013.夢
戦闘が始まり、どのくらい経ったのだろうか。俺には見当もつかない。俺の表情から察したのかやつが攻撃の手を止めた。
「どうした?その程度なのか?まだ30秒しか経っておらんぞ?」
これが神の力なんて無理だろ。勝てるわけがない。そんなことを考えているとどこからか声が聞こえた気がした。
「わ、る!航っ!聞いているの?」
横にカレンが座っている。さっきまでのあれはなんだったのだろうか、もしあれが本当に起こることなのだとしたら。確実に死ぬ。
俺はカレンの目を見て「逃げるぞ」とひとこと言って、無理矢理連れて帰った。
※※※
連れて帰って来たはいいものの、頭の中が混乱していて思考が空回りしている。
「なあ、カレン」
「なによ」
冷たくひとことだけ返されただけだった。
まずはなにから話すべきなのか、今になってだが本当にあの時みた夢のようなものは真実なのか。逃げて来た以上わかるわけがないのだが、無言で悩んでいたが、カレンの方から話を切り出してくれた。
「航。なぜあの時無理矢理私を連れて逃げ出したの?」
怒っている感じがしなかったからなのか、素直に全てを話すことができた。
「まず、勝手に逃げ出してすいませんでした。けど、あの30秒間の間に夢を見たんだ」
あのとき見た光景のこと、現れた不死神のことを話すと「バカみたい」と返された。
でもこれでいい。本当だったら確実に死んでいたのだから、命拾いしたのかもしれない。けど、あれだけど数の不死教徒とどうやって戦うか、やつの話なら人を殺す力を手に入れているはず。
「カレンみんなを招集できるかな?」
「ええ、でもなんで?」
「話し合わなければならないから」
「わかったわ」
何かを察してくれたのかあっさり受け入れてくれた。
※※※
「単刀直入に言う。この戦いはきっと誰か死ぬと思う」
やつと闘うなら、敢えて力を与えさせた後の方が倒せるということを伝え、不死教徒掃討班と対神班との2組に分け会議が進められた。
そして、会議をまとめるとただ一つ全力を持って倒すこと。それだけ、逆に話す内容はない。気がつくともう夜だった。一人で外にいるとカレンが中から出て来た。
「あのさ突然だけど夜は好き?」
ああ、なに聞いてんのかな。疲れすぎて頭おかしくなってるのか?
「私は……そうね。好きかしら?静かだから落ち着いていられる唯一の時間なのよ」
「そっか、俺は嫌いなんだよね。死に近づいて行く気がして、なんて言うかさ。終わりみたいじゃん?」
なに言ってるんだと言いたげな顔でこっちを見ているカレンはなんだか可愛く見えてしまった。疲れてるのか?
「あれだよ。怖いんだよね死ぬのが」
「なら、私があなたが死ねるまでずっと一緒にいてあげるわ。死ぬときも生きるときもね」
なんだろう。なんかものすごく。
「なあ、カレン。これって俺告白されてるの?」
下を向いているが耳まで赤くなってるのが街頭の明かりでわかった。まさか、図星なのかだとしたらいつ?いつなんだ??
「ねえ、航。今は何年かわかる?日付も。どこ見てるのよ!ちゃんと答えて」
平然といや、慌てて話をすり替えようとしているカレンだが、なんか可愛い。え、これってさっきのがあったからか?まあ、カレンの話に付き合ってやるか。
「2千……何年だ。日付は確か6月の11日辺りだったはず」
「分からないでしょうね。人類は数えることを止めてしまったのよ。数える必要がないからね。今は2501年」
どうりで知らないはずだ。死なないから数えるのだって意味がない。カレンの顔が赤いままなのがとても気になる。気になって仕方がない。
「人類が年を数えるのをやめたのは
2100年。21世紀末ね丁度この年不老不死の薬が世界にばら撒かれたのよ」
「ばら撒かれた? 人類は望んで手に入れたんじゃないの?」
「違うわ。マッドサイエンティスト?だかを名乗っていた人物がばら撒いたのよ。その頃の人類は死ぬことを恐れながらも懸命に生きていた。けれど、そんなことが起こったから現在の腐り切った世界があるのよ」
「でも!こんな話さっきまでのこく、告白とは全く違うだろ!」
あー、完全にミスった。取り返しがつかない。どうしよう
「悪かったわね。だって、だって。好きだったんだもの」
「で、でもなんで?俺のどこがいいんだ?」
「一目惚れ。言っら薄っぺらくなってしまうかもしれないけど、本当なのよ」
カレンの好意は嬉しい。だけど、凛恵のことが忘れられない俺がいる。
「ありがとう。死ぬまで生きてる間は守れるように頑張るよ」
どうしたらいいかわからない。こんな気持ちでいいのかもわからない。でも俺には断れない。どうすれば、いいんだろうな。
読んでいただきありがとうございました。
前回投稿から時間が経ってしまいましたが、完結させるまでやめる気はありませんどうか最後までお付き合い願います。