010.不死教徒
あの日から9日が経ったのだが、自分の目で見たもの、耳で聞いたもの、鼻で嗅いだ匂い。全てを鮮明に思い出すことができる。
人を殺した日のことは忘れることはできないだろうと、思っていたのだがその事さえも忘れてしまう事件が起きた。
不死教を名乗る集団が現れた。
その組織のリーダー曰く、俺のいるテロ組織に協力をしているなどと言ったデマを流していた。世間からの目はただの宗教組織かと思われ始めていた。それを阻止すべく緊急招集がかけられた。
「あまりいいとはいえない状況ね」
言われなくともその場にいた全員には分かりきっていた。しかし、対策を見つけ出すことができないままこの日の会議は終了した。
俺には考え事をするときのルーティンがある。誰も訪れることが無いような墓場、死ななくなった人類からは忘れ去られている場所である。そのため人も居ないのでゆっくりと考えることができる。現代社会における唯一静かな場所ともいえる。
そして、日没の数十分前くらいだろうか、親の墓の前で考え事をしていた。
「父さん……母さん」
俺は墓場でそう呟いていた。
人は今日も居らず、相変わらず汚い。ゴミが散乱しているのだが自分の父親のところくらいは綺麗にしてある。
「ねえ、君。その年で墓地にいるなんて珍しいね」
人の気配なんてしなかった。
突然声をかけられた俺は、驚きの余り喋ることができなかった。
「ああ、別に喋らなくてもいいよ」
俺の心の中を読んだとでもいうのか話す前に答えてきた。そして話すこともできない。
なぜ喋ること、身体を動かすことができないのか俺には到底理解することができなかった。
「あ、あ……」
「今日は挨拶に来たんだ。殺す気はないよ」
まて、これっていつか殺すってことか?
そうでなかったとしても、いずれ会う機会があるとでもいうのか。
「また、今度来るべき時が来たら会おうじゃないか」
身体が動くことに気がついた俺は後ろを振り向きながら叫んだ。
「お前は誰だ!!!!」
そこには誰も居なかった。本当に存在していたのかはわからない。もしかしたら空耳かもしれないし。ただ、感じ取れたのはただ者ではなかった。
「なんだったんだ今のは……」
この日はあれは何だったのだろうかという疑問を持ったまま家へ帰ったのだが、カレンが締めていたはずの鍵を開けて家の中で待ち構えていた。
「何してるんだ?」
何故家の中にいたのかということを率直に聞いたが、かえってきた答えは関係のない内容だがとても興味深いものだった。
その内容は、不死教徒の奴らは人であって人ではないという。奴らは何かしらの不死に対する力、正確には生を司る力を使用するとのことで、実際に調査しに行った俺の知らない何人かは殺され。辛うじて生き延びたもの、いや餌にされたものがカレン達に伝えにきたそうだ。
「となると、これからどうなるんだ?」
「あまり関係のないことだけど質問ばかりしていないで自分から会話を繋げなさい」
冗談を言ってきたが、カレンの顔はとても真面目な顔だった。なので俺は自ら会話を始めた。
「すまん。なら、これから奴らと遭遇すると戦闘になるかもしれないということか」
「そういうことになるわね。もしかしたら全面戦争のような状況になるかもしれないわ」
不死教は数をどんどん増やしていると聞いたこともあるし、こちらはそれに対してどれくらいの戦力があるのか俺は何もわからない。
「こっちにはどのくらい戦力があるんだ」
「だいたい、100人ほどね」
「は!?!?!?」
カレンの言葉に耳を疑った。あきらかにおかしい数をだ。世界に喧嘩を売ろうしている集団がそれしかいないとは思いにもよらなかった。その後、結論としては今すぐに集めることのできる戦力を集め本拠地へ攻め込むことで話が終わった。
カレンが帰り、一人になるとどうも落ち着いていられなかった。理由としては昼間のことではあるのだが、妙に頭の中で引っかかる 。
気づいた頃には夜も更けていたので考えることをやめ、目を閉じた。
投稿遅くなりすいませんでした。途中でやめることはありませんので、終わる時まで付き合っていただけると嬉しいです。これからは月曜日の投稿にしたいと思っています。今後もよろしくお願いします。