ギャンブルと不信感
コウイチは金の管理が出来ない。2年間付き合って確信した。どのくらい収入があるから支出はこの位なら許される、等の計算はできるが実行が出来ない。少し余裕があればパチンコに使い、負ければ結局生活費にも手を出してしまうのだ。本人も金の管理をきっちり出来る相手じゃないと結婚は無理だと言っていた。なので結婚が決まってからは私が通帳、キャッシュカードを握り、家賃や水道光熱費の管理をするようになっていた。
7月中旬ころから、休みの度に義母とパチンコに遊びにいって来ると言って家を空ける事が多くなった。いってらっしゃいと見送るものの、内心穏やかではいられなかった。
私はギャンブルが嫌いだ。私がまだ小さかった頃、父がパチンコで借金を作り行方不明になった事があるらしい。自分の父がそんな風に家族を不幸にした事があるという事実に傷付いた。それに母が常日頃「パチンコなんてこの世から消えればいいのに」と呟くのを聞けば、ギャンブルに対して嫌悪感を抱くのは当然だろう。
しかし、コウイチがストレスを溜めるのも避けたかった。趣味もなければ友達も居ないので、コウイチも義母同様パチンコが唯一のストレス発散なのだ。
そう思えばたまにパチンコに行く位、また金は義母がだすのならと許していた。
ある日財布から二万円が消えた。計算間違いかバッグの中に落ちているのか…。どこを探しても無い。
まさか…。
夜遅くに帰ってきたコウイチは暗い表情をしていた。私はお構いなしに問い詰めた。
「お金足りないんだけど知らない?」
「…持って行った。」
「何に使ったの。」
「パチンコ…。」
こういう事が多々あったのであまり何を言ったか覚えていないのだが、
「子供が生まれるんだから財布からお金抜くような真似はやめて」
と文句を言ったと思う。産後の生活費に少しでも蓄えておこうと思っていたのに…。
「こんな事になるならDSなんて買うんじゃなかった!」
とも付け加えた。
コウイチはもう行かないと言ったが、行きたくなったら言ってくれたら少なくても金を渡すから、勝手に財布から抜かないでくれと頼んでそれに承諾してもらった。
それでなんとかこの場は終息したが、やり場のない怒りが込み上げていた。
コウイチは県民税や健康保険を滞納していて、総額で10万以上あった。子供が生まれる前に少しでも払っておきたかったのにパチンコなんかに使うなんて。だいたいそんな額になるまで放置できる事に人間性を疑った。
きっと”勝てば良い”と思っているのだ。勝てば借金も返す事ができ、全て上手くいくと思っているに違いない。ギャンブルにのめり込む人間とはそのように考える節がある。
考え方が甘いのだ。コウイチも、義母も。
私には全く理解できなかった。