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五世界幻想譚-The Fantasy of Five Pieces-  作者: 高口 爛燦
第一章 かくも優しきこの日之国で
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第三十四話 霞の中の記憶の中で

第三十四話


 ナルはタブレット指し示す。

「アルス。私達警備局境界警備隊はその公務に当たって必ず映像を録ることを義務付けられてるの」

「ほう? オレは聞いていないのだが?」

 そのような戦記を遺す、ようになどとユキナやハルカにオレは命じられたことはない。

「うん、知ってる。特別に編成された『混成隊』のアルスと健太は特例でその責務を負わない、と侑那が言ってた」

「ふむ」

「―――アルス。私はアルスを信じている」

 ナルの声の調子が明らかに真剣なものへと変わったのだ。

「急にどうしたのだ?ナルよ。そのような神妙な顔をして」

「それはアルスがこの世界に現れる数日前のことだった。警備局は空間のアニムス濃度の異常な高まりを、月之国との境界に設けられている日之国日月地方で感知したの」

「―――」

「私達警備局はこの空間におけるアニムス濃度の異常なまでの高まりを、同地の空間と異世界の空間が一時的に繋がった、もしくは重なり合ったことにより起きたものと判断したの。侑那をはじめとする警備局上層部は同地に転移者が現れる、もしくは現れている可能性が高いと判断し、そこで、警備局境界警備隊の隊長副隊長の春歌と私は、侑那から指示を受け、部隊を率いてその境界付近の森に派遣された。そこで倒れていたアルスを見つけたの」

「うむ。その仔細を療養所にて話してくれたのは、そなたらであったな」

「うん。目覚めたばかりのアルスは勝手に動いて私と春歌が捜し回ったあのとき―――」

 ナルの目が半眼になったのを、オレは見逃さない。

「す、すまぬ。迷惑をかけたな・・・」

「ううん、もういいよ。私も今思えば楽しかったから。―――で、話を戻す。でも、アルス。貴方という『転移者』を捜していた者は私達日之国の警備局や第六感社だけじゃなかったの」

 ふむ。第六感社もオレを捜しておったのか。うむ、そういえばケンタのときでもそうだったな。警備局のオレとナルの急襲により、その目的は潰えたのだが。

「・・・ほう。第六感社でもないと言うか。ではその者とはいったい誰なのだ、その正体を掴んでおるのか?警備局は」

「血眼になってアルスという『転移者』を捜していたのは、『イデアル』というこの惑星イニーフィネ五世界全土で暗躍している非合法組織―――」

「『イデアル』―――・・・?」

「私達日之国の警備局も、その組織の名前だけを知っている程度で、その目的も構成員も末端組織もなにも判らなかったの」

「判らなかった?」

 過去形であるということは、今は少なくとも知っているということだろうか?

「うん。でも、あのとき誤算が起こった。私達警備局にとっては嬉しい誤算で、『イデアル』の連中にとっては最悪の誤算だった、と思う」

「誤算?」

「うん。アルスが最強の転移者だったってこと。あそこでチートになったアルスが目覚めてくれてなかったら、春歌も私も境界警備隊員の全員が『イデアル』の連中に殺されてたはずだよ? もし私達が『イデアル』の連中に全員殺されてたら生存者もいなくて、なにも『イデアル』のことが判らなかったと思う」

「ナルよ。殺されていた、などと言わないでくれ。悲しくなる・・・」

「ごめんなさい・・・アルス。でも、あのときは私達を助けてくれて、本当にありがとう」

 ナルはにこりとやわらかい笑みをこぼしたのだ。

「―――」

 オレはナルが言ったことについて、なにも覚えてはいないのだ。ニコラウスに敗れ―――崖の上から落ちていき―――オレは白く光る靄に包まれ―――

「侑那や塚本はアルスのことを本当は恐れているはず」

「―――・・・」

 だが、その先の記憶をオレ自身が思い起こそうとしてときに、ナルのその言葉でその先の記憶は、まるで思い出そうとしているオレ自身から逃げるように霧散していったのだ。

「もし、アルスが思い出してまた自我を失ってしまったら、と侑那と塚本は―――、だからこのタブレットで、カメラで写した動画をアルスに見せるな、と春歌と私に侑那達は言ったんだと思う」

