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五世界幻想譚-The Fantasy of Five Pieces-  作者: 高口 爛燦
序章『・・・ある日常の終焉』
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第十話 警備局境界警備隊へ

第十話


「日之国日夲というのは日之民が興した国であるということで合っておるな?」

 オレはここに集まるナル、ハルカ、ユキナ、そしてカツトシといった順番で見回したのだ。

「うん」

「はい」

「えぇ」

「そうだね。ちなみに我々日之民の先祖は、元々住んでいた惑星の『日いづる』場所を忘れないようにと新天地を『日之国』と名付け、それから出でたという意味の『日夲』を自称したと言われているんだ」

 ―――と、多かれ少なかれであるが、それぞれナル、ハルカ、ユキナ、カツトシの四人は肯いたのだ。そこで、オレは彼女達に口を開くのだ。

「しからば日之国というのは―――、なぜハルカが言ったように日之国は窮地に陥っているのだ?」

「? それはどういう・・・?」

 ハルカはきょとんとしていたのだ。すると今度はカツトシが口を開いたのだ。

「奈留が話したイニーフィネ創世神話を聞いたアルスランくんはこう思った。日之民は先住者イニーフィネ帝国と戦って、彼らから領土を勝ち取って建てた国が日之国日夲である、と」

「うむ」

 オレは肯いたのだ。

「そして、こう思ったんだね? すなわち―――」

 カツトシは深みのある笑みをこぼしながら、右手で眼鏡なるものを押し上げたのだ。

「日之民のほうが先住者に対する『侵略者』でイニーフィネ帝国に攻勢をかけているのに、なぜ日之国のほうが窮地に陥っているのか、と」

「そのとおりだ」

「―――なッ・・・!!」

 ハルカが絶句したのだ。ナルも目を開いて驚いているようだった。ユキナは表情を変えてはいない。

「それとも今は、イニーフィネ帝国側が反転攻勢をかけているか、もしくはなんらかの理由でそなたらの日之国が存亡の危機に陥っておるのか? それでオレに劣勢の警備局を救ってほしいと」

「アルスラン―――」

 ハルカはオレの発言に憤りを覚えたようだったのだ。

「だまって春歌」

「ちょっ奈留さんッ私の髪の毛を引っ張らないでくださいッ」

「春歌がアルスに飛び掛かりそうだったから―――」

「し、しかし奈留さん。このままだと、彼は我々日之国日夲の警備局のことを完全に悪者だと、そう誤解します・・・!!」

「―――」

「ほら見てください。彼の、アルスランの眉間に皺をよせたあの顔を・・・!!」

「・・・そうではない、ハルカよ。神への信仰を忘れ、愚かになったイニーフィネの者共に神はお主ら『日之民』という天罰を下したのだ。しかし、今度はお主らが劣勢であると聞いた。しからば今度はお主らが驕り始めた、というわけではないのか?」

「な―――!!」

 オレの問いにハルカは言葉を失ったのだ。それを見て今度はナルがオレを見つめながら口を開く。

「アルス、私はこの神話がどこまで史実を含んだものかは知らない。たぶん、塚本も春歌もそう思ってる。でも、まだこの神話にはちゃんと続きがあるの」

「ふむ。聞かせてくれ、ナルよ」

「ここからの話はちゃんとした史実で、イニーフィネ帝国のイニーフィネ人を駆逐し、日之民はここ新天地で日之国を建国しようとした。でもそうしようとしたのは日之民だけじゃなくて、月之民もイルシオン人も機人もそう。彼ら移住者はイニーフィネ帝国と衝突しつつ、隣人同士になった彼ら同士でも互いに衝突と協力を始めたの。互いの勢力が統一国を建設しようとしたことを『世界統一化現象』と呼び、惑星イニーフィネ全球規模で境界紛争が始まった。でも時が経つにつれてこの『世界統一化現象』は終わり、今のこの新しい五つの世界を内包する惑星イニーフィネとなったの。世界統一化現象時代は私達が生まれるよりもずっと昔のことで、だから今はもう―――ううん、日下で小競り合いは起こってたけど、日之国は存亡の危機じゃないよ?」

 クサカ?この日之国の地名だろうか。

「そうなのか? では、なぜハルカは窮地に陥っていると言ったのだ」

「それは僕ら日之国での内輪揉めが原因なんだ」

「ほう。内輪揉めとな」

 内輪揉めというものは、どこの国でも、どこの部族でも簡単に起きてしまう。

「僕達警備局とは、『月之民』のアルスランくんが解りやすいように言えば、王の命令を受け、侵入してくる外敵から領土を護り、また領内における反乱勢力や賊を摘発し、捕縛する、そういった者達のことだよ」

「親衛隊だな」

「そう。・・・表向きは日之民のために尽力していると見せかけ、裏ではとんでもなく非道なことをしている一つの巨悪がここ日之国にいる。その者達は、警備局はおろかいずれ政府をもなくし、自らが日之国の頭目に成り代わろうとしているんだ」

「―――」


「いや、ほんとよかったよ。彼らより先にアルスランくんを見つけることができて」

「よかった―――?」

「彼らはアルスランくんのような『転移者』を狙っているからね」

「オレを狙っているだと」

「うん、そのとおり。先ほど僕が話した一つの巨悪、彼らは『第六感社(だいろっかんしゃ)』といい。彼ら結社がひた隠しにする裏理念は『高い能力者が能力者を統率し、支配することだ、そこに多少の犠牲は厭わない』すでにその理念の中には一般人に対することは述べられることはなく、そこに無能力の一般市民の意志は介在しない。一般人は家畜のようになるか、死ねと言ってるんだ。―――僕達、日之国日夲の警備局は公僕として断じてそれを認めない」

「それとオレのような『転移者』がどこに繋がるのだ?」

「三日ほど前だったかな、きみを発見した日より。辺境地帯にて空間のアニムス濃度異常を探知した僕達、警備局は彼ら『第六感社』より先んじて『転移者』であるアルスランくんきみを回収する必要があった」

「―――?」

 オレが『第六感社』という者達に見つかる前に?

