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009.訓練という名の人殺し⑶



訓練いや、作戦開始時刻がやってきた。

指揮官の合図で大型商業施設へと突入する。


「作戦を開始する。総員作戦開始!」


「「はい!」」


突入と同時に人が次々に倒れていく辺りはすぐに血の海となっていった。これは自分のための作戦なのに何もできていない。殺さなければ強くなることさえもできない。


決めろ、決めるんだ。強くなるために守れるようになるために、2度と大切な人を失わないように……人を殺す。


こう決意してからは、早かった。もう何人も手にかけてしまった。もう後には戻ることができない。荒れ狂う海の如く人を切り、刺し殺していった。気付いた頃にはもう、フロアの人は全員死んでいた。


まだ、殺したりない。殺さなければならない。自分の脳内からの指令を機械のように実行する。そこに友の自分の意思はない。

しかし、エスカレーターを登りきったときようやく目が覚めた。そこには凛恵の姿がある。こっちを見て怯えているのが一目でわかった。怖がらせないためにも頭にかぶっていたものを取り、凛恵を見ると涙を流していた。この時の凛恵の気持ちは俺にはわからない。


上のフロアから一人の男が降りてきた。


「おーい、甲賀見さん。だいじょ……」


俺はこいつのことを覚えている。忘れるわけがない。俺を裏切った人間の一人だから。


「俺は鮮明に覚えているぞ、永峰亮。俺はお前に裏切られたからな。お前にはここで死んでもらう!」


裏切られたことで溜まっていた怒りや憎しみが爆発するがままに力を振るった。この時、自分が何をしたのか現実から逃げて目を閉じていたためわからなかった。


目を開けると亮が、手招きをしていた。

近づいて口元に顔を近づけた。

もうすぐ消えてしまいそうな弱々しい声で俺に話してきた。何故こんなことをした俺なんかに。


「ごめんな。俺が弱かったから酷い思いをさせちゃって。本当は仲良くしたかったし、本気で嫌ってるやつなんか一部の金持ち野郎どもだけだから堂々としてく……れ」


力がどんどん抜けていくような喋り方だったが、気持ちは十二分に伝わってきた。こんなことをした自分が恥ずかしくてならない。

凛恵の目の前だし、幻滅されたかな。


「航くん。気にしてないから、大丈夫。大丈夫だから一回落ち着こ」


そう言われて気づいた。目から涙が溢れ出していて視界がぼやけていた。泣いている暇なんてないのに。


「凛恵、ここから逃げ出すんだ。それじゃなきゃ殺される」


※※※


無事に凛恵を逃すことのできた俺は、作戦が終わる頃を見計らって集合場所へと向かった。あの施設は今頃警察が沢山いるだろう。

待機していた車両に乗ると緊張が一気に溶けたのか、そのまま意識を失ってしまった。


目を覚ます頃には家の中で隣にはカレンがいた。


「今日は疲れたでしょう?しばらくそばにいてあげるから、で寝てていいわよ」


「なら、お言葉に甘えて」


そのまま目を閉じると今日1日のことが鮮明に脳内で映し出される。辛いことは忘れたいと思っていたのかは自分でもわからないが、強く目を閉じそのまま眠りについた。

今回も読んでいただきありがとうございました。

前回から期間が空いてしまい申し訳ございませんでした。次回は来週投稿できるようにしたいと思っていますのでよろしくお願いします。

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