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輝きが向かう場所  作者: 白髪銀髪


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行きついた結論はやっぱり

 なんとか、双方に、落ち着いて話を聞いてもらうしかない。

 朱里ちゃんにだけだと、『なんで私に? 問題があるのは向こうでしょ?』と言われてしまうだろうから。

 そのために、こうして実力を磨いているわけだけど。

 一人でできる実力を高めることは、重要どころか、必要不可欠だ。素人――はっきり言えば、下手くそが何人集まったところで、練習を積んだ一人に敵うはずがない。

 その上で、全体のパフォーマンスを揃えるというのはもちろん、アイドルのダンスっていうのは、グループの仲間と一緒に踊るものだから。

 私たちの実力に、たしかに、テストの結果という目に見えた順位はある。

 でも、逆に言えば、それは所詮養成所内でのことで、相手は全員素人(せいぜい、毛が生えた程度)だということでもある。

 

「……ねえ」


「……あのさ」


 私と奏音の台詞が被る。

 真っ直ぐ奏音の顔を見つめれば、気持ちは伝わる。多分、私と同じことを考えているんだろうって。


「今度も私と一緒に」


「今度のテストも一緒に」


 一応、タイミングを計り合ってみたけど、結局、言い出すのが同じタイミングで、今度こそ、私たちは小さく吹き出して。


「なんだ、詩音も同じこと考えてたんだ」


「うん。少なくとも、シンクロはばっちりだってことだよね」


 他人と合わせるときに一番大切なのは、やっぱり、同じ気持ちでいるかどうかっていうことだと思うから。

 

「奏音って、ゆくゆくは、一人でもできるアーティストになりたいと思ってる?」


 単独でやっているような。

 もっとも、それなら、ここには来ない――アイドルという道は選ばないだろうけど。

 奏音は首を横に振って。

 

「ううん。ソロっていうことに全く憧れないっていうわけじゃないけど、アイドルはやっぱり、仲間と一緒に活動してこそだと思う。もちろん、相手に依存してとかってことじゃないよ?」


 やっぱり、グループとして活動してこそ、だよね。

 ソロが悪いってことじゃなくて、というか、私だって、ソロのステージに憧れみたいな感情もあるし、それはそれとして、仲間と心を合わせて作り上げるのがアイドルのステージだと思うから。

 そもそも、ステージに立つのだって、自分ひとりの力じゃない。たくさんのスタッフの方の尽力があってこそ、成り立つものだ。

 もちろん、見てくれるお客さん、ファンの人たちのことも向いていないといけない。それこそ、独りよがりのステージでは、本当の盛り上がりは見せられない。

 

「一応、蓉子さんには確認をとるとして。じゃあ、詩音、合わせよっか」


「奏音こそ、歌いたい気持ちが大きいのはわかったけど、今回はダンスに集中してよね」


 半人前と半人前を足して一人前になる、なんてことはない。

 半人前と半人前の合わさったステージは、やっぱり、半人前にしかならないんだと思う。多少、華やかになって、誤魔化される人もいるかもしれないけど、実力不足は、私たち自身が一番よくわかっているから。

 どこまでいっても満足なんてしていられない、みたいなことじゃなく。

 

「多分、今回も朱里ちゃんはソロだよね」


「朱里ちゃんはっていうか、ほとんどソロだと思う。レッスンの様子とかを見ている限り」


 私はそう思う。

 少なくとも、私が通っている時間帯に、一緒に練習している人たち、みたいなグループは、ほとんど見ていない。

 いや、それは、話をしないとか、トレーナーの人たちの指導に一緒に参加しないっていうことじゃなくて。

 多分、多くの人が、グループ――つまり、他人と一緒にやるということは、自分の足りない部分を埋めるため、下手くそな部分を誤魔化せるから、それはなんとなくずるい、そう思っているから、ソロにこだわる部分が強いんだと思う。

