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五世界幻想譚-The Fantasy of Five Pieces-  作者: 高口 爛燦
序章『・・・ある日常の終焉』
15/68

第十五話 いいだろう、なら見せてやる。俺の六年越しの抜刀術をな!!

第十五話


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 俺は肩で息をしながら膝に手をついた。

「もうここまでくれば大丈夫だろ・・・」

 ったく、腹減ってんのに全力で走らせやがって。喉まで乾いてきただろ。息が整ってくる中、後ろを振り返ってもさっきの変な黒服の怪人(男)の姿は見えなかった。

「とりあえず『警備局』か『治安局』にでも行ってみるか・・・」

 俺はまたとぼとぼと警備局の本局がある官庁街に向かって歩き出し―――

「・・・え?」

 夕暮れの歩道をとぼとぼと歩くそんな俺に一台の黒塗りのワゴン車が猛スピードで向かってきたんだ。しかもライトをハイビームにしてさぁッ!! たぶんさっきの変な怪人の差し金だってッ!! 絶対そうだッ!!

「ッ!!」

 ほんとに一直線に俺に向かってきやがるッ!! あれ、どう見てもやばい車だ。俺を狙ってるにしか見えないんですけど!?

「ひぃっ!!」

 俺が逃げる間もなく、その黒塗りの車は俺のすぐ横の路側帯に停車した。

「あわわわ・・・」

 これ絶対やばいやつッ。俺、マジで拉致されるんじゃねぇの?

「ぃッ!!」

 黒塗りの車の運転席以外の全部のドアが開いて黒いスーツのおにいさんからおっちゃんまでぞろぞろと、がたいのいいのが四、五人ぐらい降りてきた。みんな真っ黒い服を着て、しかもそのうちの何人かは黒のサングラスをかけてるんだぜ!! さっきの黒服の怪人といい、絶対にこいつらグルだってッ。

「俺なにも悪いことしてませんからッ!!」

 俺の中の、いや日本の常識だったらこういう格好をしている人っていうのは特別な職に、たとえば逮捕する方々が捕まえる人達だったり、要人警護の人達とかだったり―――

「ッ!!」

 俺は慌てて進む方向に向かって、つまり西に向かって駆け出した!! しかし、健太は回り込まれてしまった!!


「あ、ああ、あのッ俺なにかしましたっけッ?」

 黒服の一人がゆっくりと進み出る。その黒服の人はサングラスを外した。

「・・・」

 あ、サングラスを外したら、けっこう普通でまともなそうな人―――。

「驚かせてしまったようですね。私はこういう者です」

 彼は俺に身分証明書を見せた。あのよく刑事ドラマで見るような、パタッとする身分証明書だ。

「第六感社渉外部―――?」

 へぇ『第六感社』・・・ってどこかで聞いた名前ぇ―――と思いきや・・・さっき俺に話しかけてきたやべぇ奴と一緒じゃねぇか!! さっきの怪人が俺に言った肩書を思い出したんだ!!

「はい。貴方を『転移者』と見込んでお話があるのです」

「い、いや、あの俺―――」

「さ、乗ってください」

 彼は俺に車に乗るように促した。

「間に合ってますんでぇ・・・ははは」

 俺は愛想笑いを浮かべてこの黒服のみなさんの脇を通り過ぎた。

「然るべき場所でお話しましょう。お金はあるのですか?」

 勝手に人の電話の中をハッキングして覗き見る連中とは、あまり関わりたくないのが本音。

「あ、いや。それはないんっすけど、『警備局』とかちょっと行政のほうに相談してみます・・・」

 俺は振り返りながら黒服のみなさんに軽く一礼した。ダッシュで逃げるぜ!!

「―――」

 俺に話しかけてきた黒服は他の黒服に向かって顎を動かしたんだ。するとどうだろう、他の黒服が―――

「ッ!!」

 話しかけてきた黒服の部下なんだろうか―――そいつらがいっせいに動く。そして、俺を取り囲むように四人が並び立つ。

「ちょッあんたらッ何が目的なんだッ!!」

 さっきまで俺と話をしていた上司とおぼしき黒服がすぅと進み出る。

「それをこれから我が社にて交渉したいと思っているのです。貴方と交わすギャラ契約みたいなものです」

「そういえばさっきも変な・・・えっと能力開発なんたらの人も俺の前に来てたんですが、間に合ってるんですってばッ!!」

 その黒服ははぁっとため息をついた。

「いつものことですが、能力開発・育成部の針崎所長の勇み足には困ったものです。この件はまず我々『渉外部』から相手様に交渉を持ち掛けて折衝し、契約しなければなりませんのに・・・」