「オレが自我を失う?」

「この動画はきっとアルスを今までよりも強くする。アルスが強くなるために必要なものだと私は思っているの。アルスが今よりももっと強くなりたいというのなら―――今から私は上官のその厳命を破ってこの動画をアルスに見せる・・・!!」

「―――だが」

 そのような、上官からの厳命を破ってまでナルのやつ―――

「アルス、もう一度言うね。私のことは置いておいて正直に答えて。アルスは今よりももっと強くなりたい?アルスは強さを求めてる?」

「―――無論だ」

 その自身の答えだけは揺るがない自信がある。オレは自身が弱い所為で父も姉も臣下達も誰もなにも護ることができなかったのだ。

「オレはナル達だって護りたいと思っているよ。この気持ちだけは天命のように思う」

「アルス―――・・・」

「だが、すまない。オレの所為でナルに翻心を起こさせてしまう」

「翻心なんて私は思っていないよ? それに私は過去のことでずっと警備局に疑心を抱いているから」

「ナルよ―――」

 疑心とな?それは穏やかなことではないな。

「今は、私のことよりもアルスのことがしたいの」

「うむ、オレのためにすまない。ではナルがそのことをオレに話してくれるのを待っていることにするよ」

「―――アルス」

「―――」

 オレはナルにいつくしむような笑みでニコッと微笑みかけたのだ。

「と、取りあえず・・・準備する」

 彼女は席を立つと、机に乗ったままの杯と皿をぎこちない手の動きでわちゃわちゃと端に避けた。そして、真向いから、オレの座っている椅子の横に、自身の椅子を移してきてオレの右に座したのだ。

「アルス、こっちのほうが操作しやすいからここに座るね」

「う、うむ」

 ナルがオレのすぐ傍らに坐したのだ。


「・・・んっしょ」

 その杯や皿がなくなって空いたところに、ナルはオレ達二人が見やすいようにタブレットを斜めに立てたのだ。

「このタブレットの画面を見ててね」

 ナルはタブレットの画面を白い指で軽く二回とんとんと叩いたのだ。すると、画面が光り始めたのだ。

「このアイコンを―――」

 もう一度、ナルはそのアイコンというものを白い一指し指でとんとんと叩いたのだ。

「ん、アルスと二人で見るのは初めて―――」

「―――」

 すると、タブレットに映された画面が切り替わり―――どこかの鬱蒼とした森が映し出されたのだ。その森を背に、一人の剣士とおぼしき者がなにやら喋っていたのだ。どうやらこの男の剣士の名はクロノスというらしい。ナルの言葉にクロノスという剣士はその顔に嫌悪感を顕わにして警備隊のことを狗と罵ったのだ。ナルのことを『狗』と罵ったのだ。クロノス―――そうしてオレは今しがた気づいたのだ、自身の眉間に憤りの皺が寄っていることに。

「―――何者だ、こやつは?」

「しっアルス。今からがいいところなの」

 ナルは一指し指を自身の口元に立てたのだ。

「う、うむ」

 オレはふたたび画面に視線を移した。するとそのあとに二人の男女が姿を現した。一人は鎧に身を包み、腰に剣を差している男。もう一人は女で、だぼだぼの外套を羽織り、その頭には鍔の長い三角帽を被っていた。

