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天海ストライド  作者: 学食くん
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焼きそばパンを求めて

「きりーつ!ありがとうございましたー」

4時間目が終わる。ふぅー と椅子にもたれかった直後に腕を掴まれた。


「よっしー早くいこ!焼きそばパン無くなっちゃうよ?」

しまった。今日は水曜日だ。先着100名しか食べられない人気商品は、ここの学生にとってのご馳走だ。

ご当地グルメの絶品焼きそばを、焼きたてのパンにたっぷり詰め込む。そこにからしマヨネーズをかけたら完成だ。ボリュームの割に100円と手ごろな値段なので、大人気商品なのだ。


今日のためにスパイクを履いてきて正解だった。息を切らして走る廊下の生徒を一瞬で抜かして行った彼女達は、なんとか行列に滑り込むことに成功した。


「あれー天海さん?今日はやけに遅いな?」


話しかけてきたのは、幼馴染みでクラスメイトの二階堂涼介。普段と違って「さん」付けなのは、先程のセリフに煽りのニュアンスが含まれているからだ。


「ちょっと忘れてただけ!涼介こそ10番以内に入れないなんてどうしたのかなぁ〜?」


「それはどうかな?」


刹那、彼の姿は消え失せた。


良枝が見ていたものは幻影だったのだ。遠くには、先頭でパンを受け取る彼がいた。負けた。入学以来初めての敗北だ。



私こと天海良枝が通う高校は、わりかし異能力者が多いように思える。

涼介は幻影使いだったようだ。今まで気づかなかった。

ちなみに私の能力は身体強化だ。脳の回転を加速させることもできるので、なかなかチート気味だと思う。

なのだが…友人の千沙子には敵わない。彼女の能力は、なんと強運だ。


だから私は、千沙子には勝負を挑まないようにしている。「無敗の天海」と呼ばれ、尊敬されていたのも、彼女との勝負を華麗に回避してきたからだ。涼介に負けた時点で、それももう必要ないのかもしれない。


5時間目が始まった。数学Aの…確か二次関数だったな。眠気のせいで黒板が歪んで見える。ここは「怪物」でも飲むか。学生に大人気のエナジードリンク、「怪物」はクセになる味わいで、カフェイン量も多い。

いかにも体に悪そうであるためか、食堂の自販機には置かれていない。

普通なら諦めるだろう。しかし、彼女には秘策があった。シルクロード。それは、この学校を卒業して行った者たちの血と汗と涙の結晶だ。超高層ビルにもひけをとらない高さを持つこの校舎を、直径15センチの円型に一本の管で貫いたもの。


菓子類やUSBなどを生徒同士で受け渡したり、さらには能力を行使してコミュニケーションを取ろうとするものまでいる。今回はアポを取っておいたので、合図である桜型の切り紙を落とす。しばらくして、すごい勢いで迫ってくる物体が見えてきた。


持ち前の優れた反応速度を生かし、一度避けてから缶を掴む。これだ、私が求めたものは。担任が忘れ者を取りに行ったのを見計らい、プルタブを引いた。身体中に力がみなぎる。


缶を握り潰し、窓から全力で投げ捨てる。予定通り燃えたので、処分方法としては申し分ないだろう。こうして、良枝は唐突の寝落ちを防いでいるのだ。



「ねーねー、今日歌ってかない?」


智美は、今流行りのアイドルグループの新曲を歌いたがっていた。私も少し聞いてみたけど、意外に悪くなかった。

「2時まで部活だから、3時から行く?」

「えぇ〜もっと早くがよかったぁ。けど仕方ないか。諦めるわ。」

普段と違って諦めが早い智美に驚きを隠せない良枝であった。


午後2時。制汗剤の香りを全身にまとい、良枝は体育館を出た。さーて向かうかーと思っていると、なぜか千沙子までついてきた。


こいつは、カラオケと聞くとすぐとびついてくる。よっぽど好きなのだろう。まぁ、おかげですっかり仲良しになれたのだが。


「よしえ、上位サウンドとデェムどっちにする?」

悩みどころだ。上位サウンドは名前の割に採点がガバガバだし、デェムは曲数が少ない。うーむ。


「迷ってるならデェムにするね?」


「ん?うん。」


「おー!よっしーとちーちゃんじゃん!」

智美だ。話がややこしくなることを事前に察知し、ドリンクバーへと避難した。あぶないところだった。


ボックスへ入ると、智美がすでに三曲を予約し終えていた。はやい。今の彼女に迷いなどなかった。こうしている間にも智美は操作の手を止めない。


はやく、はやく歌う曲を決めなければ。状況を打開したのは、千沙子だった。さすが「幸運」の能力者だ。


彼女が選んだのは…「アジアの純真」だった。絶妙に古い。まぁこれでひとまずは安心だろう。6曲の熱唱を聞き流し、マイクを受け取った私たちの顔は、達成感と喜びにあふれていた。


夕方、疲れ切った私たちの携帯電話には、ある一通のメールが届いていた。


予告されていた、特待生制度の導入に関する件だった。ついに我が校にも…!と喜んだのも束の間。メールの最後の一文には「なお、特待生の選抜はトーナメント戦で行う」とあった。


学力でごり押しをしようとしていた良枝にとって、不幸以外の何物でもなかった。しかし、これを乗り越えないわけにはいかない。


特待生をかけた戦いが今、始まる。

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