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影(空亡)
私は影が好きだ。
孤独な私にいつも付いて来てくれる。
時には友のように横を歩き。
時には妻のように恭しく後ろを歩き。
時には夫のように前を頼もしく歩き。
時に家族のように囲って慰めてくれる。
そんな影が私は好きだ。
そして私はある時気付く。
影を大きくするには光を強く当てればいい。
私が光って輝けばいい。
だから私は自分を磨いた。
磨いて磨いて磨きに磨いた。
そんな私は光になった。
そして私はある時気付く。
私の周りに影がいない。
光に影は生まれない。
泣いた私に届く囁き。
「潔癖なのも程々に」
影の声が聞こえた気がした。




