更生開始という名の虚言
今回の巻ではまだゆったりとした日常的なお話となっております。よろしければお付き合いください。
佐藤先生に鏡と笹木の更生プロジェクトを任されて既に1週間が経った。このことはまだ本人たちには勿論、誰にも話していなかった。彼らのあれは正直俺にどうこう出来る代物ではないと思っている。多分、鏡については暴力で全てを解決しないようにすること。笹木は極度のドSを直すのと…。
「…い、赤島。何辛辣な顔してるんだよ」
「あ、ああ鏡か…」
「それより飯食おうぜ!」
「んあ?もうそんな時間か…」
「今日のお前なんか可笑しいぞ?落ちてる物でも食ったか?w」
「なんで知ってんの!?」
「いや当てずっぽうで行ったんだけど、まさか本当にしてるとはwこれはみんなに報告だ!」
「おいやめろ!俺が恥ずかしいから!お願いやめてええええええ!」
「おいみんな!赤島昨日落ちてる物食ったらしいぞ!」
「ぎゃああああああ!やめろおおおおお!」
あいついつか俺のストレートパンチをお見舞いしてやる。
そんなこんなで昼食の時間が終わり5時間目の授業の物理が始まる。今回は実験ということでかなり楽ではあるものの問題がある。それは…
「あ、あのー?赤島君?」
「ひゃい!」
「そこの実験器具取ってもらってもよろしいですか?」
「あ、はい…」
このように高校2年となっても相変わらずコミュ障で、知らない人の顔を見ると頭が真っ白になる。すると後方から笑い声が。
「笑うんじゃねえ、鏡!」
「赤島!静かにしろ!授業中だぞ!」
「すいません…」
「怒られてやんのw」
すると隣からクスクスと笑い声が。
「フフッ、赤島君って意外と面白い人なのね」
「意外とって酷いな」
これで高校2年のはじめてのお友達が…!
「あのよろしければお友達に!」
「ごめんなさいそれは無理です男まじ嫌い」
モウダレモシンジラレナイ。
散々な授業を終えて放課後。遂に話す時が来た!
…なんてことはできません。すいませんいきりました。
「赤島!帰ろーぜ!」
「おお、そうだな」
なんか挙動不審になっちまったよ。
「赤島…お前なんか俺に隠してることあるだろ」
「勿論あるよ!」
「お前のそのバカ素直なの好きだぜ☆」
「あんたら何キモいことしてるの?」
「お前にキモいと言われると人生終わる気がするからやめてくれ」
「まあ私は学校一の美少女だからね」
「見てくれだけだろ」
すると突然視界にグーパンが…
「べふぉ!」
「次言ったらアンタどうなるか分かってるでしょうね?」
「じゅ…重々承知しておりますぅ…」
あれ…視界が真っ暗に…なって………来たのに戻ってきたわ。なにこれ怖すぎ。
「アンタのその失礼な態度、気に食わないわ」
「赤島ー。俺先帰るわー」
「え…ちょ待っ…」
俺はその場でバタリと倒れた。今度こそ視界が真っ暗になった。時間差攻撃はずるいぞ。
数時間後、俺は廊下で目を覚ました。いや誰も保健室まで連れてってくれないのかよ。みんな痛々しい目を向けてくるな。悪いの俺じゃないもん!みんなが運んでくれないからだもん!くそっ、恥かいた上に嫌な思い出がまたできたなんて…。お母さんなんでこんなダメ人間産んだの?お母さんはそんなこと知らないよね。
「赤島、さっきから廊下に伸びてなにしてるんだ?アリでもいたか?」
「あ、佐藤先生。アリごときで僕は廊下に伸びませんよ」
「あいつらの厚生は上手くいってるか?」
「そ、それが…」
そこで俺は先生に全てを告げた。
「はぁ…。お前あれから1週間だぞ?私はお前があいつらと一番仲が良いと聞いて頼んだんだが、聞き間違えだったか…」
「まっ、待ってください!明日から実行するんで!許してください!」
「言ったな?では、明日の放課後、旧校舎の教室で行え」
と言って先生は去っていった。どうしよ言っちゃった。
その夜。俺は明日どのようにあいつらにそれを打ち明け厚生させようか頭を悩ませていた。
「これじゃ…鏡に逃げられる。この方法は笹木に殴られて…。なにも思いつかんぞ!くそったれ!」
「お兄ちゃん、五月蝿いしキモいから死んで。あとキモい」
「同じことを二回も言うな、妹よ」
すると妹はこちらに返事をせずテレビに向いてしまった。お兄ちゃん辛いよ…。
「なあ妹よ」
「喋らないで。場が凍る」
俺には発言権をもないらしいです。世の中不平等ですね。
俺は大人しく自分の部屋で考えることにした。何か良い案を妹に出してもらおうと考えていたのに妹だけでなく母親すら俺を拒絶するなんて、俺の居場所はこの部屋だけだよ…。お部屋だいちゅき。とりあえず早く考えて寝たい。しかし案は一向に出てこない。そんなこんなで深夜2時になっていた。
「まあ明日のことは明日考えれば良いんだ!おやすみ、みんな!」
「もう2時よ!静かに寝なさい!」
「今から寝るよ!母さん!」
俺は涙目で訴えかけた。
次の日。俺は遅刻した。もう朝10時なんだけど。なんで誰も起こしてくれないの?昨日といい今日といいみんな冷たいな…。一階に降りると母親がいた。まじでなんで起こさないんだよ。
「…なんで学校行ってないの?今すぐ行きなさい」
そんな圧力をかけてきました。もしかして俺って嫌われ者?
