おざなり なおざり
字面が似ているのに実は意味が違う言葉って、結構ありますよね。
あれ、どっちだったかな? と毎回迷っちゃう物の一つがコレ。
「おざなり」と「なおざり」です。
アナグラムなのか君ら。ややこしいわ。
どちらも「いい加減である」というニュアンスは同じなのですが、意味がちょっと違います。
漢字で書くと分かりやすいです。
では「おざなり」から。
漢字で書くと「御座成り」です。
もともとは、お座敷仕事をしている芸者さんや太鼓持ちさん方が使う言葉で、
客の身分や懐具合をみて手を抜く事を指すらしいです。
「お座」敷のレベル「なり」の仕事をする、という事。
貧乏人はいい加減に扱われます。世知辛い世の中ですねえ。
そして「なおざり」は。
漢字で書くと「等閑」が一般的。当て字ですけどね。
読んで字の如く、
「等」しく「閑」という事。
もはや手抜きどころではありません。コレきっと仕事してませんよ。
こっちの方がギルティです。
違いを例文で見てみましょう。
ちょっとドイツのフライハウスガルテンまで遠出しましょうか。主に私の趣味で。
時間が止まったような古めかしい寒村に、異様な夜がやって来ました。
俯いた村人達が黙々と秘匿された丘を登ります。
謎めいた五体の魔神像。生ける祭壇たる娘。
彼等の神を讃える儀式が始まるのです。
では例文を。さんハイ。
「闇の丘の儀式をおざなりにする」
いけませんね。村民からやる気が感じられません。
洞窟と暗黒の神とかアホじゃねえの〜
ちょ〜たりぃ〜
と思っている事がヒシヒシと感じられます。
一応儀式は行われているものの、五体の魔神像で作る五芒星は歪んでいるし、生贄の娘もイケてません。
シアエガ様が大人しく封印され続けてくれるかどうかは、ギリギリの線でしょう。
「闇の丘の儀式をなおざりにする」
もっといけませんね。村民は三割も来ていません。
無数の黒い触手が生えた緑色の単眼とかウケる〜
酒あるし宴会しようぜ〜
と肝試し的飲み会がワイワイと始まります。
もちろん儀式は行われず、五体の魔神像は三体くらい売り払われて五芒星もクソもないし、生贄の娘は十八番のテクノで踊りだします。
シアエガ様、封印解除待ったナシでしょう。
という事で、いい加減さの程度に差がある事が分かりました。いい加減でも「する」か「しない」かは大きな差です。この場合は死活問題です。
どっちを使用するか迷った時は、漢字表記を思い出すといいかもしれません。
「御座成り」の方は当て字じゃないし、漢字を覚えやすいので、
こっちを覚えておけば、いい加減でもお座敷は「する」方だと推測出来ますしね。
間違えたらシアエガ様が復活し、触手を際限なく伸ばして手当たり次第……いや触手当たり次第、生物も無生物も片っ端からギュギュッと握り潰すらしいので気を付けましょ〜