表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ついに彼女は羽化を迎える  作者: 枕木きのこ
四 さなぎが準備を始め、
27/31

1

 なるほど。

 まず第一に思い浮かべたのは、たった四文字のことだった。確かに、今、自分が一度死んだことを自覚している。

 いや、正確に言うなれば、前々回の最後も、死だったのだろうと、今なら意識が回った。何事も経験を積まなければ、理解出来ないものだ。

 スマートフォンを拾い上げると、日時を確認する。間違いなく、今は終業式の朝だった。ぼんやりと眺め続けているとバイブレーションを起こし、メールの受信を知らせる。木村雪乃からだった。今回も、連絡先は交換していたらしい。

「まさかあんなことになるなんて。どうしたって私は死を免れないの?」

 哀れなプリンセスへ送る文面を考えているうちに、指は、そこから離れた。

 自分は今、三度目の今日を迎えた。初回に関しては、初回であるからして例外として、今ようやく自覚に至った二回目のループのことを、思い出す。

 自分が何にデジャヴを感じ、何には感じなかったのか。

 そして、死の間際、橋の上で、木村雪乃と何を話したのか。

 重点を置くのはその二点だ。

 そしてその思考の中で、ひとつの結論に、至ってしまった。

「早く支度しなさい」

 母が顔を覗かせ、こちらに言うのを、

「本当にね」

 上の空のまま流して、もう一度スマートフォンを手にすると、木村雪乃に電話を掛けた。

 日の当たる御心橋は車も多く往来し、人々も、犬の散歩やジョギングに忙しないようだった。十分してやってきた彼女は制服を揺らし、毅然とした態度である。

「悪いね」

 ひとまず、終業式、ましてや転校する前最後のクラスメイトとの時間を割いてもらったことを、謝罪する。しかしそれも形だけのものに違いない。彼女はこれまでに何回、何十回も、彼らと別れの挨拶を交わしているのだから。

「話って何?」

 彼女は心当たりのひとつもないように、気負いした素振りも見せず疑問を投げかけてくる。

 それに対し、

「全部わかった……、かもしれない」

 答えると、

「どうしたら死のループから抜け出せるか?」

 そうと言ってもよかったが、どこか明言するのが嫌で、

「どうして木村さんが死ぬのか、というところ」

「ふうん」

 しかし彼女の返事はそっけないものだった。それに対して、意外性を感じないあたり、避けているだけで、はっきりと、これというものに行き当たっていることを再認識する。

 後ろで手を組み、欄干に凭れ、

「聞かせてよ」

 彼女は挑発的な声音で、言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