「アルス。世界統一化現象以降に、この惑星イニーフィネの五世界にやって来た数少ない『転移者』達。その転移者の中には、元々こちらの五世界にいる能力者の強さより、明らかに一線を画すほど次元が違う強さの人達がいる、と言われてきた。この一部の人達に関して、これは私達の母星惑星イニーフィネによって選ばれし者だけが持つ『祝福』と言う考えがある。私は正直、今まで『転移者』なんて見たこともなかったし、『祝福』なんて半信半疑だったの。でも考えは変わった、私と春歌はアルスの『その強さ』を目の当たりにしたから」

「―――・・・」

 それがナルのいうオレ自身が、覚えていない戦いのことなのだろうか?

「第六感社は五世界に転移してきたばかりの何も分からない『転移者』を狙い、捕まえる。そして悪いことをさせるために利用したり、使役したり、実験の生贄にしたりするの」

「なに?」

 ナルとカツトシの言った第六感社―――。それは、そやつらはもしかすると、オレが薄らと覚えている誰かの言っていた『悪い子達』のことではないのだろうか・・・?

「私はアルスに警備局境界警備隊に入ってほしい。一緒にしよ?アルス」

 ハルカがおもむろに居住まいを正す。

「私も『第六感社』の存在を認めません。彼らは日之国の病巣です。その病巣が大きく根を張る前に一刻も早く取り除かねばなりません。ですが、我々だけでは人も力も不足しているのです。ぜひ、転移者であるアルスランに力を貸していただきたいのです」

 ハルカは腰を折り、深々と頭を下げたのだ。

「僕もお願いしたい。アルスランくん」

「ふむ。きっと大地の女神が、オレを貴女がたに逢うように導いてくれたのだ。貴公達、日之国の警備局にオレは生命を救われ、また寝る場所と腹を満たしてくれたのだ。大変世話になって本当にかたじけない。オレが貴女がたに恩義を返すことは、道義である。だが―――」

 そこでオレは矯めつ眇めつ―――坐して動かぬ、警備局の頭目であるスワ=ユキナという女子の動向を探ったのだ。オレの視線の先を認めたカツトシがすかさず口を開いたのだ。

「どうだろう、侑那。きみの意見を聞きたい―――」

「塚本君―――。私が言いたいことは全部塚本君が言ってくれたわ。春歌、奈留ちゃん貴女達も」

 そこでユキナという女子はオレを見たのだ。


「オテュラン家のアルスラン貴方を警備局境界警備隊に迎えいれたいと思います。今後ともよろしくお願いします、アルスラン君」

「うむ。相分かった。オレは警備局のために力を尽くすことを約束しよう」

 オレは深々と頭を下げたのだった。

「よし、決まったね。どうだろう、侑那。アルスランくんは境界警備隊のその他大勢の中の一員ではなく、少数精鋭部隊のような働きをしてもらう。特別編成隊ようにするのは?」

「私もそう思っていたわ。春歌を隊長にして奈留ちゃんとアルスランくんを加えましょう」

「隊長は春歌くんにお願いするよ、いいかい春歌くん?」

「はい、私としてもそちらのほうが動きやすいと思っていました」

「塚本に言いたい。・・・なんか、過去の部隊にそんなやつらがいたような気がする・・・」

「いやぁ? そんなの部隊あったかな?」

 カツトシはナルの冷めたようなジトっとした視線を受け流しつつ、ユキナとハルカ相手に饒舌に喋っていたのだ。



「――――――――」

 そして彼カツトシの主導で、これからの先のことが次々と決まっていくのだ―――。そのときオレは思っていた。なにか言葉にはしにくいが、オレには彼カツトシが焦っているように見えたのだ。その薄い玻璃でできた眼鏡というものの奥から放たれる視線に・・・彼自身が圧し殺す、己の激しい感情が幽かに、見え隠れするのだ。

「―――・・・」

 それをオレは感じ取っていたのだ―――。この男、ツカモトは『腹の中』になにか抱えている、とな――――――それが良からぬものでなければいいのだが―――な。

 オレはナルやハルカの助けになりたいというのは、真なる言葉だ。だが、彼の目的も見てみたいのだ。もし、ナルやハルカに害があれば、それをオレが断ち切ってやろう。


「ナルよ、オレからも訊きたいことがあるのだ」

「ん?」

「大事なことなのだ。オレが警備局境界警備隊となれば、あの、から揚げなるものや他の美味い食はいつでも食うことができるのだろうか?」

「警備局寮で生活することになるアルスは、毎日私と一緒に暮らすことになる」

「ふむ」

「私が日之国のことをアルスにいっぱい教えてあげる。もちろんおいしい食べ物も飲み物も」

「よろしく頼む、ナルよ」

 こうしてオレは、このようないきさつで、(ハン)の親衛隊のような働きを行なうという、日之国日夲の警備局の実行部隊に自身の力を貸すのことになったのだ。


―――Arslan VIEW―――END.―――

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