プロローグ 元魔王様は面倒くさい
初めて小説を書くので読みにくいかもしれませんが、ご了承下さい。
プロローグ 元魔王様は面倒くさい
玉座があり人が大勢いるが決して五月蝿い訳ではない。むしろ逆であり、話している者の方が少なかった。だがその声もある一つの言葉が発せられたと同時に静寂となって消え去った。
「この国はクローディア、お前に任せる」
一人の男性の声だ、だがかなり小さな声であり掠れてもいる。
その言葉を伝えた相手は驚愕という顔をしている。
男性の外見は人間の老人のような顔をしてる。
髪は当然白くなっており、目元は鋭く、様々な死線を越えてきたのだろうと思わせる。顔は昔はさぞモテていたのだろうと思わせる顔立ちであるがそこには皺があった。これだけを聴くとただの老人のよう。だがしかし頭部から二つの禍々しい角が生えている。
身長は2mを優に越えるだろう。
その腕は太く、巨木を思わせる。足もまた太い
服装は軍服を着ているようだ。背中からはその巨体から床まで流れそうな漆黒のマントを纏っている。
頭の上には王冠をつけていた。
そしてベッドに寝込んでいる。
「何を仰るのですか父上」
と一人の少女は反対という意味を込めて言葉を返す。
少女もまた頭部から角が生えているが、男性の物よりも遥かに小さい。
そしてこちらの少女の外見は角以外は人間とは変わらない。
少女の髪は明るい茶色でありそして長い。シャンデリアの光を反射して輝いている。容姿は美しく国の中でも上位に入るだろう。
そう彼らは人間ではなく魔族なのだ。
「私はもう年だ、体は衰え自由に動かすことすら出来ぬ」
と言いながら男性は言葉を続ける。
「お前は賢いし部下たちも優秀だろう。そこまで心配する必要はないと思うのだが」
「は、はい…確かに部下たちも優秀で今後の事は心配要らないでしょうが…」
「そうか、ならば問題はないな」
「し、しかし」
「ええぃしつこい」
と大声で怒鳴る男性。
次の瞬間___ゲホゲホと男性はベッドに向かって血を吐いた。
「!! 父上大丈夫ですか?」
「はぁ はぁ」
と数秒息をおいて「このとおりさ」と呆れたように男は行った。
「少し怒鳴った程度で血を吐くとは…先ほども言った通り私の体はずいぶんと弱っているのだ。天からの迎えももうすぐであろう…」
「だからだ、今、今この時をもって魔王の座をお前に譲渡する。よいな?」
と言った。
そう彼は一人の軍人でありながら、国の王でもあるのだ。
半ば脅迫のようなものだが、クローディアは苦渋の表情で跪き了解の意を示した。
だが実際少女は全く納得していなかった。
---父上の方が私よりも余程魔王に向いているというのに。だが怒鳴った程度で血を吐き出してしまわれていた。流石にあそこまで弱っているのならもう、一国の王として、国民の代表としてのしかかるプレッシャーは肉体的にも精神的にも疲労を蓄積してしまい、結果的に寿命を縮めてしまうかもしれないのだから、できる限り早く継承しておく必要があるのも事実だろう。何より今でなく、後にしてしまった場合、体の状態が悪化してしまう可能性があり遺言などを伝えづらくなってしまうかもしれないのだから--- などと考えて自分の考えを口にする。
「わかりました。父上、後の事は…国の事は安心して任せてください。ですから安静にして体調を治してください」
「あぁ わかった ありがとう」男はクローディアに優しく笑いかけたのだった。
それから皆各々話し合い「失礼しました」と扉を次々と出ていった。
その間少女は「残る~」と言いながらジタバタとして駄々をこねるが執事服を着る者-事実執事なのだが-が「姫様、いえ…魔王様 失礼ですがお父上のお体に障ってしまいますのでお一人にして差し上げましょう」と執事の老人-見た目に反して驚くほど力が強い-に連れていかれるのであった。
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数分後
皆がいなくなってから数分後部屋には元魔王ともう一人の姿があった。
その人物は先ほどまで少女や他のものと一緒にいた者である。
彼の名はアイアス·ウォーディントン。魔王軍近衛隊副隊長である。
当然彼も魔族であり頭部から角が生えている。髪は綺麗な白色である。