「!!」

 そのすぐあとにハルカが放った鬨の声でなし崩し的に戦いが始まり、タブレットに映し出されている画面が揺れ動かなくなったのだ。

「戦いが始まり、あのときここで私は、録画を手動から自動に切り変えたの―――」

「ほうほう?」

 あくまでナルに合わせて相槌を打っただけで、その詳細をオレは分からない。

「―――このふざけた女の相手をするために」

 ナルの視線がふたたび画面に向くのにつられたオレもふたたび視線を画面に戻したのだ。


『奈留ちゃん、言うな。馴れ馴れしい』

『奈留ちゃん、奈留ちゃん、奈留ちゃん、奈留ちゃん、奈留ちゃん、奈留ちゃん―――・・・』


「ほら、ふざけてるでしょ?」

「ッ!!」

 その女の持つ書物が光り輝いたかと思った瞬間、ナルが立っていたであろう足元の地面の多くが盛り上がり、よく草原に建っている『石人』のようなものが複数、現れたのだ。

「ゴーレム」

「ごおれむ?」

「うん。このイルシオン人の女が魔法で創り上げた、仮初の生命を吹き込まれた『石人形』のことをゴーレムと呼ぶの。アルス」

「ゴーレム」

「見ててアルス、今からすごいことが起こるから」

「あぁ・・・」


『さぁ、行けッゴーレム兵団ッ日之国の境界警備隊を粉砕せよッ』


「―――」

 オレはその画面に映し出されていく様を食い入るように見つめていたのだ。

「ッ」

 オレは思わず目を閉じてしまいそうになったのだ。ゴーレムとやらの腕が大筒を撃つようなものに変わったからである。

「アルス、目をつぶらずによく見てて―――」

「ッ」

 画面の中で、ナルの視界となっている画面の先で、黒い影が素早く割って入ってきたのだ。その影は折れた(クルチ)をその手に持っていた。その刀は刀身が六割ほどしかなく、どこをどう見ても、オレがニコラウスに折られた刀そのものだったのだ。

「まさか―――」

 オレは寝台に立てかけている己の刀を見つめ―――

 それにナルははっきりと肯いたのだ。オレは、また視線をナルのタブレットに戻す。

「―――」

 ナルは指を画面の下まで持ってきてトンっと一回叩くと、画面の中の動きが緩慢になった。

「ちょっと遅くするね、アルス。通常だとアルスの刀捌きが早すぎて、光の線しか見えないから」

「―――」

 画面の中でオレはニコラウスに折られた刀をその右手で握り締め、ゴーレムが連続で発射したと思われる全ての弾を、その刀を縦横無尽に振り回すことにより、全ての弾を切り薙ぎっていったのだ。ナルの指が伸びてきて画面の早さを元に戻す。

 手に付いた水を払うのと同じ動作で、オレがニコラウスによって折られた刀を振ると、折れた湾曲部分の刀身が光り輝くイェルマンとなったのだ。

「この光り輝いてる刀身が『月之民』アルスの能力で、これこそがアルス自身の『氣』なの」

「『氣』・・・だと?」

「うん、あのときのアルスは自身の『氣』を自在に操っていた。だからアルスがそれを思い出せば、きっと氣で強化した刀も使えるし、防御もできる。アルスが『氣を行使』できるようになれば、きっと今よりも格段に強くなれるはずだよ・・・?」

「―――」

 『氣』・・・か。画面に目を戻せば、オレは氣の刀を右手に持ち、石人形の間を物凄い速さで駆け抜け、ナルを追い詰めていた石人形達を全て切り裂き、ばらばらにしたのだ。続いてオレは敵の女にその刀を向けようとしたところで、違うところを向いたのだ。

「このとき春歌がクロノスに斬られて、アルスの注意がそっちを向いたの」

「―――」


『―――『彼女』にもらった、・・・彼女達を護れる『力』―――を』


「―――」

 『彼女』だと? このときのオレはいったい誰のことを言っていたのだろうか・・・?


