第3話
「ん~よく見えないな~」
「どれどれ……」
全身を白い布で包まれているかのような白い服をまとった天使は、望遠鏡を手に取ってじっくりと目を凝らす。すぐ傍にいる天使は不服そうに腕を組み、羽をぱたぱたと苛立ち気味に動かしていた。
「あの子だよ、ほら。前に超能力授けてもらった」
「あ~あの子今頃どうしてるんだろうね」
「それを見ようと今、必死なんだけどね……。どうもうまく見えないや」
「今日は天気悪いしね。雲が邪魔してる」
「まったくだ」
天使は微笑し、望遠鏡から目を離した。その瞬間、強風がびゅーっと二人の間を流れていき、羽の欠片が純白の粉と共に舞い上がる。二人が立っている厚い雲の下を見ると、そこには先ほどまで漂っていた薄雲がなくなっていた。一人の天使が嬉しそうに、
「あ、今なら見えるんじゃない?」
と声を張り上げる。その声につられて、もう一人の天使も上ずった声で
「ほんとだ、見えそう」
と言って、再び望遠鏡を覗いた。
「あれ~あの子何か人助けっぽいことしてるよ~ほら、尻もちついてる子に手差し伸べてる」
「どれどれ……ほんとだ~同級生っぽい子助けちゃった感じ?」
「じゃないかな~あの子が授かった超能力って『未来が見える』やつでしょ?その同級生っぽい子が危険な目に遭いそうだったから助けたんじゃない?」
「あ~かもね~。あれ、でもあの同級生っぽい……いや、もう言うのめんどくさいから同級生の子でいいや、その子さ差し出してくれた手振り払ってるよ」
「え~そうなの~?あの子、同級生とあんまり仲良くないのかな~。ひどいことするもんだね」
「あれま、助けてあげたのに何か怒鳴られちゃってるよ。かわいそう」
「ほんとだね~かわいそう」
二人の天使は顔を見合わせて、困ったような素振りをする。風が少し吹くたびに、天使たちの羽から純白の粉がちらちらと舞い落ち、太陽の光を反射してきらめいている。
「そういえばさ、もう一人超能力授かった子いるよね。あの子も『未来が見える』超能力だっけ?」
天使は望遠鏡を見るのをやめ、腕を組む。
「そうだったと思うよ。その子は今頃どうしてるのかな~?」
「……見てみる?」
「お、見ちゃいますか」
二人の天使たちはいたずらが成功した子どものような顔で、望遠鏡をいじり始めた。羽がバサッと音を立て、粉が空に舞い上がる。光を反射している白い望遠鏡は、カタカタと音を立てながらもう一人の少年に焦点を合わせていった。
二年ぶりの投稿です。