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輝きが向かう場所  作者: 白髪銀髪


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202/313

笑顔が素敵なところです

 もっとも、今回は、審査員に届かなければ、意味はないわけだけど。

 意味がないと言うと誤解されるかもしれないけど、一応、番組内の勝負ではあるわけだからね。

 もしかしたら、今後――この番組の放送内という意味で――私へ向けられる視線は厳しくなるかもしれない。美少女然としているのかどうかというところに、注意が向いて。

 でも、それはそれで好都合だ。結局、私に注目が集まることに変わりがないわけだから。

 審査員の注目は、つまり、カメラの注目。それは、番組自体の主役になるチャンスかもしれない、ということ。

 もちろん、ほかの参加者も同じようにアピールするわけで、揃いも揃って美女美少女揃いだから、私だけじゃない、みたいな感じで解説されて、結局はあまりアピールが上手じゃなかった、なんて見られるかもしれないけど。

 でも、先のことはわからないし、自分で美少女だと言うほどの相手のことなら、本当に言うほどのものなのか見極めてやろう、なんて気持ちが湧くものだ。もともと見てくれているファンは言うに及ばず、新規のファンを増やすチャンスにもなる。

 番組に出ているのは、そして、勝ちを目指すというのは、自分自身のキャリアのためでもあるけど、よりたくさんのファンを作るためだ。ファンが増えれば、仕事が増える。つまり、私のアイドル活動が捗るということ。

 たしかに、私たちは参加者の中では最年少で、大人っぽさとか、色気とか、経験からくる知識だとか、もともとのファンとか、そういったものでは負けているだろう。

 だからこそ、怖いもの知らずに、堂々としていられるという部分もある。

 まず、アイドルになっている時点で、美少女というか、容姿に関しては一流であることは間違いないわけだから、それ以上の加点と言われても、はっきりとした差としてはわからないかもしれない。

 他の人が、歌が得意です(加えて、美少女)とか、作詞作曲をしています(加えて、美少女)とか、演技に自信があります(加えて、美少女)なんて言っているところに、私は美少女です(とくに、加えるものはないです)と言っているようなものだから、むしろ、加点がないかもしれない。

 ほかにも理由はいろいろあって、アピールする点としては不十分と判断する人は多いだろう。ただ、自分を美女、美少女だと思っていない人は、この中にはいないだろうけど。少なくとも、平均的な容姿よりは、かなり上であるという意識はあるはず。実際、それは間違っていない。 

 ただ、わざわざ、それを宣言することのインパクトはあるはずだ。

 実際、名前のポップに『特技:美少女』なんて一緒に表示されていたら、面白いことに間違いはないと思うから。

 ありきたりなことを言っても、印象には残らないからね。

 ミスコンに勝つのは、結局、一番印象に残った人になる。参加者の人数と、評価がされるのは最後だということを考えると、ふとした拍子にわかりやすい、というのは、かなりの得になる部分だろう。

 なにせ、見るだけでわかる。もちろん、わかってもらえるだけのものが必要なのはそのとおりだけど、たとえば、ずっとそうだとわかるだけの演技をし続けるのは大変だし、歌い続けるわけにもいかないだろう。格好にしても、全員水着だから、特別目新しいとか、目立つというのも、よっぽどでもないと難しいはずだし。

 審査をするのが、審査役の人たちだというのはそのとおりだけど、視聴してくれている人たちはどうかな。

 もちろん、それぞれ、推しはいることだろう。自分の推しともなれば、それだけで、いっそう輝いて見えるものだ。私だってそうだから、間違いない。

 誰々のほうが可愛い、誰々が一番に決まってる、誰々に負けている部分なんてまったくない。そう思うことだろう。

 でも、それは結局、比較対象として私も見てくれているということ。見てくれない、見る気もない人は、ファンにはなってくれたりしないからね。まず、知ってもらって、意識してもらうことが大切だ。

 見てくれればわかるはず、そういう意識は、アイドルなら誰でも持っているもので、見てもらえないならまだしも、見てもらっても魅力がないと判断されるなら、自己研鑽が足りないということ。でも、それも批判の中から余地を見出せるということで、結局はプラスにしかならない。もちろん、納得してくれたなら、それはそれで、最良の結果だと言えるわけだからね。

 結局、私たちはずっと、どっちが可愛い? どっちが上手い? そう言われ続ける競争の世界にいるんだから。


「――はい、参加者の皆さん、ありがとうございました。皆、本当に魅力的で、選ぶこちらの身にもなってもらいたいですね」


「本当に。もう、全員、一番で良いんじゃないですか?」


 そうこうしているうちに、全員のアピールタイムが終わってしまって、そんな軽口を交わす、柏原要さんと白石美緒さん。

 番組的には、ここでCMに入るらしい。採点というか、審議にはそれなりに時間がかかるし、その間、ずっと、私たちが笑って手を振っているところを見せていても、ということだろう。

 せいぜい、一分とか、二分とかだから、裏に引っ込んで休む、なんてことにはならないけど。


「二十七人分ですからね。皆さん、採点も難航しているみたいです」


「私も、点数と言われても、難しいと思います。皆、とっても可愛いし、それぞれ、違った魅力がありますからね」


 私は終始、カメラからカメラへと、笑顔を振りまく。まあ、私に限った話でもないんだけどね。

 やっぱり、美少女と言うからには、笑顔を見たいと思うから。

 好きなところはどこですか? はい、笑顔が素敵なところです。そんな問答がありふれているくらいには。

 

「はい。お待たせしました。審査員の皆さんから、採点が出揃ったようです」


「こんなに可愛い皆さんに順位をつけるという大変な役目をありがとうございました。こちらには、止血バンドや消毒液の準備もありますから、お入用の場合はぜひ、言ってくださいね」


 軽快? なトークで、司会のおふたりが場を盛り上げる。

 ちなみに、それぞれ、誰がどういう点数をつけたのか、ということは公表されない。あくまで、集計された、最終的な順位と点数が発表されるだけだ。

 一応、採点者へのパッシングを避けるためとか、理由はあるんだろう。ファンの人から、なんでそんな点数をつけているんだふざけるな、なんていう、抗議が、番組ではなく、個人宛に来ないとも限らないわけだからね。トラブルをできるだけ避けたい、というのはあるんだろう。

 それはそれとして、裏側を聞いてしまっている身としては、順位調整のため、なんて思わないこともない。

 一応、視聴者の反応もコメントで確認できるとはいえ、あくまで、非公式のものだから、参考とか、気にする必要はない。そもそも、集計もしていないだろう。視聴者の中で、有志の方がしているということはあるかもしれないけど。

 でも、それは、SNSとか、掲示板とかのものと変わりはないだろうから。

 ともかく。


「一位に輝いたのは、この方です!」


 ドラムロールの音が鳴り、背後のスクリーンに大きく表示されたのは、蓼科陽菜という名前。

 蓼科陽菜さん。『リリカルパッション』のイメージカラー黄を担当している、金髪を片方だけ、サイドアップ気味にまとめている美人。

 モデル体型、というほどではないけど、水着映えはする、綺麗な人。

 好きなことは配信活動で、グループとしてもの以外に、個人的なチャンネルも持っている。残念ながら、私はまだ見られていないけど。

 

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