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死を忘れた世界で  作者: 黒川 イヌキ
エピローグ
22/22

021.エピローグ



 父さんを殺してから少しの時間が経った。

 今でもあのとき父さんが死に際に言っていたことをよく思い出す。

 俺が最後に父さんと呼んだことで何かを察したのかも知れないし今になってはもうどうしようもないことなのだが、凛恵はお前のために作った人形だ。私が死ぬと起動するように作っていると。俺はあのとき咄嗟にこう言っていた。「凛恵は人だった」と。するとお前がそう言うなら人間として存在していたんだな。と言って息を引き取った。あの時は無我夢中でやっていたのでわからなかったが、冷静になった今だと全てのことを鮮明に思い出すことができる。

 この後きっと凛恵は無事起動して生きているだろう。でもその先に俺はいない。カレンと俺はもうこの世に存在しない。言わば亡霊のようなものだ。世界に見られるが認知されない。存在はあるが存在しない。とても曖昧な存在である。それも仕方がないか、未来から来ているんだからな。カレンと俺にはこれから先の未来を見届けそして過ちを犯しそうになった時には救いに入る。と言っても不老不死に限っての話なのだが。

 これからは未来永劫カレンと添い遂げることを決めたのだ。どれだけ楽しいこと新しいことを探せるのかが目的となりそうだ。誰の目にも触れず終止符の打たれた戦い。そこで起きようとしていた過ち。もしも食い止めることができなかったらどうなっていたのだろうか。気にならないと言ったら嘘になる。でも、これでよかったとも思っている。

 ここまでくると考えることさえもバカバカしくなったきそうだ。しかし考えることをやめたりはしない。これでも人間の端くれだと思っているから。


 そしてまたしばらくしてカレンとの間に1人目の子供ができた。なんの病気や怪我もなくすくすくと育っていったのだが、体に尖ったものが刺さり穴が開いた。俺たちなら3秒もかからずに治ってしまう。だが、息子は10秒かかった。嬉しくもあった。力が弱まっている証拠だから、でもかなり長い時間を生きることになるだろう。しかも新人類の誕生とか言われて研究されても困るなと思ったが、いつかは自立してもらう。人生の結末は自分で決めてほしいから。


 物語であれば一人悠久の時を過ごすことになっただろうしかし、俺にはカレンがいるそして子供もできた。これはもう誰がどう言おうとハッピーエンドだと自分自身で思っている。そしてこれはすべての人への願い。何があったとしてもハッピーエンドたる理由を人生の中に見出してほしい。


 こんな境遇でも幸せと思えた。だから全ての人に幸せになってほしいと願いっている。


 これが俺の全てを形作った物語である。


 The END

最後まで読んでいただきありがとうございました。この物語を完結させられよかったです。今は参加作品を進めているのと、この物語のもしもの話スピンオフのようなものを書こうと思っています。この物語はこれで終わりですが次回作も読んでいただけると嬉しいです。最後までお付き合いいただき誠にありがとうございました。ではまたいつか会いましょう。

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