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五世界幻想譚-The Fantasy of Five Pieces-  作者: 高口 爛燦
序章『・・・ある日常の終焉』
12/68

第十二話 俺、その世界でフィーネさんのために頑張るっす!!

第十二話


九日後


 ホームルームが終わり下校。それからみんなでカラオケボックスに入って歌いまくったあと、午後の俺達は幼馴染六人みんなでオタク街に来ていた。もちろん俺の推しだぜッ!! なんか真が『制服で』とか嫌な顔をしていたけど、そんなの気にしないぜ!! めちゃくちゃテンション上がるぜッ久々の幼馴染六人でオタク街だからさ。


「―――・・・」

 俺はショップで手に入れた模造刀を眺めてニヤッと笑みをこぼした。これを手に入れるために俺はどれだけ苦労したことか・・・!! 限定販売だったからすぐに完売して中古で出回っていたなんて信じられない。そう、その模造刀とは俺の好きなラノベの主人公が使っている刀を模したやつだ。

「ぐふぐふふふ・・・中古なのにこんなにも美品なんてありえーねぇぜッひゃっほーいッ!!」

「いぇーい、健太・・・!! さぁ、いつものやっちゃってよ!!」

 俺は同じくノリノリの美咲とハイタッチを交わした。

「おうよ、美咲。いいぜ、見せてやる俺の真の力を―――」

 そこで俺はオタク街の道のど真ん中で模造刀を抜刀術で構えた。

「―――俺はお前を助けることができるのか!? いや、やってみせるッそれこそが俺に与えられた使命なのだから―――」

「そんなことを公衆の面前やっていて、健太は恥ずかしくないのか?」

 白けた眼で俺を見てくれるな、真よ。では真にヒロインのことを訊いてみよう。

「やっぱ佐那たんってかわいいよなぁ。な?真、お前もそう思うだろ?」

 俺は、ほれほれと電話の画面を見せた。

「―――・・・」

「おほんっ真くん。佐那たんはね、俺が好きな女の子の一人で特にあの容姿とかわいい口癖がおにーさん的にはたまらんのですよ!!」

「はぁ?大丈夫か、健太? こんなものは、たかが電子画像だろう?」

 うん、やっぱ俺の思ったとおりか、真ならそういう真面目な回答をすると思ったよ。

「かーッ解ってないな、真は。んじゃ己理(きり)はどう思う?」

 そこで俺は後ろを歩く薄幸男子でライトオタクの己理に話を振った。

「う、うん。いいんじゃないかな・・・? その子、可愛いいと思う・・・よ?」

 己理はよく見えるようにと、ちょこんと背伸びをしたんだ。たぶんそういう仕草にグッとくるんだろうな、大学部のおねーさん達は。

「だろだろ? んでさぁ、またこの作品の主人公がかっこいいんだよな~『―――俺はお前を助けることができるのか!? いや、やってみせるッそれこそが俺に与えられた使命なのだから―――』って言うんだよぉ。いやーあの場面最高だね!!」

「街中でそんな大声を張り上げて、健太は恥ずかしくないのか?」

「なんだよー、真ノリ悪いなぁ。―――いいだろう、そんな真に俺から言おう!!」

 俺は右手を自分の顔の前に翳して手の甲を真に向けた。いわゆる厨二芸だ。

「フッどうやら『(シン)』にはレベルが高すぎるようだな、俺の言葉が理解できないとは」

「・・・なにぃ? それと何回も言っているだろう!!僕はシンじゃない(まこと)だ・・・!!」

「フ・・・これだからインテリメガネ君は」

「――――――」

「まぁまぁ、二人ともそこまでにしとけって。どうせ健太はネタを言ってるだけなんだしさ」

「そうそう、真は健太のイタイ発言を間に受けちゃダメだって」

 そうしていつも最終的には敦司―――稲村 敦司と天音―――辻堂 天音。俺の一番付き合いの長い二人の幼馴染達がやいやいと止めに入ってくれるんだ。もちろん二人もほかの美咲も己理も、俺と真が本気でケンカをしていないことも解っている。なんたって俺達六人は幼馴染なのだから。

