第十三話 気が付いたら俺は、日本・・・いや地球じゃないとこにいました!!
第十三話
「ん・・・あぁ―――」
俺は目を覚ました。ゆるりと上半身を起こす。
「あれ?ここはどこだ?」
目を擦りながら周りを見れば、俺が寝転がっていたところは街の歩道の端っこだったんだ。
「ちぇ・・・」
俺だけ置き去りにして敦司達は帰ったのかよ。俺が着ていたのが学ランだったから、今の状況が昨日遊んだ帰りだということが分かったんだ。俺が目覚めた場所に記憶はない。周りを見渡すかぎりちょっと下町っぽいような街の感じもする。でも日本のどこかの街だ。俺は左胸内ポケットにしまってある電話を取り出した。
「よし、位置情報で調べてみるか」
と、俺は電話の電源を入れた。画面に映し出されたそのアプリをタッチして―――
「ん? あれ、おっかしいな・・・」
でも、俺の電話は、んともすんとも言わなかったんだ。
「え゛・・・圏外? どういうことだ? サーバーが落ちてんのか? それとも電波の不具合か?」
仕方ない。俺は電話をポケットに仕舞うと、ちょっとそこいらを探索がてらに歩いてみることにしたんだ。
しばし歩くこと十分ほど下町地区を抜けたようで、周りが近代的なビル群の街並みになった。そんな中、目の前に一際馬鹿でかいミラーガラスのビルが見えてきたんだ。よし、あそこで今の場所を訊いてみようかな?
「『第六感社- SIX SENSE COMPANY -』本社・・・?」
ビルの前に設置されてあるそのメタリックな案内看板にそう書いてあった。『第六感社』?こんな名前の企業って日本で聞いたことあったっけ? 俺は社員入口の前に立っていた強面の守衛さんのところに近づいていった。
「すいませ~ん」
「なんだね、君は」
おっと、強面おっさんの野太い声の迫力半端ないな。でも意を決して俺は口を開いた。
「ここどこっすか?」
「はぁ?」
「いや、だからここどこなんっだろうなぁって思って訊いたんすよ」
「ひやかしはあっち行きなさい」
おっさんは犬猫にするみたいに右手でシッシとやった。
「あ、そっすか・・・」
なんか感じわりぃな、この警備員。仕方なく俺は踵を返し、そのビル街の中を突っ切り、ちょっとでもいいから繁華街っぽいとこを目指した。繁華街なら飯にも、そしていい人にもありつけるかもしれないから。
さらに歩くこと十分ぐらい。通信はできなくても時間は分かるため、意外と役に立ってる俺の圏外の電話。どこかに地下鉄はないのかな? 地下鉄の駅なら周辺地図はあるだろうし、移動も楽だ。
「おっと、あるじゃねぇか」
そこには地下鉄の案内板が。それに街を歩く人の中には地下から続く階段を登ってくる人、また地下へと入っていく人が見て取れたんだ。その様子を見た俺は地下へと続く階段を下りていった。
「は?」
俺が券売機に投入した百円も五百円も、何回入れてもころころっと返却口から出てくるんだ? どうなってんだ、これ? 路線図や運賃表を見ても数字のあとに『円』と表示されているのに、どうなってんのこれ?
「おーい、駅員さーん」
俺は地下鉄の窓口に行った。でも駅員さんに訊いてみても、なんかこの硬貨は使えませんの一点張りだったから、さっさと見切りとつけて俺は地上に出たんだ。
ここはほんとに日本か? ふとした拍子にどこかの次元の裂け目から異界へと飛んでしまうという『都市伝説』を思い出した。鏡の向こうの異世界なんて―――まさか、な。
「ん? あれは?」
それはフリーの無料情報検索端末が置かれた施設に違いない。
「へぇ、こんなもんもあるのか。『SSCサービス検索』? SSCってなんの略だろう?」
そこはたぶん公共の図書館にもよく置いてあるオンライン検索サービスだろう。俺はその施設に入って一つのパソコンが置かれてあった席に座った。
えっとまず検索したいことはこの今、俺がいるこの場所のことだ。
「これでよし、と」
検索のところに。『ここ 場所』と打ってみた。検索をタッチするとすぐに、検索が始まった。
「えっ!?」
パソコン画面に、地名のハイパーリンクが貼られた状態で『日之国日夲、首府日府』の文字―――おそるおそる俺は地名らしい『日之国日夲、首府日府』を人差し指でタップしてみた。
「―――」
そうこれが見たかったんだ。画面が地図に切り替わり、俺が今いる地点が矢印で表示された。矢印があるところは『日府』と表示されていた。『日府』はおそらく首都のことだろう。そういえば『日本国』でも『府』は首都を意味するもんな。たとえば日本の首都も以前は『府』と呼ばれていたし、ほかにもいくつか府はあったはずだ。
