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母からのてがみ

作者: 虹音

彼の友人の母が亡くなり私がそのひとに贈った話。

僕はどれだけ空気の暖かさや冷たさを感じてきたのだろう…。



ならない目覚まし時計。



じわりと生暖かいゆりかごのように揺さぶられて一日が始まる。

平凡な毎日。



うざいながらも かけてくれる優しい声。


「いってらっしゃい」



幾度となく響く言葉。


僕が溜め息をついた瞬間…。


真っ暗な闇へとつきおとされた。

ブクブク…



「苦しい…しょっぱい…」



もがきながらきがついた場所は、

懐かしい匂いのする場所だった。


どこか心地よい…。口ずさむ歌声…優しいハミングの…。

聞き覚えのある声…。

軽くなでる頭におかれた手。


いつのまにか眠ってしまい目覚めた。

女の人のひざの上にうつぶせに寝ていたようだ。



慌てて起きた。


「すみません(>_<)」

『あらっもう少しそのままでいてもよかったのに(^-^)』

少し恥ずかしがりながら

「僕どうしてここに…(+_+)。たしか何かいやなことがあって悲しくてないていて…とても…悲しいことがあったような…」


思い出そうとしても思い出せなかった。きがつくとそこに ぽつんとたっていた。キョロキョロ。

(あれっさっきの人は?)

霧のようにあたりはぼやっと見えている。

ここはどこなんだろう…。

クスクス笑う子供の笑い声。

楽しそうにはしゃいでいる声が聞こえた。

僕は歩き出した。

左右見ながら歩いていると つまづいて転びそうになった。あっ…

ヤバいころぶ…とおもった瞬間…

身体をまえから支えて受け止めてくれる人がいた。

さっきの人だ。

『大丈夫?(^-^)』

答えようとしたとき女の人は手をさしだした。

『いきましょうか』 温かい柔らかい手。しばらく無言で歩く。

つないでいる手が少し冷たくなってきた。

僕はつよく握り返した。ぎゅっ。

「寒くないですか?」

頬にあたる風は冷たかった。

僕はつないだ手を自分の服のポケットへ入れた。



「こうしたら暖かいですよ(^O^)」

つないだ手から彼女の身体、まわりの景色も薄ピンク色へと変化していった。

不思議な現象に驚いた。

目の前にひろがる草木から急速に一面にきれいな花が咲いた。

そして時々鳥のさえずりがきこえる。


女の人はしゃがんでその花を少し摘み取り僕に渡してくれた。

『はぃ。花は咲く時間が限られているの。草木でいる時間の方が長いのに華麗に咲く花の時間だけはとても短いのよ。じゃあ花はそれで悲しいのかしら。

花はたった短い時間でもその時だけひとがみてなくてもこの大地に華麗に咲くことを嬉しく思っているのよ。それでもいいと。あなたはもし華やかな時があってそれ以外は平凡でも決して落胆しないで。

あなたも花のようにあなたという人はたったひとりだけ。長い月日あなたがそこに生きている限り…存在しているのだから。

もし枯れてもまた大地にあなたのひとまわり大きくなる種をまけばいいの。

そして繰り返しあなたは成長していくの。

話しながら歩いていく。

だんだん暑くなってきた。

小さい頃さわろうとして怖くてさわれなかったセミの声。

ミーンミーン。

「喉かわいてきた」

必死に探すがみつからない。

どこか…

「あっ水だ」

かけより、手ですくってのむわき水。

「あぁおいしい」

『あなたが生きるために絶対必要なものは自らさがして手にいれるの。知恵をつかって』

そういうと女の人は少し先を歩いた。

僕は追いつこうとかけていく。

「まって(^O^)懐かしいな。小さい頃追いかけっこしたっけ」

やっとおいついた時あたりは暗くなり、空に丸い月がでていた。

それは大きく手がとどきそうなくらいだった。

月明かりに照らされ虫たちの音に涼しさを感じた。

月を眺めているとだんだんその黄色がこくなって光へと変わる。

まぶしくてめをほそめた。うっすら目をあけると、山々の紅葉が目に映る。

『きれいねぇ。

よくみてね。この紅葉は様々に色をかえるの。あなたもどんなことにもそれぞれに合う色にかえる力はあるはずよ。

自分を信じて。』

綺麗さにみとれていると だんだんそれらは枯れてきた。 そして天から白く冷たいものが降ってきた。

「雪…」

『冷たいけど綺麗なもの。知ってる?雪の結晶って形はたったひとつしかないってことを。それがあつまってこんなにきれいな白い雪になるの。あなたは自分の中にある、ひとつひとつの良さを大事にして。それらをあつめた時最高のあなたが生まれる。

あなたが信じるすべてのものはあなたの中にあることを。」

冷たくなった僕の頬に両手をそえた。

瞬間記憶が蘇った。

「母さん…」


(さとる)…』


僕に優しく微笑みかける。

「母…」


抱きしめる母。

小さい頃寂しくて泣いた時。

ちょっぴりわざと甘えた時。

叱られた後に…。

もうそれ以来…こんなこと…。

強く強く抱きしめてくれた。


『哲…大好きよ』


『あなたを産んでよかった…。』


『いつもあなたの傍にいるからね…ずっと…ずっと』



雪の白さにかきけされるように消えていった…。


目が覚めると濡らした枕の傍に、

あの日一緒に写した母さんとの写真が…おいてあった。

魂は僕の心に生き続けていること…。僕には支えてくれる友人がいる。

僕をいつも見守っていて。

僕がこれから強く生きることが、産んでくれた母に対しての恩返しなのだから。めいいっぱい泣いていいよね?

今だけ…泣かせて下さい。



大好き。そして

ありがとう

… 終 …



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― 新着の感想 ―
[一言] 純文学のような真面目な小説ですね。
2007/09/07 21:03 テルテル坊主テル
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