「・・・解った善処しよう辻堂さん」

「それと健太も解ってやってるだろ? ほどほどにしとけって。まぁ、久々の六人集合でテンション上がってるのは俺もだけどさ」

「わかってるって、敦司」

 俺は楽しいんだ。子供の頃は祖父ちゃんに師事し、小剱流剣術を磨いてきた。だけど今はその時間を遊ぶことに回し、そして仲間達とやいやいわちゃわちゃと過ごせることが楽しいんだ―――。


 楽しい時間は過ぎるのが早く、俺達六人は最寄り駅で降りた。

「ふんふんふ~ん」

 いやぁ、俺は欲しいものが手に入ってとても満足だぜ。すりすりと模造刀の鞘を撫でた。あの後も俺と美咲が厨二発言を連発して、その話を振った真は呆れ顔ででも話に付き合ってくれて、ライトオタクの己理を俺みたいなオタクにするために勧誘しまくって・・・天音は、ほんとは敦司のことが好きなくせにさ、クククク・・・リアルツンデレって美咲と囃し立てたら、ほんとに怒ってしまって、慌てて敦司が止め入って・・・。まぁでも本当に楽しかった。

「六人全員が集まったのって、いつぶりだったっけ?」

 俺は敦司に話しかけた。いや、この六人のリーダーはたぶん敦司だ、と思う。真は敦司には一目置いてるし、天音は昔から敦司のことが好きだったし、俺と美咲はウマが合って、己理はいつの間にか敦司の側にいたんだよな。そういえば、昔、もう一人、結城 魁斗(ゆうきかいと)ってやつがいたっけ。みんなで町内会のキャンプ行ったとき、結城は忽然と俺達の前から姿を消したんだ。朝になっても、何年経っても結城が戻ってくることはなかった。あいつ一人だけあぶれて、俺達じゃない地区の組に入れられたんだよな。でも、行方不明直前まで遊んでいたのが俺達六人ということでいろいろと大人達から言われて、あいつ結城の話は俺達六人の中ではタブーになっている。


「そうだな、六人全員が集まったのは今年の正月にみんなで初詣に行った以来だったかな?」

 敦司は思い出すように、空に視線を向けていた。

「あ、そうそう。俺その前日大晦日まで戦っててさ、なんか寝坊したわ、そういえば」

「あー、あのお盆と暮れのイベントか」

「そうそう、めちゃくちゃ人多いけどな」

「よく、健太は行けるね。僕だったら迷子になりそうだよ」

 俺と敦司の会話に入ってきた己理に話を振ってみるか。

「じゃあ、己理。俺と一緒に行かないか? お前を迷子になんてさせねぇよ、俺がな。己理だけに(キリッ)」

 うん、己理には俺の冗談は通じなかったようだ。

「え? あ、ううん・・・僕はいいよ、倒れて迷惑をかけちゃいそうだしね。・・・誘ってくれたのにごめんね健太」

「いいって、いいって己理」

「じゃあ、私が一緒に行ってあげようか?」

 そこへ美咲がひょこっと会話に参加してきた。

「お前やだ。俺の戦利品を散らかしそうなんだもん」

「ぶーぶー、健太の戦利品をSNSでみんなに紹介したろー、にゃははは」

「やめろ、やめてくれ」


「美咲ちゃん、こわい」

 一方一人になった天音はすぐに敦司のとこに飛んでいく。

「ねぇ敦司。梅雨が明けたら、夏よね。そしたら―――」


「・・・」

 あらら、天音のやつ。そっこーで敦司の夏休みの日にちを押さえてやんの。ちなみに俺の夏休みの予定はお盆の期間に集中してる。その三日間は俺が譲ることのできない三日間だ!!


「――――――」

 ふと、そこで終始誰とも喋ってなかった真が立ち止まったんだ。


「?」

「どした、真?」

 それにいち早く気が付いたのは敦司と俺だ。

「―――来る・・・」

 来る、と一言呟いた真は地面を蹴っていきなり走り出す。


「あ、おい真!?どうしたんだよ?」

 敦司が、真のおかしな様子に気が付いて真の後を追いかけたから―――

「ッ!!」

 俺も弾けるように真と敦司のあとを追って駆けだしたんだ。そういえば、あいつ今、『病んでいるかもしれない』とかって自分で言っていたよな、それにこのことがなにか関連があるかもしれない。俺のあとをぞろぞろとほかの幼馴染達が追いかけてくるのも見えたんだ。

