楿子(かつらこ)と消しゴム
こんにちは、私の名前は中野ワタシ。
紅茶の水学園に通う高校1年生。
勉強は嫌いじゃ無いし、授業中も比較的マジメに聞いてる方だと自分では思う。
3時限目の今は、世界史の授業を受けています。
中国史は覚える事が多くて大変だけど、頑張ろう……
ピシュッ コロコロ
「あーちくしょ、我ながらクソAIMかよ」ピシュッ
……隣の席で消しゴムを飛ばしてくる楿子が居なければもっと頑張れる気がするんだけどなぁ。
しかもよく見れば普通の消しゴムじゃなくてカド○シをブロック毎に小分けして飛ばしてるみたい。勉学に励む学生を思って開発した○クヨさんの担当者様の苦労が全くもって報われてない。
楿子が5投目を飛ばした辺りで、私は注意する。
「(迷惑なんですけど)コソコソ」
「消しゴムの出血大サービスでぃ、釣りは要らねぇ」
「(いや、血反吐出そうなの私なんですけど。あと声うるさい。先生に気付かれるよ?)」
「あたしは一流のスナイパー、デューク板金だよ?素人に遅れを取るなんてあり得な…あひぃ!」バチン!
「板金ー、廊下立ってろ」
先生が筒状に丸めた世界史の資料集で楿子の側頭部を叩くと、教室から出るよう促した。当然の報いだよ…
キーンカーンカーンコーン
授業が終わり休み時間に入った為、楿子が教室に戻ってくる。
「あたしの天才的な頭部を殴るなんて…パパにもぶたれた事無いのに…」
「板金みたいに逆から叩いたら元に戻るでしょ?」
「板金言うなし!」
私の隣席に座るこの板金楿子は、板金と呼ばれる事を嫌っている。理由はよくわからないけど、小学生の頃にいじめっ子に板金修理って言って叩かれた事をずっと根に持ってるみたい。
楿子がイタズラに目覚めたのも、いじめっ子にやり返す為に色々と策を講じていた事が高じたとの事らしい。
「それよりアンタ、授業ちゃんと聞いてた?頼まれてもノート貸さないわよ?」
「じゃ、じゃじゃじゃーん。心配ご無用!教室の後ろにある掃除ロッカーの上から授業をずっとカメラで映してライブ配信してたのだ!中継映像見せてた爺やにノート書いて貰ってるの!」
「何でそこまでして消しゴム削っとるねん…」
理解が追いついてない。意味不明過ぎる…
「早速PDFにスキャンして貰おう、っと。…もしもし爺や?さっきの授業ノートだけど……えっ、機械モノはよく分からないだって?ち、ちょっと待ってよ昨日アレほど説明したじゃないのよ!ねぇ、もしもし?耳が遠くて聞こえないっておかしいでしょ!そんな突発性難ちょ…」プチン
「切れちゃった…」
「草」
「草じゃないよ!ねぇ、お願い、ノート見せて!次の期末試験で点数悪かったらママにお小遣い減らされるの!」
「知〜らない」
「お願い!ウチで庭師やってくれてるゲン爺ちゃんからもお小遣い借りてて、来月返さなきゃいけないのよ!!」
「もっと知らない」
「そんな冷たい事言わないで!ねぇってば!」
喚き散らす楿子を尻目に、私は窓の外を流し見る。
今日もこの世界は平和です。
「聞ーいーてーよ!!」
「板金さん、座りなさい。授業ですよ」
「はぅ、先生!?」
主人公:板金 楿子
良家の令嬢。箱入り娘として甘やかされてすくすくと成長した結果、イタズラ好きな残念な子に。
幼児体型に限りなく近いペッタン。
勉強は得意では無いが、一夜漬けで今まで乗り切っている。
板金と呼ばれる事が嫌い。
語り手主人公:中野 ワタシ
イタズラを受け続けてる語り手。割とスタイルは良い。成績は上から数えた方が早いくらい。
紅茶の水学園
中等部から大学までエスカレーター式の国内でも屈指のカトリック系お嬢様学校。
高等部からの編入組も居る。
なお生徒間における学力のバラ付きは多少あるが、謎の圧力で留年する生徒は過去遡っても1人も出ていない。