瞬殺
完璧な肉体を手に入れた私は、ついに予選当日を迎えた。
「よっしーおはよー!頑張ってね!」
「今日は予選だよね?そんな君にこのお守りをあげよう!」
迎えに来た2人が、応援してくれている。千沙子のお守りはなかなか効きそうだ。よくわからない魔法陣やら絵文字やらがびっしりと書かれている。ジーパンのポケットにそれを突っ込み、2人を抱えて学校へと跳んだ。
校庭は、人で溢れていた。天下一武道会に似せたバトルフィールドがいつのまにか形成されていて、どうやらここで予選と本戦を行うようだ。
「デェェェェェン!!!」
いきなり放送が始まった。ひととおりのルール説明が終わり、次は対戦表の発表だ。
「第1戦は…1-4組天海良枝 vs.1-6組東堂雄二!!!」
東堂くんか。あの子の能力は…確か。
洗脳だったはずだ。
では…はじめ!
まずは発動条件の詮索だ。ならば。
「(フェイントをかける!)」
全身を軽く強化し、全力で突進…するふりをした。
「(かかっ…え?)」
相手側の東堂というと、ひたすら瞬きを繰り返している。体はすこし重くなったが、特に支障はない。痺れを切らした私は0.1秒で距離を詰め、回し蹴りを決めた。
1戦目は、相手の弱さのおかげで疲れずに済んだ。これで午後まで出番はなしだ。
「おつかれ…ってそんな疲れてないか!」
「まぁ良枝がチートなだけかもしれないし…ね?」
東堂くんのファンらしい千沙子は複雑な表情を浮かべている。それはともかく、出店を回りたいな。この学校の名物、巨大あんず飴は最高だ。300円という値段で通常の30倍のサイズが手に入る。3人でお店を探し出し、それぞれ2個ずつ購入した。とても幸せだ。
だが、たこ焼きを頬張る智美は、フリーマーケットを見つけて走り去ってしまった。追いかけようとすると、涼介とぶつかってしまった。
「ごめんな。それより山岸さんは?いつも一緒だろ?」
「フリマ行っちゃった。あの子そういうの大好きだから。」
教科書を返したかったらしいから、受け取っておいた。