青い目。
初めてあったあの時から。
初めて見たあの時から。
初めて話した話したあの時から。
私はアナタのとりこでした。
「ねぇ、そんな仕事、止めれば。」
40代前後のおじさんと腕を組んでホテルに向かう途中、そう声をかけられた。
みおぼえのない声に振り向くと、そこには青い目が合った。
その目は私を捕らえてて、
私は動くことすら許されなかった。
「おじさん、あんた、●●会社でしょ?この写真、おくちゃってもいいの?」
そういって、その青い目はおじさんに携帯を突き出した。
「ひっ!」
それを見た瞬間、おじさんは私の腕を振り払って、夜の闇へ消えてしまった。
あ〜あ、7万円が・・・。
青い目は一つため息を吐いて、こっちを向く。
「で、もう止めろよ。そんなこと。」
また青い目は私を捕らえる。
「そんなことしてて何が嬉しいの?」
嬉しい?そんなはずない。
「お金が必要なの?」
もらったお金はほとんど使ってない。
「なんなのさ。なんか言えよ。」
青い目は、そう告げる。
「なに?関係ないじゃん。私が何しようと。どんなに扱われようと!どんなに汚れても!」
青い目は、何もかも吸い込んで。
私の必死に叫んだ言葉も、目の中に消えた。
言葉が消えた代わりに、私の目から水が出てきた。
生暖かい。
もう、消えたと思ってた水が。
「そういってる割には・・、泣いてるじゃん。てか、関係なくないし。」
青い目はなお、私を追い続ける。
青い目は私に近寄ってきて、そっと頬に手を添えた。
青い目は青いくせに、暖かかった。
「俺、あんたのそんな姿見たくないし。」
「いっつも、あんたっておじさんと手を組んで、泣きそうな顔してる。」
青い目はすぐ近くに合って、そこから全てを探り出そうとする。
ドク ドク
その目に誘い出されたかのように、私の心臓は大きな音を立て始めた。
「なんでそんな顔してまで、そんなことすんの?」
青い目はさらに近づく。
そこで、私は全てを吸い込まれた。
「・・・壊れそうだから。誰かが近くにいないと壊れそうだから。誰かが私を必要としてないと消えてしまいそうだから。たとえ、一時だけでも。バラバラになってしまいそうだから。怖かったの・・。怖かったの。・・・何もかも・・・。」
その目を見つめたまま、私はしゃがみこんだ。
手も足も、体全体から力が抜けた。
青い目は、上から私を見続ける。
「私は汚いって分かってた。あんなことで満たされるわけないって分かってた。でも、他に何すればいいのか分からなかった。これする以外に何も出来なかった。一人消えていくのが怖かった。」
私はその青い目に全てをはき続けた。
いつも間にか青い目は私と同じ高さにあった。
「俺がいるじゃん。」
その一言が、全てを貫いた。
誰か分からない。
名前も知らない。
年も分からない。
日本人なのかも分からない。
そんな青い目に私は抱きついて泣いた。
青い目は私から汚いもの全てを、吸い取ってくれるようだった。
「俺、そこの家で、ずっとあんたを見てきた。」
青い目は、すっと一つのマンションの一階を指した。
「いっつも、違うおじさんと腕を組んでホテルの方へ向かってるあんたを見てた。」
「いつもいつも、寂しそうで、泣きそうなあんたを見てた。」
「そのうち、悲しくなってきた。」
青い目は、私を抱きしめた。
「おれ、あんたのこと好きだったみたい。」
私は、また青い目のぬくもりの中で泣いた。
訳分からなくて、すんません・・・。