「あ~あ・・・もう17時かよ」

 俺はそこでわざとらしく電話の時間を確認した。もう17時を過ぎてしまっていたようだ。普通、俺の常識だと役所関係は17時で業務を終了してしまうものだ。

「あんたら、第六感社のせいで『警備局』が閉まってしまったっすわ」

「そうですか。しかし、民間企業の我々『第六感社』ならまだ業務をしております。さ、どうぞ。我が社へ参りましょう」

「遠慮しておく。だってさっきの奴も『実験体送りにした』とか『電話の中を覗かせてもらった』とか言ってたし、やばそうなとこなんだもん、その『第六感社』って」

 しゃーねぇ。どこか公園とか見つけて野宿でもするしかねぇか。

「ちょっと退いてくれませんかね?」


「「――――――」」


 無言を貫くその他の黒服と黒服の間を縫うようにしてその囲みの外に出ようとしたときだった―――

「それ本気か?」

 俺は黒服の達のあまりにもひどい行動を目の当りにし、ついつい厳しい口調で言ってしまった。それは黒服の男達二人が、また俺の行く先に回り込み、通せんぼをしたから。そして、その黒服の手に握られているのは長さが五十センチくらいの黒塗りの警棒だったんだ。また黒塗りかよ・・・。

「さぁ、早く我々の車に乗っていただきたい」

「やなこった!!」

 うおッダッシュで逃げるぜ!!

「ふんッ!!」

「なにすんだッおっさん・・・!!」

「ほう・・・?」

 おっさんが上から下に振り下ろした警棒の一撃を躱す。昔、祖父ちゃんに師事してたおかげで警棒の動きを予測し、それを躱せたんだ。

「―――」

 黒服が五人、俺は一人。多勢に無勢だ。しかも、そいつらみんが警棒を持っているとみていいだろう。仕方ない―――この模造刀を使うしかないのかもしれない。

「―――いいだろう。なら見せてやる」

 オレは手に持っていた模造刀を制服の革ベルトに差した。俺だって小剱流剣術の跡取り息子だったんだ。そして十一歳まで、祖父ちゃんが蒸発するまでは、祖父ちゃんにずっと師事してたんだぜ・・・!!

「こい―――ッ!!」

 祖父ちゃんに教えてもらっていた小剱流抜刀術の所作を思い出しながら、左足を下げ、腰を落としたんだ。左手は鞘を握り、右手で模造刀の柄を握り締める―――。俺の家に代々伝わる剣術は小剱流剣術といい、剣術を主流にしていたが、先祖はいわゆる抜刀術を生業にしていたらしい。子供の頃、まだ祖父ちゃんがいた頃、祖父ちゃんに聞いたんだ。そして、俺はそんな祖父ちゃんが繰り出す抜刀術を幼き日に目にしたことがあったんだ。

 祖父ちゃんがやっていたとおりのことを思い出し―――

「―――、―――、―――」

 俺は三度、息を深く吐いて吸った。これで呼吸は整った。あとは向こうから手を出してくるのを待つだけだ―――


「少しおいたが過ぎるようだ」

 黒服の一人が警棒をジャキンと伸ばしたんだ。

「やめておけ―――奴の構え、それは抜刀術だッ」

 もう一人の黒服の制止も聞かず、彼は―――

「痛い目を見てもらうぞ・・・」

 警棒を振りかざした彼黒服の一人が俺に向かってその黒塗りの警棒を振り落とす。


「―――ッ!!」

 きたッ!! 俺は黒服が警棒を勢いよく振り落とすのを、見計らって思い切り、模造刀を振り抜いたんだ―――

「―――」

 まるでスローモーションのように視えた。鋒がまず警棒の黒服の右脇腹にめり込み、そのあとを追って銀弧を描くものうちが胴を切り裂くッ

「カハッ!!」

 黒服は俺の一刀をもろに喰らって警棒を落とし、後ろに倒れたんだ。そして呻き声を上げながら、腹を押さえていた。

「―――す、すまん!!」

 ちょっとやりすぎてしまったかもしれない。久々にほんと六年ぶりに抜刀術を繰り出したから、加減を忘れていたらしい。


「「「―――!!」」」


「え?あれ?」

 なんか黒服のみなさんの目つきが変わってるんですけど・・・


「すまんじゃねぇだろ―――・・・!!」

「クッ!!」

 おっさんの殴りかかってきた警棒を模造刀で受け止めた。そのときに互いの得物から火花が散ったんだ。それから斬り結び、いや、俺の得物のほうが警棒よりも長いから、俺の模造刀の鋒がその黒服のおっさんの頬を掠めたんだ。その瞬間にすぅっと、うっ血していくおっさんの頬。

「ひぇー、ごめんなさいッ!!」

 これ日本じゃ確実に過剰防衛になってダメなやつだ。日之国日夲ではこの場合どうなるんだろう? 俺、警備局に逮捕されちゃう?

