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板金邸にお呼ばれ【後半】

間隔が空いてしまい申し訳ないです…

こんにちは。先程突発的に行われた鬼ごっこにて、無事獲物を折檻する事が出来た中野です。

本日は板金邸に招かれており、これから食事に舌鼓を打つところです。

食前のハードな運動って意外とキッツい…


事前に私の食事情については伝えてある為、出てくる予定の料理は全て魚や野菜、穀類となっている手筈です。


「セレブってどんなモノ食べてるのか気になってたから、楽しみだな〜」

「セレ部…ぶふっ」


なにわろてんねんコイツ。


「そう言えば家でも偏食してそうだけど、何が苦手とかってあるの?」

疑問に思った事を楿子に訊ねる。

昼食時、学校生活における普段の彼女は基本的にスナック類とドライフルーツしか食べてない。

彼女と知り合って2ヶ月弱ではあるが、だから発育悪いんじゃないのか?とは常々思っていた。


「ん〜、特にないよ?」

「それは冗談でしょ?だって普段甘いものしか食べてないじゃない」

「私、基本的に1日2食だったからお昼はホントは食べたくないんだよね…あと太ったら身体動かなくなるし」

「流石にキミはもうちょい太った方がイイのでは?」


高校1年生で身長140cm前半はかなり珍しいと思うが…


「ワタシちゃんぽっちゃりだからデブの道に引き摺り込みたいのはわかるけどさ…」

「誰がデブじゃコラ」


一応、適正体重より下ではある。というより菜食主義で肥えるって余程のドカ食いじゃないとそっちの方が珍しいのでは?


たわいも無い歓談を続けていると食事が運ばれてくる。よく映画で見る銀食器で蓋とかしてある為、見栄え良く感じる。映え〜。

先程訪問時に応対された年配の男性(楿子曰く”じぃ”)が、私と楿子の前まで配膳車を押す。


「当家シェフが腕によりをかけたお食事ですので、心ゆくまでご堪能下さい」


じぃは配膳後、一礼して部屋の隅に立つ。

「あ、ありがとうございます」

「お気遣いなく」

「ささっ、遠慮しないで食べて食べて」


楿子に促されるままナイフとフォークを手に取る私。目線を料理に落とし、ふと気になった事を訊ねてみる。


「このビーフシチューみたいなスープって何の具材が入ってるの?」


「ウシだけど?」


「牛肉じゃねーか!!」


思わず机を叩き、立ち上がる私。準菜食主義者(ペスカタリアン)の私にとってビーフ100%は有り難くない。

私は端に待機しているじぃと呼ばれる執事に対し、食膳を下げて貰うようお願いする。


「あの、すみません。下げて貰っても良いですか?」

「中野様、それはサバンナでも同じ事を仰る事が出来ますかな?」

「コイツ何言ってんだ?」


コイツ何言ってんだ?


「世界には飢餓で苦しむ人々が沢山居られます。其れ故に食に然程困っていない我々が好き嫌いを述べるのは到底許されるべき行為ではないと存じております」

「そんな、どっかの弁護士みたいな事言われても…」


確かに正論ではある。

事前に申し伝えていた事が漏れている事に対し、ヤンのかてめぇと憤りは感じるが、人間のエゴで食品廃棄をして許される通りは無いのも確か。

一口食べてみてから考えてみるのも礼儀の様な気がしてきた。

どうしても無理ならその時改めてダメと伝えれば良いか。


「じゃあ…一口だけ」

私がスプーンを手に取って、ホロホロになった牛肉を掬う様子をニマニマしながら楿子と執事が眺めている。何だコイツら…


口に入れた瞬間、じっくり味を染み込ませたカット肉の風味が口の中で爆発した。美味しすぎる…


「何これ…何杯でも食べられそう!」

「そう言ってもらえると嬉しいよ。ねっ、じぃ?」

「はい、作用でございます」

と、嬉しそうに2人は微笑んでいました。




夢中でスプーンを口に運んでいた私。気が付けばおかわりを3回もしていた。う、産まれる…


「こんなにお腹いっぱいになるまで食べたの久しぶりかも…」


アフターディナーティー(楿子に言われるまで知らなかったけど、簡単に言うと食後のお茶の代わりにイギリスだと紅茶を飲むんだって)を味わう私と楿子。

ビーフシチューの他にもご馳走になった料理が絶品で、ついつい食べ過ぎてしまった。

美味し過ぎて石になっちゃうくらい。


「好き嫌い言ってるワタシちゃんも、これで食事改善出来そうかな?」

「私の場合好き嫌いじゃないんだけど…」


幼少期のトラウマであまり積極的に食べたくない事と、あとは単にお金が無いから牛肉は買えないのである。豚肉と鶏肉に関しては頑張ったら安いの買えるけど今は聞かないで。


「でもお口に合って何よりだよ。良かった」

「ホントに美味しかった。作ってくれたシェフにお礼言っておいて欲しいくらい」

「ふふっ、ねぇ今だから言えること話しても良い?」


唐突に楿子がCO(カミングアウト)をかましてくれるそうな。何だろう。

「なになに、ちょっと怖いけど気になるじゃん。早く話してよ」

催促する私。




「実はね…、今日出したお肉…ウシじゃなくてラクダなの」



鬼ごっこROUND2のゴングが鳴りました。

食後の運動じゃい。

ラクダの肉は欧米や中東で広く食用されており、味と食感が牛肉に似ているそうです。

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