画面を指で拡大させると、だいたいの地区が解ってきた。最初、俺がいた所は下町の辺りっぽい。それからあの感じ悪い警備員がいたビル群がオフィス街。今の場所はだいたいオフィス街と繁華街のちょうど間っぽい。それから画面を少し西側に持っていくと、だいたいその辺りが官庁街らしい。官庁街にはいろんな建物がひしめき合ってて『総務局』『通信局』『警備局』『治安局』とか他いっぱい。
「周りは?」
今度、俺は地図を縮小していった。みるみる『日府』の街並みが小さくなっていき、日府の範囲が行政区画の点線で表され、日府がだいたい円形をしていることが判った。その日府の周りの県みたいなのが七地区あるみたいで。
「全部、『日』が付いているだと?」
日府の東が日向州、南東が日夕州、北東が日晶州。転じて西が日宇州。北西が一番大きくて日下自治州。どうやら南に標高が高い山脈が東西に横たわってるみたいで、その辺りを含めた南部が日月地方となっていた。そして日府の周囲を一回り大きく取り囲むような感じで日和州が設置されてるようだ。
「―――?」
でも、もっと周りを見たくて拡大させても、なぜか、それ以上の地図は白塗りで、日府がある所が『日之国』(エアリス)として、東に『ネオポリス』(ドールズドメイン)、西は一番大きい『イニーフィネ帝国』、南の山脈の向こう側は『月之国』(オルビス)、そして『イニーフィネ帝国』と『日之国』に挟まれて、いちばん小さな菱形の領域は『イニーフィネ帝国総督領旧・魔法王国イルシオン』となっていたんだ。(―――)はイニーフィネ人による呼称、としてある。
「え? マジでここ異世界?」
俺は地図の表示を一度閉じて、検索画面に戻った。まずは自分がいる場所のことを詳しく知らないと。
「『日之国日夲日府』これでよし、と」
その文字をタップすると、パソコン検索画面に1~10までが表示され、そのどれもが、日府からのお報せとか、日府にある警備局、医務局、天候局といった役者関係のサイトや、それらからのお報せとかがヒットした。
「日之国日夲・・・」
そうだ、日之国日夲日府より―――。そこで今度は『日之国』と打ち込んで検索にかけてみた。
「・・・」
画面にはたくさんの『日之国日夲』の記事が並ぶ。その中でも王道そうな、ネット上の百科事典をタップしてみた。
すると、画面に『日之国日夲』の成り立ちから歴史、そうして政府の統治機構なんかのページが出てきた。
「日之国日夲ね・・・なになに―――」
『世界統一化現象』以降にかつての日之国からやって来たと称する日之民が纏まって建国した日之民の国家組織。日之国の領域が確定した当初の日之国の領域内には複数の同系国家あり、現在の日之国日夲の日和州の前身である『日之国統一機構(日和政権)』が各地の日之国系政権を統合することによって今の『日之国日夲』ができた。そして、最後まで日之国日夲に統合されていなかった日之国の北西にある日下をイニーフィネ帝国による大侵攻(北西戦争)後に併合した。
「ん、『イニーフィネ』?」
なんかその言葉・・・どこかで聞いたことがあるような、ないような・・・でも俺は思い出すことができずにそのまま読み進めていった。日之国は全ての五世界、『イニーフィネ帝国』『月之国』『旧・魔法王国イルシオン』『ネオポリス』と接しており、惑星イニーフィネにある大陸の中北部を占める。
「やっぱここは異世界かよ・・・!!」
そのあとに載っていたことは、その日之国日夲政府の統治組織としての『局』だった。日本の『省』や『庁』に該当するみたいだ。『警備局』『医務局』『治安局』『通信局』『天候局』などなど。
「なになに『警備局』と『治安局』は仲が悪い」
あるあるだな。その次のことは、インフラとか各地の都市、大企業、日之国日夲の国民とかのことだった。
リンクをタップし『日之国の日之民』に飛ぶ、記事を読んだ感想としては、日之国に住む日之民は風俗・風習・習慣・文化的水準において俺の日本国とおおむね同じ印象だった。『日夲』という名前も『日本』とよく似てるし、ここはおそらく俺がいた現代の日本のような場所だろうと、俺は解釈した。
記事の中の説明によると、日之国の日之民は現代の超能力者であり、自身のアニムスを脳内で、生まれ持った『超能力』に具象化させて行使する。なお、イニーフィネ人は日之民のことをエアリス人と呼称する
「つまりこの世界ではみんなが超能力を持ってるってことか?」
次に、補足文に目をやった。
