019.過去には
俺はカレンを連れて明かり一つ付いて居ない空を飛んで居た。明かりは付いて居ないと言っても、火は付いて居た。暴動か何かあったんだろう。飛んでいる限り人の気配はしない。かなり進んだだろうか。後ろを振り返ると高いビルが光輝いている。そこに大きく掲げられている文字を目を凝らしてみると、"不死教"と書いてあった。本当にどこから狂ってしまって居たのだろうか、今となっては知る余地もない。あるところを境にポツラポツラではあるが家に明かりが灯っているようになっていた。さっきの場所は飛んでいるので見えないこともないが、かなり後ろに見える。
一刻も早く行かなければという気持ちだけがどうしても先行してしまう。飛んでいる間にもあれこれ考えてしまう。
いや、今はとりあえずは向かうだけを考えよう。
「航、どうかしたの?」
何か察してくれたのかな。やっぱり俺には勿体無さすぎるくらいいい娘だと思う。
「なんでも、大丈夫」あ、あの時の返事。
「そうだ、カレン。俺もやっぱカレンのこと好きだわ」言ってしまった。タイミングとかめちゃめちゃ変だよな。カレンも困ってるような顔してるし。
「あ、う、うゆ」
うゆ?なんだか可愛いと思ってしまった。
カレン自身はあたふたしている。
「まあ、そうゆうことだからよろしく」
平常心平常心。自分にそう言い聞かせる。
こんなやり取りをしていると時間も忘れるもんで早宵市に到着した。俺の記憶が正しければ、あの場所に。あった。よかった。
「カレン着いたよ。俺の元家に、今は無いみたいだけどね」
あったはずのところには別の家が建っていた。この地下にあるはずなのだが探せるのかどうか。
「航らどうやって探す?」
「どうしようか」
記憶のどこかにあるはず。思い出せ。
そうだ、確か俺の誕生日を叫んでいたような。試すだけ試すか。
「カレン手を繋いでくれるかな配布為の方法を試したいんだ」
そう言い、カレンの手を握った。なんだか柔らかい。
「0824」名前をと頭に直接音が聞こえてきた。「神崎航」承認完了転送すると言った。
まばゆい光に思わず目を閉じてしまった。
「カレンいるか?」
「ええ、ここに」
気がつくのと同時に手前の方から明かりがついていった。あれがタイムマシンか。部屋の中央にある黒い球体がそうなのだろう。
「行こうカレン」
「私はずっとあなたについていくいくわ」
なんて頼もしいのだろうか。ちょっとした感動を味わいながらその球体の中に入った。
そこにはなにやらメモのようなものが挟まっていた。その内容は特定の時にしか戻れない。時を超えると二度と元には戻れないとだけ。
「カレン……」
「ええ、わかってるわ。ここにきた時から覚悟はできていたもの」
それならよかった。俺は元より決めていた。自分がどうなろうと大した問題では無い。全人類のためだから。
「行こうか」
「「起動!!」」
よくわからない感覚が体を襲ってきた。カレンは大丈夫だろうか。と思っていた間にその感覚は収まったのと同時に酔ったような感覚がして吐きそうだ。だが、外の風があまりに気持ちの良いものだったので吐き気すら忘れてしまった。
「ねえ航。これが地球なのね」
「ああ、昔のな」
地面には草が生えているそれも綺麗な芝生だ。あたりの明るい風景を見て実感した。
「本当に過去にきたんだ」
読んでいただきありがとうございました。残り話数もわずかとなりました。最後までお付き合いいただけると嬉しいです




