表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セモヴェンテ  作者: mizuho
1/2

プロローグ

「撃て!!!」

轟音と共に砲弾が発射される。

しかし砲弾は車体側面の傾斜部に弾かれて、地面へと着弾した。


「着弾確認!!貫通せず!!」

砲手の報告に対し、車長は苛立たしそうに支持する。

「クソ、傾斜装甲には威力不足か・・・。次弾装填急げ!砲手、敵側面、履帯と転輪の間を狙うんだ!」

「了解!」


私はすぐさま抱えていた徹甲榴弾を砲内部へ拳で押し込み、閉鎖機を閉じた。

「装填完了です!」

私がそう叫ぶのと

「敵砲塔が此方を捕らえました!」

と砲手が叫ぶのはほぼ同時だった。


怖かった。私の位置からは外が見えないから。


「さっさと撃て!!」

車長が指示を出す。

轟音が鳴り響き、砲の閉鎖機が自動で開く。


その砲撃で、ただただ敵を撃破してくれたことを祈るばかりだった。


と同時に金属を切り裂く音と衝撃が私を襲った。

車体が大きく揺れて、私は車体後部へ吹き飛ばされ、全身を強く打った、。



「あぁああああああああああ!!!」

「イヤだぁ、まだ死にたくないよう・・・。」

「痛い、血が、」



あぁ、やられたんだな。


私は仲間の悲鳴がだんだんと遠ざかる感覚と共に、意識が薄れていった。





~~~


全身がだるい。焦げ臭い。頭がぼーっとする。

周りからはバタバタと銃声が聞こえるが、どこからだろうか。

とても近くから聞こえているはずなのに、とても遠い所から聞こえる気がする。


四角い鉄の塊の中にいた。

潜望鏡からしか前の様子が分からず、2人入るのがやっとな窮屈な箱。

中は暗く、とっても埃っぽい。


ふと自分が乗る歪な機械のうち、唯一開放的な空を見上げてみる。


空は灰色で、どこまでも淀んで見える。

見ているだけで息苦しくなりそうな曇り空だ。


周りはどうなっているのだろう。


機械の上部から少しだけ頭を乗り出してみる。

周りを見渡せば、至るところで硝煙の漂う荒野。小高い丘。

かつて緑で一杯だったであろう木々は燃え付き、ただ大きな消し炭の如く佇んでいる。

土はまるで大きな巨人に蹂躙されたかのように、穴ぼこで、焦げ付いている。



と、500メートルくらい遠くだろうか。

黒焦げの鉄の残骸の向こう側。

頭でっかちなブリキの機械が1両、ガタガタと音を鳴らしながら彷徨っていた。

戦車と呼ばれるものである。

車体は緑色だった。それは私の味方ではないことを意味した。



突如、そいつは停止した。同時に主砲がゆっくりとこちらに向き始めた。

その四角い砲塔には、砲身は短いが大きな口径の砲が付いていた。まるで虚ろな一つ目。

獲物を狙う怪物だ。



そう、思った瞬間そいつの目が光った。

土煙が見えると同時に爆音が轟く。



おぼろげだった意識が突然現実に引き戻される。

吹き上がった砂と爆発の熱風が顔にふりかかる。


熱い。熱い。

痛い。

息苦しい。


砲弾はこちらに直撃しなかったものの、十数m手前で爆発した。

その衝撃で土は捲れ上がり、黒く焦げている。


慌てて体を車内に潜める。

砲はひしゃげ、機銃があった場所も敵の砲撃でグチャグチャに歪んでいる。

潜望鏡で相手を確認はできても、此方に対抗する術はなかった。


車体から出たって、機銃でハチの巣にされるのがオチだ。


「みんな、私も今から行くね」


そう、諦めて呟いた直後、


突然、怪物が光った。

車体が炎上し、爆発して砲塔がもげた。


味方の誰かが撃破してくれたのだろうか。




緊張が解けたとたんに意識が朦朧としてきた。

たまらず砲手座席に体を預ける。



いつからこんな地獄が始まったんだろう。

それが始まる前の事を想いながら、私は再度意識を手放した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