「―――」

 俺達の十メートルほど先を走る真はいきなり立ち止まり俺達に振り返ったんだ。

「来るんじゃない・・・!! これは僕の問題だ、君達を巻き込むつもりはない・・・!!」


 そのとき俺は気づいたんだ―――。

「!?」

 なんだろう、あの白い靄。夕闇の中、前に、正面を向く真の背中側からうっすらと霧のような白い靄がすぅっと音もなく近づいてきたんだ。霧とか煙が街灯に照らされて反射しているような感じには全く見えなかったんだ。むしろ、その白い靄はそれ自体が白い光を放っているように見えたんだ。


「敦司―――こわい」

「お、おい天音―――」

 そのとき、天音がぎゅっと敦司の学ランの裾を右手で掴んだ。

「あ、あれ―――あれ見て敦司」

 その天音の左手が指さすほうを敦司は見た、それに続いて己理も、美咲も、真を包み込もうとする淡く光る靄の存在に気が付いた。


「僕はずっと父の存在が重圧だったんだ。でも、そんなものとはもうおさらばだ」

「なに、言ってたんだ?真」

 敦司が天音の手をほどいて真に数歩近づいたんだ。

「来るな、敦司。お前は来てはいけない。お前には辻堂さん、辻堂 天音という存在がいるはずだ」

「・・・わけわかんねぇこと言うなよ、真ッ。俺達は六人みんなで友達だろ?違うか!?」

「君達を巻き込んでしまう。さぁ早くここから立ち去れ」

「立ち去れ? 何言ってんだ、真ッ俺達は友達だろ!!」

「―――」

 敦司の問いかけには厳しい顔をしてなにも答えない真。

「敦司―――」

 今にも真に跳びかかろうとする敦司の前に俺は右腕を出して、敦司の動きを制止させた。

「け、健太―――・・・!?」


「・・・僕は『彼女』の元へと行く。さようなら―――僕の一番の友、敦司、健太」

 何かを決意したような顔つきの、そんな真に向かって俺は半歩前に足を進めたんだ。

「真・・・お前がそういうんなら、それでいいんじゃねぇの・・・そっちでも頑張ってこいよ」

 オタクをやってきてこういう異世界ファンタジー系に触れていた所為かもしれない。これはきっと、この奇妙な白い靄、これは異世界への扉だ。真から『おかしな夢』の話を事前に聞かされていたことで、俺の中で今の真の言葉はすとんと腑に落ち、納得できるものだったんだ。

「―――・・・フッ」

 真は最後に俺を見て、そのかっこいい笑みをこぼすと、自らその足を進めて白く光る靄の中へと入っていったんだ。


「ん―――くぅ・・・!!」

 でも敦司はとても悔しそうな表情をしてて、真を追いかけて光る靄の中に飛び込んだんだ。

「待って敦司・・・!!」

 敦司を追いかけていく天音。するとどうしたことか、その白く光る靄が大きくなって、少し離れた位置にいた俺や美咲、己理までも包み込んだんだ―――。

///

 白い靄の中は上下左右の感覚もなくて、なんだか身体がふわふわと浮いているような変な感覚だった。美咲や己理は俺の傍にいたはずなのに、なぜかその姿は見当たらなくなっていた。

「―――」

 そのかわり、淡く白く光る靄のその中で俺は見てしまったんだ。真が若い女の人と一緒にいる姿を。二人はなにやら喋っているようだった。若い女の人は色白で、とてもこの世の者とは思えないほどに綺麗な人だったんだ―――。真とその綺麗なお姉さんの話は終わったらしく、真の姿だけがだんだんと薄れていき消えていく―――!!

「真ッ!!」

 今しかないッそう思った俺はとっさに声を上げた。

「―――!?」

 俺の声が届いたみたいで真とその若い女の人、その二人と視線が合った。

「その人とがんばってこいよッ!!」

「―――そうか、お前にも『彼女』は見えるんだな。―――では、また世界のどこかで会えるかもしれないな・・・またな、健太」

「おう、またなッ真!!」

 俺が笑顔でぶんぶんと手を振ると、真も納得したような満足げな笑みを浮かべてその場からすぅっと完全に姿を消していった。


『これは、夢のようなものよ、小剱 健太くん』

 え?突然の俺の頭の中に若い女の人の声が聞こえてきたんだ。でも直感的に解った、この声の主はきっと真となにやら喋っていた若い女の人の声だ。

『きっと目覚めれば忘れてる』

 そうなのか?これは夢のようなものなのか。

『えぇ。でも、貴方は真くんと同じように私の声が聴こえて、しかも話せることまでできているわ』

 え?普通の人はできないんすか?

