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輝きが向かう場所  作者: 白髪銀髪


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一番身近かもしれない、身内ではないファン

 蓉子さんはそう前置きして。


「その上で、高校ですが、たしかに、芸能活動に理解のあるところを選ぶというのは、理由の一つになるとは思います。ですが、どのような形になっても、私たちもしっかりサポートしますから、詩音さんの選びたいところを選んでくださってかまいませんよ」


「ありがとうございます。ですが、それだと、高校のことをただの腰掛のようにしか思っていないんじゃないかと思われるような気がして、それは、イメージ的にはどうなんでしょうか?」


 あの子、仕事ばかりでほとんど出席なんてしていないじゃない、なんてクラスメイトに思われるようなことになると、それはそれで、アイドルとして活動するうえでは厳しいものになるかもしれない。

 クラスメイトなんて、一番身近にファンにしやすい相手だから。もちろん、私がイメージだけで、勝手に思い込んでいるだけかもしれないけど。

 

「たしかに、そういうイメージは大切なことかもしれません。結局は、詩音さんがなにを一番大切にしようと思うのか、ということにかかってると思います」


「私がなにを一番大切にするのか」


 理想を言うのであれば、全部を大切にしたい。

 家のことも、学校のことも、事務所や養成所のことも、それから、ファンのことも。

 もちろん、全部大切にするのはそのとおりなんだけど、この場合、高校生活とを天秤にかけてっていう話だから。

 

「一つ、言わせていただきたいのですが、どれを選んだところで、他人にどうこうと言われるようなものではありません。詩音さん自身の、一度しかない人生における、その場で最善と思われる選択を、詩音さん自身で選んだわけですから。もちろん、後悔はするかもしれません。ですが、自分でしっかり考えて決めたことであれば、それでも前を向いて進むことができるものですよ」


 後悔先に立たずとも言うから。

 今の、と言っても、実際に受験があるのは二年以上は先の話だけど、私の気持ちに正直にってことだと。

 

「どっちも大切にしたい、というのは、我儘でしょうか?」


「詩音さん次第でしょうね。二兎追う者は、とも言いますが、一つも捨てず、諦めずに進もうとするところから得られる経験というものも、きっとあると思います。私の経験ではないので、それほどはっきりとは言えませんが」

 

 そういう蓉子さんは、こうして、大学生と、事務所のトレーナーとか、事務員とか、並行してこなしているんだよね。

 

「このまま、順当に実力を伸ばしていけば、中学生のうち、あるいは、高校生に上がるころには、詩音さんも、奏音さんも、デビューできているはずですから」


 蓉子さんに自信をもってそう言われると、本当に、それが実現しそうな気がしてくる。そういった、生徒のモチベーションのコントロールも仕事のうちなのかもしれないけど。

 気持ちは関係ない、なんて言う人もいるかもしれないけど、実際には、直接は関係なくても、影響は大きいから。


「ただ、そうですね。個人的なことにはなりますが、勉強でもなんでも、できたほうが良いとは思いますよ。将来、どのように活用できるのか、ということではなく、それができたということが、少なくともそのときの自信には繋がるはずですから」


 これも、自分でできる、モチベーションのコントロールってところなのかな。

 たしかに、テストの成績が悪くて落ち込んでいると、パフォーマンスの質も落ちるような気はする。

 それが、たとえば、ダンスとか歌の成績だっていうことなら、レッスンでひたむきに頑張ることで取り返そうと、質が上がるかもしれないけど、勉強の場合、事務所とか、養成所のほうでどうこうできることって、少ないから。

 少なくとも、中学生の間は、学校で私がフォローする……って言うと、偉そうに聞こえるかもしれないけど、それもできないから。あくまで、私と奏音の関りがあるのは、この事務所でのことだ。

 もちろん、ここで勉強を教えることはできるけど、レッスンとは違って、根本的な解決にはならないからね。

 多分、どうしても、べつのことに逃避して誤魔化している、みたいな感覚が抜けないと思う。

 

「もちろん、奏音さんも同じですよ」


「はい……」


 一番大切なのは、奏音の気持ちだ。

 他人になにを言われようと、それがぶれないのであれば、私たちからなにかを言ったりする必要はない。

 あくまで、奏音の選択の手伝いはする、ということだから。全力で。

 私も、もっと奏音と一緒にアイドル活動をしていきたいから。

 今の奏音が勉強を頑張る指針として、私と同じ高校に通う、ということがあるのであれば、それを否定したりはしない。

 もちろん、私も手を抜くつもりはないけど。

 こういうのは、早くに習慣化しておいたほうが良い。つまり、レッスンと学業――学校生活との両立は。


「同級生にも応援してもらうには、やはり、その場所での成績というものが関係してくるでしょう。頑張っている相手は自然と応援したくなるものです。そして、学校という場で、わかりやすく頑張っていると目に見えるものは、学業成績です」


 付け加えてっていうか、蓉子さんがはっきりとは言わなかったことまで言葉にするなら、テストの点数だろうね。

 私が言うわけじゃないよ? 横から口を挟むようなところじゃないし。

 

「あまり、受験先などということとは関係ないかもしれませんが、学業を疎かにしたりしない、という意味では、同じことですね。もちろん、アイドルのパフォーマンスとして、学業成績などは目に見えたりすることはありませんが、苦手を乗り越える、というのは、きっと、糧になると思いますよ」


 後は、奏音がどうしたいのか、ということだ。

 こういう聞き方はずるいかもしれないけど、パフォーマンスを優先するのか、それとも、学業もしっかり頑張るのか。

 いずれにしても、選択肢は多いほうがいい、とは思うけどね。

 この場合の選択肢っていうのは、進学先として選ぶことのできる学校っていう意味で。 

 

「そして、その学業成績という面において、よりレベルの高いところになれば、よりしっかりとしたサポートを受けることができるはずです。周りのレベルが高いということは、相談できる相手が多いということですから」


 そこにはコミュニケーション能力が関係してくるだろうけど、奏音なら、そこは問題ないだろう。

 初対面時の私にあそこまで詰めてきたのは、奏音が初めてだから。


「それから、どちらの成績が悪くなったとして、言い訳にするためにでは意味がありません。あちらを頑張っているからこちらは悪くても仕方がない、といったようなことでは、むしろ、マイナスイメージだということです」


 頑張ることは必要だけど、見栄を張るとか、背伸びをしすぎる、というのでは、意味がないということだ。

 

「結論としては、学歴などというものを鼻にかけて上から目線で接してくるような相手を相手にする必要はありませんが、学歴でも、あって困ることはない、ということです」


 蓉子さんは、あえて、わかりやすい言葉、具体的な言葉を使ってくれた。

 蓉子さん本人が、某有名大学生だから、説得力はある。蓉子さん自身が営業する、ということは、少なそうだけど。


「そして、良い環境の高校ということであれば、この辺りでしょうね」


 いつの間に調べて、プリントアウトまでしていたのか、蓉子さんがコピーした資料を手渡してくれる。

 つまりここに載っている高校が、アイドル活動をするうえでは、力になってくれるところが大きい、ということなんだろう。

 はっきり言ってしまえば、偏差値的に、高いところから、そこまででもないところまで、いろいろと揃っている。


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