楿子とシャーペン
こんにちは、中野です。
早速ですが事件です。筆箱を紛失してしまったみたいです。
昨日自室の机で予復習をした後、鞄に入れ忘れたのかもしれないです。
「おかしいな〜。確かに鞄に入れたと思ったんだけどなぁ」
「どしたの?忘れ物?」
隣席に座る楿子が私に訊ねる。机に大量のペンが置いてある事は見なかった事にしよう。
「うん。家に筆記具忘れちゃったみたい」
「ありゃ、残念。そんなワタシちゃんに朗報!何と今日、シャーペン16本持ってきてるから貸してあげるよ!」
お前の手16本生えとるんけ?どこの阿修羅像じゃ。というツッコミを堪え、私は感謝を述べる。
「あ、ありがとう。文具屋さんでも開くのかと思ってたわ」
「どういたしまして」
楿子からペンを受け取る。結構重いな…。
「ところで、何でこんなに使いもしないシャーペン持ってきてるの?」
疑問に思った私は楿子に尋ねる。普通に無駄だろコレ。
「良い感じに馴染んでくれるのがなかったんだよ〜」
「? まぁ有り難く借りとくね」
よくわからないけど、気にしたら負けだな。
さて、今日の1時限目は数学だ。私は文系だからあまり得意ではないんだけど、苦手教科をなるべく作りたくないのが私のモットーなので、気合を入れて頑張ろう。
カチッ「あひぃ!」バチン!
ペン先から芯を出そうとしたら電撃が流れた。
「おい、お前何しやがった」
「あっ、ちゃんと使えたみたいだね。よかったよかった」
「よくねぇよ」
コイツ何考えてんだ?
「これは私のお父さんの友達で文具メーカーの社長やってるおじさんに言って作って貰った特注品なんだよ。シャーペンの芯を無駄遣いしない様に、ノックしたら電流が流れる様に細工してあるの」
「いやいや、激安の殿堂とかに売ってるタチ悪いイタズラグッズだろ」
声変わるガスの隣とかに置いてるやつ!
「まぁ今持ってるのコレしかないから、気を付けて使いなよ」
「アンタ覚えてろよ…」
〜放課後〜
「……疲れたぁ」ぐったり
まさか41回もノックするハメになるとは思わなかった。
「良いサンプルが取れたっておじさんに報告しとこー。ありがとうね!」
「報告すんな呪うぞ」
悪魔かオノレは。
カバンから何やら半透明なケースを取り出し、私から回収したペンを入れる楿子。ふとカバンの中を覗くと見慣れた筆入れが入っていた。
「っていうかそれ私の筆箱じゃん!」
「あっイっけね」
「お前が持ってたのかよ!」
たった今、私は死刑推進論者に変わった。今すぐヤる。
「ズラかれ!逃げるが勝ち!」
「逃すか!」
楿子を追い回す私。私から逃げる楿子。
あっ、結果だけ話すと、200回くらい電流ペンをノックさせました。