「あっ、遅刻者の赤島じゃんw」
「五月蝿い!」
「今日は坂の上でグーパンするつもりだったのに」
「それ先週やるって言ってたやつじゃん!俺先週それされると思って坂の上でずっと警戒してたんんだぞ!おかげで周りからは挙動不審の赤島なんて異名がついたんだぞ!」
「それ最初に言ったの俺だよ?」
「てめぇ表でろや!俺の本気のストレートパンチくらわしてやる!」
「遅刻したのに良いご身分ですね、赤島君」
「げっ、委員長…」
彼女はクラス委員長の辻美玲。口調から分かる通りお嬢様でなぜこんな学校に来たのかは誰もしらない…。ごめん先生は知ってるって言ってたわ。
「そのあからさまに嫌そうな顔やめてくださる?こちらが不快に感じますわ」
「何の用だよ…」
「今回遅刻してきた件について先生がお呼びです。失礼のないようにしなさい」
お前はおかんか。
「失礼しまーす」
「おっ赤島、早速だが…」
「いや遅刻した理由はですねそのえっとなんというか今日どうやってあいつらを呼び出してやろうか考えてたんですけどどーにも思いつかずにだからその…」
「いや、そんなこと誰も聞いていないが…」
「え?いや委員長が遅刻の件で先生が呼んでるって…」
「ああ、それはお前を呼び出すための手段なだけだ。別にお前が遅刻しようが私には関係ない」
「あっ、はい…」
「それで今のところどうだ?進み具合は…」
「まだなんとも…」
「今日中によろしく頼むぞ。とは言っても結果的に厚生できればいいからな」
「え?今日中に厚生させるということでは…?」
「何を言っている?そんなの無理に決まっているだろ」
「…そそそそ、そうですよね!あははは!」
「お前まさか…」
「それでは失礼しまーす!」
…やだ間違えてた恥ずかしい!何勘違いしてるんだろ!俺の時間を返せ、バーロー!
「何話してたんだよ、赤島」
昼食時俺と鏡は屋上で飯を食っていた。
「いや大したことは…」
「先週から何隠してるんだよ。教えろよ、このこの!」
「やっ、やめ!言うから言うから!」
「やっと観念したか…」
でもこのチャンスを活かすしかない!でないと絶対タイミングを逃す!
「じ、実は…」
俺は全てを白状した。
「…俺を厚生?」
「そうだ。そう先生に頼まれてる。だから今日の放課後、旧校舎の教室に来い」
「いいぜ?」
「はい?」
「だから行くって、放課後」
案外あっさりいった…。俺の悩みとは一体…。
「お、おう。んじゃ放課後、旧校舎の教室に来いよ」
と言って俺はその場を後にした。俺は屋上の扉を閉めてその場で嬉しさの舞を踊ってた。
「お前何してんの?」
振り返るとそこに鏡がいた。
「いや、これは…」
すると鏡は思いっきり走っていった。
「おいみんな!赤島が面白えことしてるぞ!」
「お願いやめて!やめてください!」
先程の一件があってから俺の元気は0だった。授業も頭に入らず時間だけが過ぎて行き気づけば放課後。あ、そういや笹木誘わな。
「おい、笹木」
「何よ挙動不審の赤島」
「その呼び名はやめてください」
「んで何よ?」
「ちょっと今から付き合ってくれ」
「頭沸いたのかな?私の拳で元に戻してあげる」
「話を聞け!」
そして全てを白状した。
「はあ!?私の何が悪いわけ!」
「自分の欠点に気づかんのか!」
「知るわけないでしょ!」
「とにかく行くぞ!」
と言って俺は笹木を引きずって行った。この瞬間俺は初めて笹木に愉悦感を覚えた。ざまあみろ!
放課後、俺と鏡と笹木は旧校舎の教室に居た。
「で、具体的にどうするのよ」
「それはお前らの欠点と向き合って少しずつ解消していくしかない」
「んじゃやることないのね?」
「結論から言うとそうだ」
「なんで連れてきたの!私友達とパフェ食べに行く予定だったのに!」
「知るか!これやらないと俺の先生からの評価が下がるんだ!」
「知らないわよ!」
「と、とにかく!俺も困るんだよ!そのドS!」
「なんですってー!」
その後俺は笹木に腹パンを喰らった。
「本当にありえない!よりによって女子にそんなこと言うなんて!」
「悪かったから機嫌直せよ…」
俺は笹木に殴られた腹を抑えながら言う。
「赤島、結局何も進まなかったけどいいのか?」「致し方ない。明日は二人の欠点を直すからな!」
「明日もやるの!私友達と遊びに行くんだけど!」
「知るか!なりふり構ってられねえ!厚生プロジェクト開始だ!」
「お願いだから勘弁して!」
次の日笹木は学校をサボった。
厚生プロジェクト第2部をお読みいただき誠にありがとうございます!前書きにもある通り今回は赤島君たちの日常生活をお送りました。この本での中心的な人物は赤島君、鏡君、笹木さんの3人で繰り広げられます。次回ではプロジェクト中心のお話を書けたらと思っています。何かアドバイス等あれば是非コメントにお書きください。最後に読んでいただいた皆様に、感謝の気持ちを込めて!