「たぶん、このときアルスが春歌のところに行ってなかったら、春歌はクロノスに殺されてた」

「そうなのだな・・・」

「うん、だから画面の中のアルスが今からやろうとすること、したことは気負わなくていいよ」

「そうか・・・」

 ナルが移動したからだろうか、画面がゆっくりと移っていく。オレとクロノスという剣士の一進一退の鍔迫り合いと斬り結びがしばらく続いていく。オレが二度、クロノスという剣士を斬りつけたところで勝負は決したようだ。オレがその氣の刀を振り上げると、背中と脇腹から紅い血を流したクロノスが敗北を悟ったようになにやら神妙な顔で呟いたのだ。

「オレは―――」

 このときのことをオレは全く覚えてはいない。しかも、どうやら自分自身を見ている限り、このときのオレも自身の正体をなくしているようだったのだ。すると、もう一人の騎士とおぼしき者がオレと散り逝くであろうクロノスとの間に割って入ってきたのだ。


『我が名は『イデアル十二人会』の一人グランディフェル。貴公の名は?答えよ』


 オレはこのグランディフェルと名乗った騎士を終始圧倒しているようだ。この騎士グランディフェルの顔が苦悶に歪む。


「アルスはすごいと思う」

「―――なぜだ?」

「私の調べた情報では『イデアル十二人会』とはこの五世界の最強クラスの集まりで、この惑星イニーフィネ五世界全土で暗躍している、ということだったの。こいつらはそこいらの犯罪組織が霞むほどのヤバい奴らで五世界に在るイニーフィネ帝国や日之国、魔法王国イルシオン、ネオポリスにも介入してるとかなんとか」

「そやつらイデアルとは何が目的なのだ?」

「ううん、そこまでは判らなかったの。でもクロノスは、日之国日夲で一、二を争うほどの強者『薙刀女』こと春歌を一刀もとに沈めた。でも、そんなイデアルの三人を―――アルスはたった一人で圧倒した」


「―――」

 画面の中のオレは虚ろな目をしており、グランディフェルがその燃え盛る剣から放った巨大な火の玉を、そんなオレは片手で防いでいたのだ。

「さすがにこのときは、私も春歌もこの火球はやばいと思った。でも、アルスの強さは私達の想像の上をいっていた」

「―――」

 そのようにナルに言われてもオレ自身は、まったくもって憶えがないのだ。

「それでイデアルに関してただ一つ判ったことがあるの」

「ふむ?」

「イデアルの狙いは確実にアルスだった」

「そういえば先ほど言っておったな」

「うん。クロノスが言ってた。クロノスはアルスの強さを見て感じて『導師が欲しがるわけだ』って。つまりクロノス達はアルスを自分達イデアル十二人会の仲間にしようとしていたに違いないよ」

「―――!!」

 自分の身があのような者達に狙われていた・・・? 自身の目的のためならば手段を選ばず、人を遊びのように殺して奪い取ろうとする連中―――。現にあのアネモネとかいう女はナルを遊び心で殺めようとしていたにしか、オレの目には見えなかったのだ。クロノスもそうだ。倒れて戦闘不能になりつつあるハルカにもその刃を向け、奴はハルカにとどめを刺そうとしていたに違いないのだ。そのようなことをせずとも、気を失っていたオレだけを掻っ攫うこともできたはずなのにだ。

 赦さぬ―――イデアルの者共。―――『彼女』が―――

『正しい子達』を『悪い子達』の手から助けてください』

『それより今は、あの女の子達を助けてあげて』

 と言っていたが、『正しい子』とはナル達のことで『悪い子』とは奴らのことではなかったのか―――

「ふむ・・・?」

 はてさて、オレがふぅっと微かな風が吹くかのように思い出した『彼女』とはいったい誰のことだったのか? オレの心の中でふと疑問に思ったのだ。だが、オレはそれを深く思い出すことができずにふたたび、その画面へと視線を戻したのだ。


