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輝きが向かう場所  作者: 白髪銀髪


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『アイドルバトライブ』六回戦 連想ゲーム

 ◇ ◇ ◇



「さあ、名残惜しくもありますが、『アイドルバトライブ』も残すところ二ステージをのみとなりました」


「現状の点数と順位はこちらのスクリーンに映されているとおりですが、次の第六回戦、そして、最終第七回戦の点数は、最後にまとめて発表させていただきます」


 柏原要さんと白石美緒さんのナレーションも、事前の説明どおり。

 途中までは盛り上がるけど、残りが少なくなると、今までの点数から最終結果の予想がしやすくなってしまって、もう一位の目がないな、とか、もう一位確定だな、なんていうことが起こらないように。それ以降の勝負がしらけるからね。視聴者的にも、出演者的にも。 

 少なくとも、出演者である私たち側には、正式には、どこが勝つことになっているとは言われていないわけだから。

 もっとも、今までの点数を覚えていれば、合計するだけだから、順位を知るのは簡単なことではあるわけだけど。ようするに、演出だね。

 

「いよいよ大詰め、第六回戦の勝負は『以心伝心 連想ゲーム』!」


「これからこちらでお題となる言葉を提示します。その言葉から連想されるものを、それぞれ、お手元のフリップに書いてもらいます」


 たとえば、お題が『赤い食べ物』だったら、『リンゴ』とかって書くわけだね。

 

「その答えが、グループ内全員のものと一致していたなら、一点入ります。しかし、一人でも違っていれば、〇点です」


「ユニット間ではその連携、絆の力が大切ですから、今回はその、どれだけ相手のことを想うことができているのか、を競っていただきます」


 当然、ユニット間での話し合いや、身振り手振りは禁止。

 これは、ユニットの人数が少ないほうが有利になるかもしれない。なにせ、全員の答えを一致させる必要があるということは、少ない人数のほうが簡単なはずだから。

 とはいえ、今までの勝負の中には、人数が多いほうが有利である勝負もあったわけだから、どっちもどっちということなのかもしれない。

 

「ちょっと第四回戦に似てるね」


 奏音こっそり耳打ちしてくる。

 こっちは、絵を描く能力は必要としないし、最初(つまり、相手の示した言葉の最後)の文字がわかるわけでもないし、お題が出るし、内容としては別物と言って良いだろうね。

 

「やっぱり、水着である必要はないと思うけどね」


「あはは……」


 とはいえ、逆に、水着である必要のある競技ってなに? と言われても困るけど。

 水上のアスレチックはやったし、まさか、競泳なんてやるはずもないし、鬼ごっこみたいに極端な偏りが出そうな勝負とかは避けるだろうし。

 バラエティ番組でよくある、失敗したり、間違えたりすると水の中にどぼんのクイズ勝負とか?

 

「ほら、この炎天下、外で勝負するのに涼しい格好のほうが嬉しいから。体調とかにも気をつけないといけないし」


「まあ、そういうことにしておく」


 アイドルの水着姿が見られるというだけで、稼ぐ視聴率もあるかもしれないし、視聴率は大切だ。あるいは、それ水着でやる必要ある? というツッコミを視聴者にさせるためのものかもしれない。

 奏音には苦笑されたけど。

 私と奏音の立つ間に、スモークガラスの板が差し込まれる。他のユニットのメンバーごとの間にも。

 これで、お互いの様子はわからなくなるから、相談もできないということだ。

 

「お題は全部で十問あります。揃わなかったらその場で脱落、ということはありません。全員、十問こなしていただきます」


「それでは、さっそくいってみましょう。第一問は、こちら!」


 スクリーンに示されたお題は『アイドルグループといえば』。

 これは、サービス問題だろう。例題として使われても良かったくらいだ。

 シンキングタイムの三十秒を待たず、出演者全員が書き終える。

 

「それでは、答えを見ていきましょう」


「フリップオープン!」


 開示されたそれぞれのフリップには、それぞれのユニット名が。

 たとえば、『リリカルパッション』であれば、『リリカルパッション』と書いてあるし、私たちなら『ファルモニカ』と書かれている。

 まあ、これはアイドルにやらせたなら、当然そうなるよね、というものだから。

 むしろ、ここで自信を持って自分たちのグループを書かないようであれば、そもそも、アイドルをやろうとは思わないだろうね。

 

「ということで、第一問は全員一致です」


「これって、すごいことじゃないんですか?」


 驚いているのは司会の二人だけで、参加者のアイドル側は、とくに驚いている素振りは見せない。

 メンバーと仕切りがあるというのはあるだろうけど、アイドルをやっているなら当然、という想いはあるんだろう。

 

「これは、次からも期待が持てますね。というわけで、どんどんいきましょう」


「第二問目はこちら!」


 次のお題は『可愛いものといえば』。

 これってさあ……。

 いや、奏音が書くものは、予想とかじゃなくて、完全に理解できる。おそらく、奏音は『詩音なら私(奏音)の書くことはわかるでしょ』と考えているだろうことも。

 でも、これは、いつもの、養成所内でのこととかじゃなくて、放送されてる番組内のことなんだよね。

 もう、あれだよね。奏音の答えだけじゃなくて、今浮かべているだろう表情まで透けて見えるくらいだよね。

 問題は、どこまで一致させる必要があるのかということ。

 

「すみません。質問いいですか?」


「おっと、詩音ちゃんからなにかあるみたいですね」


 お題の答えに直接かからない質問であれば、させてはもらえるらしい。

 もちろん、その質問と答えは全員に共有されるわけだけど。


「これって、パートナーの答えと、一言一句、完全に一致していないといけないんですか? たとえば、ひらがなで『みかん』と書いた場合と、カタカナで『ミカン』と書いた場合とか、『山田太郎』と書いた場合、二人の思い浮かべた人物が同姓同名の別人でも、あるいは、『山田太郎さん』『太郎さん』みたいな場合でも、答えは一致している、ということになるんでしょうか?」


「なかなか、鋭いところをついてくるね、詩音ちゃん」


 柏原要さんはスタッフのほうを振り返る。

 番組――動画的には、柏原さんが私にマイクを向けて、私の質問が浮かんでいるところで止まっている。

 そして、柏原さんの振り返った先では、スタッフの人が頭上で大きな丸を作っているのが見える。

 

「これは、大丈夫です。同一のものだという確証が得られたなら、同じ答えだったと認められます。ただし、その場合、確実にそうだとわかる説明を付け加えておいてくださいね。大丈夫かな、詩音ちゃん」


「はい。ありがとうございます」


 その場合、と言っているけど、ようするに、全部そうしろということだよね。万が一を考えるなら。

 ともかく、回答は得られたので、答えをフリップボードに書き込む。

 

「それでは、あらためて、答えを見ていきましょう。一斉にフリップをオープンしてくださいね。それでは、答えをどうぞ!」


 おそらくは、最近一緒に行ったのであろう、某テーマパークのマスコットが書かれていたり、とある地方のご当地ゆるキャラが書かれていたり、あるいは、アニメなのか、ゲームなのかのキャラクター名が書かれていたり。

 よくそんな膨大な選択肢の中から選ぼうと思ったな、とか、それでいて良く当てるなあ、と感心したりする中。

 奏音のボードに書かれていたのは『詩音』という名前。ご丁寧に、ハートまで書かれているけど、それはお題とは関係ない。

 もちろん、私も――思うところはあるにせよ――『月城詩音』と書かせてもらった。

 これって、羞恥心に耐えるゲームだったっけ?

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