月之国月之民の人々は文化的水準において古代~近世の人々と同等であり、自身のアニムスを『氣』と呼び、『氣』を用いて自身の身体や武器を強化し、もしくは実体化させて行使する。なお、イニーフィネ人は月之民のことをオルビス人と呼称する。
イルシオン人は中世ファンタジー世界のような住民であり、自身のアニムスを、もしくは大気中に在るアニムスを『マナ』と呼び、自身に取り込み、詠唱することで任意に『魔法』を発動させる。
ネオポリスは僅数の機人が少数の半機人と多数の無能力の人間を支配する世界。なおイニーフィネ人は『ネオポリスの機人』を『ドールズ(人形族)』。『ネオポリス』を『ドールズドメイン(人形族の領域)』と呼称する。
そして、イニーフィネ人は原初の民であり、彼らは『超能力』、『氣』、『魔法』、『機械』の全ての異能種を行使でき、高度な『魔法科学力』をも持っているが、一能突出の上記の人々達によって惑星イニーフィネの西端に押し込められた。
「――――――・・・」
ネオポリスやべぇとこみたいだな。『あの世界』―――俺が昔やったゲームの中での世界みたいだ。俺達人間がゴミみたいに扱われてるのかも。それと、住んでいる場所を追われたイニーフィネ人ちょっとかわいそうかも。
「―――」
次に俺はハイパーリンクが貼られてある『世界統一化現象』という単語をタップしてみた。画面に現れた記事の概要はこうだ。
世界統一化現象
経緯
『建国年代は不明であるが、この『惑星イニーフィネ』の空と大陸と海洋はイニーフィネ人という人種が興した統一国家により統治され、その国―――イニーフィネ帝国は栄華を極めていた。『イニーフィネ』というのは彼らの言葉で『限りなく完全』を意味し、自身のアニムスを駆使してその名の通り、『超能力』『氣』『魔法』を行使し、さらにそれらを駆動源にした『機械』をも操ることができ、高度な『科学力』を持っていた。
彼らは全てのことを成すことができたため、次第に彼らの母星である惑星イニーフィネに対する感謝や慈愛も忘れ、人々は驕ったように振る舞うようになった。
しかし突如、惑星イニーフィネは大気圏内において主星の光とは別の靄のように薄く漂う白光に覆われるという事象が全球規模で起きた。一時的に全ての異能が使えなくなり、こんにちでも彼らイニーフィネ人はそれを『災厄の日々』とよんでいる。
後世では、それは惑星イニーフィネが複数の異世界惑星と一時的に空間を越えて繋がったことにより、発生した現象であると解釈されている。
一つの世界だったこの惑星イニーフィネに四つの、それぞれ違う惑星からの移住者達が空間を超えて、空間ごと来訪してきたことにより、惑星イニーフィネは五つの『異世界』を同時に内包する惑星となった。先住者イニーフィネ人は自分達の惑星イニーフィネに転移してきた四つの異世界集団を『転移者』とし、日之民と自称して超能力に特化した集団を『エアリス人』、文化的水準が中世と同等で氣の行使に特化した集団を『オルビス人』、詠唱魔法を行使する『魔法王国イルシオンの民』、そして機械に長けた機人を『ドールズ』と呼称した。彼らイニーフィネ人の言葉でエアリスは『平凡の地』。オルビスは『昔日の地』。ネオポリスは『ドールズドメイン(人形族の領域)』とする。イルシオンは自他ともに『幻想の地』である。
概要
彼ら四つの外惑星からの来訪者が惑星イニーフィネに転移後、彼ら移住者達は先住者であるイニーフィネ人の領土を奪いつつ、お互いに協力と闘争もはじめた。その争いは激化の一途をたどる。惑星イニーフィネで起きたこの動乱のことを『世界統一化現象』と呼び、これにより惑星イニーフィネは全球規模で激動の時代を迎えることとなる。
時が経つにつれてこの『世界統一化現象』は収束しはじめ、こんにちの比較的安定したこの新しい五つの世界を内包する惑星イニーフィネとなった』
「―――」
じゃあ、そのなんだっけか・・・、上のページに戻ってみる。そうそう、エアリス・・・日之民も、オルビス・・・月之民も、イルシオン人も、ネオポリス人も、イニーフィネ人にとっちゃあ侵略してきた異星人じゃねぇか。んで、この惑星イニーフィネには、今俺がいるここ日之国、それから月之国とイルシオンんでネオポリス、そして元からあったイニーフィネという五つの属性の世界があって、それぞれ国と人々がいるってことか?
「・・・ややこしい」
んで、続いてオレはその下に記載されてある『世界統一化現象』という動乱と激動の時代の考察記事に目を向けたんだ―――。




