スキマ(羽田井 羊)
ふと、目についた。
ちょっとしたこと。
机のスキマにある可愛らしい綿ぼこり。
ちょっとしたこと。
勉強のスキマ時間に飲む麦茶。
ちょっとしたこと。
友達と友達の席のスキマに座る放課後。
ちょっとしたこと。
図書館でスキマに収まっている文庫本。
そんな、ちょっとしたスキマで心のスキマは埋められる。
けれど、どうしたって。スキマは広がっていって、僕を押しつぶそうとする。
両親、兄弟、先生、友人……そんな彼らとの、ちょっとしたスキマが、平穏を奪おうとしていく。
それは、ほんとうにちょっとしたこと。
素直になれないだけだったり。
プリントの欄が空いていたり。
考え方が合わなかったり。
そして僕は、僕自身が、世界のスキマに居るように感じてしまう。
そんな時、周りにいるスキマが言うんだ。
「君は、一人じゃないよ」って。
ちょっとしたこと。
自動販売機のスキマに落ちている十円玉。
ちょっとしたこと。
建物のスキマを通り抜ける風。
ちょっとしたこと。
食卓をスキマなく囲む夕食。
ちょっとしたこと。
僕の心を埋めてくれる、
ちょっとしたこと。
ちょっとしたこと。
ちょっとした……スキマ。