を開く。
「確かに任務の内容は変わらんかもしれん。だが、これまでは開発・育成部の単独行動の後始末、ゴミ拾いのようなものだった。例えば、あの強化薬を使った民兵どもの後始末などのな。だがしかし、これからは我が社第六感社、全ての部署が開発・育成部をバックアップすることとなったのだ―――。小剱 健太の件で重陽には無駄骨を折らせてすまなかったな。すまない」
「いえ。別にいいっすよ松本さん。俺ら民間企業は地域貢献が大事っすから」
「ま、まぁ、そんなにふてくされんでくれ重陽。そうだ、あとで私が焼肉を奢ってやろうっわはははっ」
「マジっすか?」
「おう、私のかわいい部下だ」
「わかりました。俺のほうこそすんませんでした、不貞腐れてて」
「よい」
「じゃ、松本さんっ私やのっちも一緒に焼肉どうですかね? 私達も労ってくださいよ~」
「ふむ。考えておこう颯希、碓水―――」
「やったっ!!」
///
「これを見てくれ」
そこで一呼吸置いた松本は、諜報部社員に社外秘の赤いはんこが押された書類を配るのだった。
「「「―――」」」
「これまでどおり、颯希は能力を用いて移動班の支援を、碓水は工作班の支援を行なうように―――」
「―――」
そこで松本は定連 重陽を見つめた。
「重陽。お前はこれまでどおりに警備局内で諜報活動をしてくれ」
「はい。松本さん」
「ただ、重陽。アルスランという者に対しては直接、手は出さず穏便にな」
「解ってますよ、松本さん。俺、あいつ苦手なんすよ。その『眼』が、『視線の先』がどこを見てるのか分からないんっすよ」
「そうか。そういえば、あのアルスランという者には銀髪の少女がつねに貼り付いているらしいな」
「はい。松本さん」
「その少女の名前は? 重陽なら知っているだろう?」
「はい。副隊長の羽坂 奈留と言う奴ですよ、松本さん。隠語は『銀髪』です」
「銀髪―――。羽坂―――」
「松本さん?」
松本のその遠望の目を定連 重陽は不思議に思ったのだ。
「いや。―――高級諜報員、各自、業務で抜かるなよ」
松本は頭を一回左右に振ったあと、自らの部下を見つめたのだ。
「「「はい」」」
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