『うん、そういうものなの』

 え、マジで? 俺特別なんすか?

『うん、健太くん。貴方も素質は持っているわ』

 素質ねぇ・・・。でも俺ほんとに一般人っすよ。しかもオタクだし。

『健太くん』

 なんすか?

『今なら、貴方を元の世界に帰すことができるわ。健太くんはどうしたい? 帰りたい?それとも私の惑星(ほし)に来たい?』

 その感じだと、一度行ったらもうこの地球に帰れなくなるやつっすよね?

『えぇ、まぁ』

 どうせ、俺みたいなてきとーなやつが元の日常に戻ったとしても、たかが知れてるし・・・。祖父ちゃんが俺を捨てて蒸発しちまった所為で俺の人生は空虚なものになっちまったしな。それに真の行方も気になるんだよなぁ。姿の見えなくなった敦司達はどこに行ったんだろう?

 そういえば、おねえさんの惑星(ほし)ってなにがあるんすか?

『健太くんの惑星(ほし)・・・ガイアさんはエアリス・・・いえ『日之国』に分類されると、思うわ。だからきっと貴方にも真くんと同じように超能力を授かるわ』

 マジっすか!! 行きます。俺おねえさんの惑星(ほし)に行きます、てか行かせてください!!

『ありがとう、健太くん』

 お願いします!! そういえばおねえさんの名前はなんていうんすか?

『私?私はイニーフィネっていうの?』

 そっか。イニーフィネ、イニーフィネ・・・じゃあ俺、フィーネさんって呼んでいいっすか?

『―――フィーネ・・・。ありがとう、健太くん』

 え?どうして涙ぐんでるんすか、フィーネさん?

『私にそんなかわいい名前をつけてくれて、しかもその名前で私を呼んでくれたのは、健太くんが初めてだから』

 フィーネさん。俺、敦司と違ってネーミングセンスには自信あるんすよ!!

『貴方は私にかわいい名前を与えてくれた、ありがとう健太くん』

 いや、それほどでもないっすよ、俺オタクなんで。

『あら、その刀は?』

 あぁ、これは模造刀っす。俺の好きな文学作品の主人公が使ってる刀っす。慌ててたんで持ったままでした、ははは。それに俺、刀好きなんで。

『そう、「刀が好き」なのね。解ったわ、健太くん―――』

 握手っすか?いいっすよ、フィーネさん。俺は差し出されたその白い右手を右手で握り返す。

『健太くん、貴方は私に、私達だけの名前を与えてくれた。だから私は、貴方には特別な「力」を与えましょう』

 特別な力?ってなんすか? ―――ってえぇええッ!?フィーネさん、俺光ってるんすけど、それに身体がめちゃくちゃあつくなって・・・!!

『うん、その「力」もいずれ解るときがくるわ』

 まぁ、いいすけど・・・

『さっきにも言ったとおり、これは夢のようなもの。健太くんが気づけばきっと私と会ったことの大半を忘れているわ。でもこれだけは忘れないでね』

 なんすか?

『私の惑星では悪い子達が私のいい子達を排除しようとしていて・・・だから助けてほしいの、健太くん』

 え?俺一人だけっすか?

『ううん、貴方一人じゃないわ。私の喚びかけに応えてくれた方々と力を合わせて―――私と、そして私と共に生きる「正しい子達」を「悪い子達」の手から助けてください、健太くん』

 いいっすよ、俺フィーネさんのためにがんばるっす・・・―――

『ありがとう、健太くん。今はその「力」が馴染むまでゆっくり休んでね』

 なんか・・・眠いっていうか・・・―――なんか―――ほんとに。そこで俺は暖かい白い光に身を委ねるかのように

『おやすみなさい。またいずれ会いましょう、健太くん』

 ―――、―――・・・

 ―――俺の意識はその白い光の中にゆっくりと落ちていったんだ―――・・・。

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