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輝きが向かう場所  作者: 白髪銀髪


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私たちの『尊敬している人』

 一番近い先輩ということだと、由依さんということになるんだろうし、番組的にも、アイドルである由依さんの名前を出すのは正しそうに思える。

 ただし、私たちの直接の先輩という意味では、同じカテゴリーというか、立ち位置に、真雪さんもいるんだよね。

 お世話になっているというか、より親身になってくれて、近い距離で接してくれるということなら、由依さんだけど、真雪さんだって、私たちの前に越えるべき壁として、尊敬する先輩としていてくれるわけで。

 とくに、というわけでは決してないけど、スタイル的なところでは、より年齢が近いからこそ、憧れも強い、みたいなところもあるわけだし。

 そうなると、由依さんか真雪さんとまでは絞ることができたとしても、この方向では、この二人から先に進まず、当てずっぽうになる。

 もっとも、この勝負の意図としては、そういう中でもメンバーの息がどれだけ合うのか、ということだとは思うんだけど、それでも、揃えたくはなるよね。もちろん、お題に沿っていることは前提として。

 ほかに、私と奏音の両方に面識があって、尊敬している人と言えば。

 奏音は、私と母に美少女だとか、美人だとか、姉妹に見えるとか、いろいろ言っていたけど、でも、そこまで深い面識があるわけでもないし、それで、尊敬しているっていうのは、ちょっと難しいかもしれない。

 本人がどうというより、視聴者とか、出演者とかに納得してもらえるのかっていう意味で。

 私の母ということだと、なんというか、作為を感じなくもない。

 そうなると――。


「それでは、いきましょう。フリップオープン!」


 私のフリップには『篠原蓉子さん』と書かれていて、奏音のフリップには、『篠原』と書こうとして二重線で消した後に、『しのはらようこさん』と書かれていた。

 ほかの人たちが、同じ事務所の先輩アイドルとか、おそらくは、グループでもよく話題になるんだろう相手を挙げる――この場合、自分を尊敬しているというわけにはいかず、それぞれの答えを合わせる必要があるため、メンバー同士で名前を書く、ということはできない――中で、おそらく、この会場、もしかしたら、番組を観ている人の中にも、わかる人はごくわずかだろう。

 ほかの人たちが挙げているグループや個人は、わりとメジャーな人たちで、そういう感じで揃えようと思えば、有名どころになるはずだから、それは十分にありえることだ。

 実際、尊敬している部分は、この業界にいるなら、誰でも少し以上はあるでしょう、という人たちだし、答えとしても、揃っているグループはいくつかある。

 そんな確認をしていく中で、柏原要さんと白石美緒さんも、あえて、私たちのところは最後に回しているみたいだ。

 アーティストなんていうことでは、全然ないからね。少なくとも、蓉子さん本人に聞いたなら、自分がアーティストであるということは否定されるだろう。

 ともかく、ここに、これだけ、芸能人が集まっていて、私たちしか知らないというのなら、しかも、それが揃って『尊敬している人』として挙げているわけだから、話題にはしやすいだろうね。もちろん、私たちどちらかの親族なんていうことでもない。私たちは通っている学校も違うから、学友ということでもない。その場合、敬称はつけないだろうし。 

 もしかしたら、スタッフの人たちなら、挨拶のときに名前を聞いていたり、うちの事務所のことで面識があったりするかもしれないけど、出演者にとっては、基本的に知るはずもないだろうから。

 もっとも、世の中には『しのはらようこさん』は一人ではないだろうから、そのあたりの擦り合わせのためにも、多少は突っ込んで聞かれるだろう。

 

「それでは、詩音ちゃんと奏音ちゃんですが……これは、同じ人のことなのでしょうか?」


「ぜひとも、話を聞いてみたいですね」


 予想どおりというか、柏原さんと白石さんの視線が、モニターから私たちへと移り。

 

「この『篠原蓉子さん』という相手が、二人とも同じ人を思い浮かべているのかどうかの確認をしたいのですが、二人とも、二人にとってのその人の立ち位置というか、詳しい情報を、付け加えて書いてくれますか?」


 書くのはフリップボードの余白部分だ。

 私と奏音は、二人とも、『通っている養成所のトレーナーとか、マネージャーとか、いろいろ、お世話になっている人』といった趣旨のことを書いた。

 事務所に確認すればすぐにわかることだから、ここまで書いてあれば、間違いないだろう。私たちの事務所、そして養成所に、『篠原蓉子さん』は一人しかいない。

 ある意味、この大六回戦である『連想ゲーム』っぽくもあるような気もしないでもない。


「なるほど。ちなみに、二人は、その人のどんなところを尊敬しているのか、教えてくれるかな?」


 もちろん、トレーナとして。

 声や歌、ダンス、身体づくり……蓉子さんだけということでもないけど、一番お世話になっている。

 それから、似たような意味かもしれないけど、先生として。

 由依さんたちにもそうだけど、学校の勉強まで観てもらうこともあるくらい。しかも、なんだったら、学校の先生より教え方がうまいくらい。

 マネージャーとしても、尊敬というか、感謝している。

 カウンセラーが必要なほどのことはしていないけど、それでも、心の支えの一つでいてくれていることは間違いない。

 蓉子さん本人は、楽しいことをしているときは精神力と体力が無限に湧いてくるんです、みたいなことを言っていたし、それは、私も十分にわかることではあるんだけど。

 

「蓉子さんは、私たちの事務所の大黒柱なんです。社長やプロディーサー、いろんな人が携わってくれているとはわかっているんですけど、その中で、一番身近というか、目に見えるところもすごい人なので」


「美人で、スタイルも良くて、物知りで、勉強も運動もできて……本当、蓉子さんマジ神! って感じです」


 多分、私たちが出演中の番組のことだから、蓉子さんも別の現場で、もしくは、移動中でも、この番組を観てくれていると思う。

 これは生放送だから、画面に蓉子さんのプロフィールが大々的に表示される、みたいなことはない。

 私たちに事前に確認されていたら、そういうこともあったかもしれないけど、許可もとっていないだろうし、そもそも、番組側でも気に留めていなかった可能性は大きい。

 内側にいないと、蓉子さん――に限らず、マネージャー業の人は誰でも同じような感じなのかもしれないけど――のすごさってわかりにくいからね。

 

「えっと、あらためて確認したいんだけど、二人の所属している事務所のアイドル、っていうことじゃないんだよね?」


「はい。本人は、アイドルとして輝くより、人を輝かせるための仕事をするのがなにより楽しいのだと言っていました」


 そもそも、事務所に所属しているアイドルなら、確認しなくても、この出演者であるなら、誰でも知っているはずだろう……っていうのは言いすぎかな。

 でも、蓉子さんが本気でアイドルを目指していたら、本人の実力的には、もう十分に有名になっているはずだから、間違いとは言い切れないと思っている。

 そう答えると、柏原さんと白石さんは、私のところのマネージャーは――、とか、これはぜひともマネージャーさん特集というので一本撮ってみたいですね、なんて、冗談なのかどうかわからないことを言っている。

 蓉子さんなら、事務所の、ひいては、所属しているアイドルとか、生徒のためになるなら、とは言いそうだけど、自分がメインでというのは、あんまり受けそうにない、と思う。あくまで、私の感想だけど。

 


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