「ごめん、じゃねぇ―――!!」

 感情に任せて警棒を振りまわすおっさんの警棒を半歩躱して避け、そのあとの摺り足の応用でおっさんの脇を取った―――ッ

「せやッ!!」

 俺は模造刀を両手に握って振り下ろす―――!! 俺の一撃は、おっさんの腰を捉えたんだ。

「ぎゃッ・・・!!」

 おっさんは倒れた。

「・・・息がないどうやら屍のようだ」

「生きとるわいッ!! くっそぉッお前のせいで腰痛が再発してしまったじゃねぇか・・・!!」

 おっさんは腰を押さえながら、立ち上がろうとしたんだけど―――

「うッ―――・・・」

 中腰のまま動かくなったんだ。

「ごめんなさいッ」

 よし、これで二人を倒したぞ。残るは運転手を含めてあと三人だ。なんか祖父ちゃんと剣術の稽古をしていた小学生の頃を思い出すよなー。あのときは楽しかったなぁ。

「へへへ」

 ってーッ俺の楽しい思い出笑いが絶対誤解されてるぅ!? 残りの黒服さんを見れば、みんなブチ切れた眼をしてやがります。

「てめぇ・・・なに笑ってんだッ」

「―――へ? いやいや違うっすよ!? あの、この笑いは楽しいから笑ってたんであって―――。ッ!!」

 俺の背中に何か固い棒のようなものが押し当てられたんだ・・・―――

「おとなしくしてもらうぞ」

「ぐあッ―――」

 俺の身体に何か鋭い痺れが走ったんだ。でも俺は模造刀だけは、模造刀だけは落とさないように握り締めた。


「ちょッ放せ・・・!!」

 力の抜けた俺の身体は、両脇から無言の黒服達によって俺は取り押さえられたんだ。ちなみに模造刀まで取り上げられたんだよ。頼むから俺の模造刀ちゃんだけは傷つけないで。

「うわッうわわわ―――」

 そのまま俺は引き摺られるように―――やばいッ、車で拉致される!!

「た、助けッ―――」

 俺は黒服のおっさんの手の平で口を塞がれ、そのまま黒塗りの車の中に押し込まれたんだ。ちなみ俺が倒した黒服さんの二人は他の黒服に抱き起されて、黒塗りのワゴン車の最後部座席で横になってた。

「こ、こんなことをして、あんたらもただじゃすまないんじゃないんすか?」

 車にエンジンがかかり、ぶろろーと発車する。

「貴方は『転移者』です。この日之国日夲に戸籍はありますか?」

「―――・・・」

 ぐぅ・・・それを言われたらなにも言えない。てか戸籍がないってことは、なにをされても言って行くとこもないし、もし殺されて俺の遺体が発見されても身元不明遺体で処理されるってこと?

「―――・・・」

 福利厚生も日本と同じだとしたら、戸籍がない俺は行政からなにもしてもらえないってこと? いやいやいや諦めるなよ、健太。絶対に過去にもここ日之国日夲に来た転移者はいるはずだ。きっとその人達も俺みたいに戸籍はなかったはず。前向きに考えよう!!

「・・・・・・」

 俺が生まれ育った日本にも弱者を守る制度はあった。

「―――」

 きっとこの日之国日夲にも俺みたいな弱い存在を守る法律や制度はあるはずだ。これで俺の覚悟は決まった。後部座席に押し込まれた俺の両隣には黒服のおっさんが二人、それから前の助手席には誰もいなくて代わりに俺の模造刀ちゃんが立て掛けられていた。一番後ろの座席に負傷者二人、運転士を入れて五人の黒服が今、この車には乗っている。

「―――!!」

 いざとなったら前の助手席に手を伸ばし、席の上から柄を伸ばしている俺の模造刀を回収する―――。頭の中で作戦を考える。あの本社ビルに着くまでにこの車を脱出する。まずは左か右か・・・いや歩道側の左だな、左の黒服を蹴り倒して、模造刀の鞘の先で窓ガラスを割り、それから脱出―――んで怪我を負わないように受け身で転がるように歩道の植え込みにダイブ―――!! そこから大声を出して誰かに警備局を呼んでもらう!! よしこの作戦でいってみるか―――

「―――ッ!!」

 まさにそれは俺が身体に力を入れたときと同時だったんだ―――、車の運転手が突然急ブレーキを踏んだのは。慣性の法則に従って俺の身体は前のめりにがくんとつんのめる!!それは他の黒服も同じで。


「ど、どうしたッ!?」

「いえ、前に検問が張っていたんです!!」

「な、なんだと!?」

「ま、まさか―――我が社の行動をもう掴んだというのかッ!?」

 黒服達に動揺が走り、色めき立つ。

「ど、どうしますか、課長!!」

「本社ビルまでもう少しだッ検問を強行突破しろッ」

「し、しかし―――」

「かまわんッ本社の敷地に入ってしまえばこっちのもんだッ出せッ!!」

「はいッ」


「・・・」

 俺はチャンスを逃したんだろうか? いや、まだだ。まだ黒服達が動揺している今がその好機かもしれない。そんな中、運転手の黒服がアクセルを踏みしめ、全開の猛スピードで検問のバリケードを轢き飛ばす!!

「ッ!!」

 検問のバリケードがフロントガラスや側面のガラスを掠めて飛んでいく様子に俺は思わず目を閉じてしまった。でも、すぐ目を開いてフロントガラスの先、車のライトが照らす前方に目が釘づけになった。

「あ、危ねッ!!」

 俺は思わず叫んでしまったんだ。だって車の進む先に、道の真ん中に一人の少女が立っていたんだから―――

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