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輝きが向かう場所  作者: 白髪銀髪


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オーディション 面接

 ここのオーディションは、最初に面接を、それからパフォーマンスを審査されるみたいだけど、その面接は、個人ではなく、集団で行われるらしい。

 相手と同じ土俵で並んだとき、どれだけ自分をアピールできるのかということを測るつもりだろうか。

 主催者側で――言われたとおりだとするなら――適当に割り振られたグループ分けに従って、それぞれ、四人か五人のグループごと、面接が行われる。一気に十数人の面接なんて、面接官側が対応できないだろうから、これはわかっていた。

 面接、試験。それなら、目立つのが良いのだろうか。印象に残らなければ、審査もなにもない。

 ただ、ビジュアル面なら、私に一つ、アドバンテージはある。いや、二つかな。

 あらためてアピールするまでもない、この真っ白な髪と青い瞳だ。

 ほかの子もハーフなのかどうかは知らないけど、さっきの私と奏音の会話に入ってこなかったから、その線はなさそう。つまり、染めているのか、脱色しているのか……いずれにしても、アピールポイントだと、開き直ってまではいないらしい。 

 もちろん、私は、かつらとかウィッグではないし、カラーコンタクトなんてことでもない。

 奏音も違うと言っていたけど、他の子たちもそうなのかまではわからない。それは、悪いことだとか、そういうことじゃなくて、ただの目立つポイントだってこと。

 目立つために、わかりやすく、髪を染めるというのは、現実的なことではあると思う。最近は、髪とか、頭なんかへのダメージを極力抑えるとか、そんな感じの物も出ているらしいし。

 

「では、順番に、そうだね、それぞれ、一分程度で簡単な自己PRをお願いしたいんだけど」


 試験官のスタッフが私たちを見回す。

 向こうから指定してこないというのは、私たちの積極性とかを見ているんだろうか。さすがに、相手――ライバルを蹴落とす覚悟までを見ているとは思いたくない。

 とはいえ、アイドル養成所のオーディションだ。自己PRの時間がとられるだろうことは、誰でも予想済みだったんだろう。私を含めて、全員が「はい」と手を挙げる。

 これがコミュニケーション能力や協調性を試しているということなら、ライバルに対しても順番を譲るというのも、評価対象になるかもしれないけど。

 そうなると、順番は前でも後でも、ようは、自分で積極的に選んだのだ――運で決めるということを選ぶ、ということを含めて――ということをアピールできれば良いことになる。それから、あとは、その自己PRの内容だ。

 だって、競合した場合、決めるのはじゃんけんとか、くじびきとか、話し合いとかしかないんだし、これで試験が終わりということならともかく、この後にも、実技試験が控えているのだ。ここで時間を無駄にするのはよくないはず。

 打算的に言うなら、ここで身を引くことで、時間を無駄にするつもりはありませんとか、順番なんて関係ありませんとか、そんなアピールも見込むことができる。一応、自分も一番にやりたいというアピール自体はできたわけだし。 


「お先にどうぞ」


 そこまで考えたことが伝わったのかどうかはわからないけれど、私は余裕綽々という態度でもって、手を下げて、気持ち、椅子に深く座り直す。

 ここで引き下がっても、まだ、他の子たちの順番の取り合いが続くようなら、早く決めろと黙って圧をかけることができる。協調性と積極性に関しては、差し引きでゼロに換算されている可能性もあるけど。

 見たところ、このグループでは、私が一番年下に見える。だから、私が引き上がったと考えたのか、他の四人はしばらく視線で牽制しあっていたけれど、どうやら、じゃんけんで決めるということに落ち着いたらしい。

 一番になったのは、髪をツーサイドアップにまとめている女の子で。


「藤朱里、十六歳です。アイドルになるのは、そこが一番輝いている場所で、最高に輝ける場所だからです。同じ事務所のメンバーに対しても、負けるつもりはありません。歌でも、ダンスでも、完璧も目指し、最高のパフォーマンスを届けることにこだわります。よろしくお願いします」


 藤さんは、試験官の人たちに一礼した後、振り向いて、私たちにも笑顔を見せる。

 もちろん、私たちのほうを向いてのことだから、スタッフの人たちにその顔は見えなかっただろう。

 それは、笑顔ではあったけれど、友好的なものなどではなく、自分が勝つという自信、それから、できるものならやってみなさいという、挑発のような雰囲気も乗せられていたように感じられた。

 そんなことで怖気づいたりはしないけど。むしろ、私は俄然やる気になったと、笑って返した。

 けれど、他の二人は雰囲気にのまれたのか、委縮しているのが感じられてしまう自己PRだった。

 なにかしなければと思ったのか、すぐに立ち上がって始めたのは良かったけど、緊張、意識していることが丸わかりのものになってしまっていた。

 それくらいなら、順番を待って、後にすればよかったのに。それなら、少しは落ち着いたかもしれないけど……そういうところも含めての面接試験なんだろうから、仕方がない。

 

「じゃあ、最後にきみもお願いできるかな」


 試験官の視線が一斉に私へ向く。残っているのが私だけだから、当然だけど。

 一番最初に強烈な印象が残り、それに続く二人が委縮して、満足な出来を残すことができなかった。しかも、おそらくは、私よりも年上だろう彼女たちがだ。

 だから、私も、あるいはもっと悲惨なことになるのではないかと思われていたかもしれないけど。


「月城詩音、十三歳です。昔から、アイドルも、歌も、ダンスも、大好きでした。経験は足りていないかもしれませんが、パフォーマンスで負けるつもりはありません。よろしくお願いします」


 自己PRを終えて、私は藤さんに笑顔を向ける。

 もちろん、さっきのお返しだ。その意図は伝わっていたと思う。藤さんのほうからなにか反応があったわけじゃないけど、返された視線と表情、雰囲気でだいたい察することはできる。

 

「はい、皆、ありがとう。それじゃあ、全員の面接が終わった後に、パフォーマンスの審査に移るので、準備をしておいてください」


 パフォーマンス、つまり、ボーカルとダンスのことだ。応募するときにも、その項目は示されていたけれど、とくに、持ち物が必要とは記されていなかった。

 とはいえ、この場に、運動着を持ってきていない人もいなかったようで、全員、荷物を取りに行ってから、案内されて、更衣室へと向かった。

 そこで、運動のできる格好に着替え。


「ねえ」


 藤さんに話しかけられた。 

 こういう、いわば勝負の場で、他人――ライバルに話しかけるようなタイプだとは思わなかった。


「なんでしょうか?」


 とはいえ、相手は年上だ。


「その髪、それから目も、かつらとかじゃないのね」


 さっきの、私と奏音の会話は聞こえていなかった、あるいは、聞いていなかったらしい。

 べつに、ショックとかはない。


「はい。私は祖母の血を四分の一だけ引く、クォーターというやつらしいです」


 それから、いまさら、そのことで攻撃されているとも思わない。されていたとしても、どうとも思わないし。

 それは多分相手にも、私がそれをむしろ武器にしているということは、さっきの面接でも伝わっていることだろう。

 

「そうなのね」


 嫌な気とかはしなかったけれど、しばらく、見つめられてから、はっとしたように、自分が手を伸ばしかけていたことに気がついたのか、藤さんはその手を引き戻して。


「パフォーマンスでは負けるつもりはないわよ」


 それは、今の自己PRでは私に分があったと言っているのかもしれないけど、そんなことは私も気にしない。

 藤さんは、それを私に直接言ってくるだけの自信があるということなのだから。


「私もです」


 そう言って、私たちは視線をぶつけた。

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