「アルス?訊きたいことがあるの?」

 その言葉にふと、ナルの横顔を見た。彼女はタブレットの画面を見たままだった。

「どうしたのだ、ナル」

「『イェリン・ウマイ、メンゲ・クチュ・ベルトゥク―――』ってアルスの言葉でどういう意味なの?」

「それが、どうかしたのか?」

「うん、もうすぐ―――」

 ナルの言葉で、オレもタブレットの画面に視線を戻したのだ。すると、画面の中のオレは―――

『・・・イェリン・ウマイ、メンゲ・クチュ・ベルトゥク―――』

 と呟いたのだ。それとほぼ同時にグランディフェルがその炎の剣から特大の炎の塊を噴き出し、オレもその刀の一振りで光り輝く氣の斬撃を放つところだったのだ。―――ややあってグランディフェルの姿が光の中に消えてゆく―――そして、画面の中のオレは身体に刻まれたニコラウスの斬り傷から血を噴きだして倒れてゆくのだ。そこで画面に映るオレの姿が急に近く大きくなっていく。これはおそらくナルがオレのほうへと走って近づいていくためだ。


『し、しっかりしてッ!!』

『き、君は―――』

『き、気が付いた?』

『オレは・・・君達を―――護ることができただろう・・・か―――』


「このあと、気を失ったアルスを私と春歌で警備局病院に搬送したの」

 そこでこの記録映像は終わったらしく、ナルはタブレットの画面をとんとんと指で叩くと画面が暗くなった。

「・・・オレは食堂で初めてナルを見たとき―――既視感を覚えたのだ。やはりオレはそれ以前にナルに会っていたのだな・・・」

「うん。アルスは私の生命を助けてくれた。春歌の生命も。ありがと、アルス」

「オレもナルとハルカには感謝している、ありがとう、だ」

「ところでアルス、さっきの言葉の意味ってなんなの?」

 ふむ。二度も、やはりナルはその意味をよほど知りたいようだ。

「『イェリン・ウマイ、メンゲ・クチュ・ベルトゥク―――』か?」

「うん」

「『大地(惑星)の・女神は、オレに・力を・与えた―――』という意味だ」

「ふ~ん。アルスはなんでその詠唱を口にしたのか覚えていないの?」

「オレにもよく分からないのだ。ナルの顔はなんとなく覚えていたものの、それ以外のことは霞がかかったのようによく思い出せないのだ」

「―――・・・。詠唱の言葉―――? 詠唱にしては抽象的―――ううん、月之民は氣を行使するときに詠唱をするの?」

 ナルはなにやら独り言を呟いたのだが、その声は小さすぎてオレには聞き取れなかったのだ。

「ナルよ、なにか言ったか?」

「ううん、なんでもない」

「そうか」

 だが、ナルはそれを否定したので、オレも深く追求することは止めたのだ。ナルの機嫌を損ねたくはないし、無理に口を割らせたくもなかったのだ。

「アルス―――」

 ナルはその持参してきたタブレットを布袋に仕舞いながら、オレの眼を見て口を開く。

「もう日も暮れたし、今日はアルスの部屋に泊まっていってもいい? (ふんすっ)―――転移者のアルスの護衛が必要だから―――!!」

 ナルはオレにそのようなことを、自信満々な顔で、自身あり気に言ったのだ。

「ナルよ。ただ泊まるだけならよいぞ―――敵の目を欺くために護衛のナルはオレの寝台を使うといい。その代わりオレは床で寝るのがその条件にさせてもらう」

「―――」

 ナルは不服そうに口を△にしたのだ。まだ婚約も交わしていない男女が同じ寝台で寝るというわけにはいかないのだ。だが、頭ごなしに、帰れ、とナルに言うことはオレにはもうできないのだ。なぜか、といえばすでにオレは彼女に情が湧いてきており、強くナルの意思に反することを言えなくなっているからだ。

「「ッ!!」」

 だが、そのときだったのだ、突然、それが起きたのは―――

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