「魔王様…いや(元)魔王様、さっきのあの赤い液体、血じゃなくてトマトジュースですよね?」
元とはいえ魔王に対してかなり気楽に話しているところから見るとかなり長い付き合いなのだろう。
「ん、んんー!? 何の事かな~?」
「茶化さないでくださいよ」
「あ、ああ」
魔王が承諾する。
「(元)魔王様は家庭菜園が趣味でしたよね?」
「いちいち元を強調するなっ」
と注意しつつ魔王は言った。
「はぁ~わかりましたよ…」
と面白くなさげにアイアスが言う
「話を戻します。念のためにもう一度言いますが、元魔王様は家庭菜園が趣味でしたよね?」
「ああ確かにそうだな」
と返事しながら植物に水をあげている自分の姿を思い出してみる。
「だがなぜ家庭菜園が趣味なだけで…」
といいかけたところで
「その育てている植物の中でもトマトが一番好きですよね?」
「あぁ美味しいしなにより血の色に似ているからなぁ」
と元魔王
-可愛い趣味があると思ったら結局血やらグロい事が好きなのですねぇ。-
などと考えながらも指摘する。
「それですよ」
元魔王の体がビクッと跳ねる。
そして「しまった」と声にも出てしまう。
「やはりそうだったのですね」
「うむ、よく見破ったな流石は魔王軍近衛隊副隊長といったところだな」
「はぁ…開き直らないでくださいよ」
「ところで…クローディアは私のいないところではよく怠けているそうじゃないか。」
疲れたような顔をしながらも続ける
「メイドから聴いたのだがあの子は魔王になるのだ、だからこそ今まで以上に王族、もとい魔王としての自覚をもってほしいのだが…」
「話をそらさないでください」
「でだ、私がもし死んでしまったならばあの子に教育をしてやってくれ」
「無視しないでください」
「ん? あぁ わかったわかった… 話は戻すが確かにあの赤い液体はトマトジュースだ。だが、私の体があそこまで弱っているのだとしたら嫌々でも受けるしかないからな」
「ところでさっきの話だが、あの子に様々な事。例えば算術、経済学、常識、
内政、そして外国の言語や常識、文化などの教育をしてやってくれ」
「すでに学園は卒業していらっしゃるのではなかったでしょうか。」
「確かにそうだが……ほとんどの知識を忘れてしまったらしいのだ。
あのバカ娘は」
はぁとため息をつく元魔王。
「はぁ」
とため息を吐くアイアス
「あれでも私の大切な一人娘だからな」
元魔王は思い出す小さい頃-勿論今もだが-は可愛かったなぁと思いながらも昔の娘を思い出す。あの頃はよく怪我をしていた。
「昔の事を考えたら案外立派に育ってくれたのかもしれないな、私の訓練には死に物狂いでついてきていたし、学園での試験では上位だったのだからな」
「そうですn」
言いかけたところで元魔王が口を挟む
「確かに立派に育ってくれた。と思っていた時期も私にはあった」
「?」
とアイアス。じゃあなんで言ったんだよ!などと思っていると
「だが、ある日仕事が早く済んだので娘に会いに行こうと思い、娘の部屋へ言ったのだが…」
「あ…」とアイアスはなにを言おうとしているのかを悟る。
「かなり部屋が散らかっていたのだ。あの光景を思い出しただけでも体が震える」
思い出しているのだろう元魔王の顔色が悪くなっていく。
アイアスも思い出す
確かにあれはかなりひどい有り様だった。と
そうとは思っているものの流石に口に出すのは失礼なので黙っておく。
「でだ、お主に頼みたいことがある」
「私にできる事ならばなんでも遂行いたします」
「よろしい では内容を伝えるぞ」
アイアスが了解の意を込めて頷いた。
「あのバカの部屋を掃除してはくれんかのぅ」
「あれをですか…」
嫌だという声を圧し殺す。
「ああ あれを、だ」
「出来るな?」
と元魔王が脅迫気味に訊いてくる
「わかりました頑張ってみますよ」
「ああ あいつを支えてやってくれ」
「はっ 畏まりました」
「それにしてもクローディアは本当に面倒くさいやつだな。
部屋一つを片付けるだけでも骨が折れそうだな」
「貴方が命令したんでしょうが……」と呆れたように言うアイアス
「ハッハッハー まぁ頑張れ」そう言いながらも爆笑する元魔王
その後玉座の間では二つの笑い声が響いていたという。