 もちろん、自分ひとりの実力を試したい、評価されたいという部分もあるんだろうけど、前回、グループとして奏音と一緒にステージに私には、そして、おそらくは奏音にも、わかっている。

 たとえ、二人で一緒にパフォーマンスをしたとしても、トレーナーの人たちは私たち個人のこともちゃんと見てくれていて、その中で、グループとしてもきちんと評価してくれた。

 

「多分、由依さんとか、小雪さんとかの影響が大きいからだよね」


 あの二人は、それぞれが、グラビアのモデルとして活動していたりする。それはもちろん、個人の活動だ。まあ、二人で一緒に撮影する、みたいなことが、ないわけじゃないみたいだけど。

 たとえば、同じ現場に入るとしても、一人づつの撮影だとか、そういう意味で。

 でも、それはあくまでも、モデルとしての仕事であって、アイドルとしてのステージの話じゃない。

 

「前回は私たちにとっても初めてのテストで、初めて合わせたっていう部分があったけど、今回は二回目。きっと、もっとうまく息を合わせられる」


「それに、皆の目を覚まさせるっていう目的もあるからね。あっと言わせるものを見せつけないと」


 そう、奏音も拳を握り締める。 

 二人だからこそ、つまり、誰かと一緒だったからこそっていう部分を見せつけることができれば、養成所内の不和な雰囲気も一掃できる、かもしれない。


「けど、これってさ、紙一重というか」


「うん。私たちのパフォーマンスが合っていないと、やっぱり、合わせられない人と一緒にやっても、みたいな雰囲気が払拭できないからね」

 

 奏音の懸念は私も同じだ。

 私たちのパフォーマンスがうまくいけばいいけど、逆に、ぎくしゃくしたものだった場合、やっぱり、他人に合わせようなんて無理、っていう雰囲気が強くなって、間を取り持つどころじゃなくなる。

 

「だから、できるだけ一緒に練習したいよね」


「うん。でも、問題は、レッスンのない日だよね」


 そこまで日数的には多くないとはいえ、毎度奏音にうちまで来てもらうのはさすがに気が引けるし、むしろ、日数が少ないからこそ、二人でたくさん合わせて練習したいっていう部分はある。

 

「やっぱり、毎日養成所に通うしかないかな」


「スペースってあるのかな?」


 べつに、誰かに隠しておきたいことじゃないけど、他人の邪魔をしたいわけじゃない。

 それに、他の稽古事との兼ね合いもあるし。


「奏音って、養成所以外になにか習っていたりする?」


「え? ううん、養成所だけだよ。詩音はダンスを習っているんだっけ?」


 だから、その日は一緒に練習はできない。

 通っているのは、平日の放課後のことだし、その後ということになるとかなり遅くなるから。さすがに、そんな時間に奏音を外出させられないし、私だって、どこかに出かけると言っても、反対されるだろう。

 

「やっぱり、ビデオ通話しかないか」


「今のところ、それが一番、現実的だよね」


 ただ、若干、通信によるラグがあるはずだから、合わせるのは至難だけど。それでも、前にやったみたいに、できないわけじゃない。

 それこそ、家では個人練習をして、養成所で一緒になったときに、残るか、早めに行くかで、あるいは、別のところ、たとえば、公園とかで合わせていく、みたいなところが、落としどころになるんだろうか。

 

「奏音の家は、歌ったり、踊ったりはしても大丈夫なの?」


「……多分? 少なくとも、私が歌っていて、なにか言われたことはないから」


 それなら、まあ、問題ないのかな。

 とはいえ、一応は、音楽に合わせるわけで、離れていてもその音に合わせる練習はできるわけで、それが完璧なら、後から合わせてもなんとかなるはずだ。あとは、細かいタイミングのずれとか、腕とか身体の角度の不揃いを、合わせられるときにしっかり修正できるかどうか。

 

「じゃあ、一発かまそうね、詩音」


「うん。今度は負けないからね、奏音」


 もちろん、ライバルだってことも忘れたりしないから。

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