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輝きが向かう場所  作者: 白髪銀髪


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『夏だ! 水着だ! アイドルバトライブ!』 出演依頼

「詩音さん、奏音さん。すこし、お時間良いでしょうか?」


 朱里ちゃんたちのデビューが目前に迫っているとはいっても、私たちには私たち『ファルモニカ』としての仕事がある。

 あるいは、私か、奏音か、個人への依頼ということもあるかもしれない。

 

「なんでしょうか、蓉子さん」


 個人的には、奏音とのユニットとしての仕事をしたいけど、個人への出演依頼でも、それがまともなものなら、積極的に受けていきたいとは思っている。


「少し先のことではあるのですが、おふたりの学校が夏休みに入ってからの八月ですね、『夏だ! 水着だ! アイドルバトライブ!』というイベントへの出演打診がきています」


 内容としては、どこかのビーチに作られた特設ステージでの、ライブとか、パフォーマンスとか、あとは、内容がsecretになっている勝負? をするようなイベントらしい。

 

「えっと、それって水着で参加しないといけないんでしょうか?」


「おそらくは、集客のための運営側の策ではあるのでしょう」


 水着はこの前のトレカの撮影で使ったばかりだから、用意すること自体には問題はない。

 由依さんや真雪さんは、グラビアアイドルとして、水着での撮影もしていることは多いから、事務所としてもとくに問題はないんだろう。

 もちろん、私だって、仕事というのなら、多少、恥ずかしさはあるけれど、否はない。


「内容としては、八組くらいのアイドルグループが集まって――」


「参加します!」


 蓉子さんの説明に被るように表明すると、蓉子さんには苦笑されて、奏音には、肩を竦められて、ため息までつかれた。

 

「詩音ってさあ、本当に、心配になるよね。アイドルの写真集あげるからって言われたら、知らない人に平気でついていきそう」


「そんなことしないよ……多分」


 奏音が、最後なんて? と見てきたのは無視して。


「だって、いろんなアイドルが集まるんでしょう? 八組ってことは、最低でも二十人くらいはいるだろうし、ほとんどが先輩だよ? むしろ、チケット代でも払って参加したいくらいだよ」


 それが、参加者側ってことは、チケットの争奪戦どころか、チケット代すら払わず、むしろ、出演料までもらって、より近くでほかのアイドルと交流する機会があるなんて、正直、なにかの詐欺かと疑うくらいの話だ。

 

「でも、ステージ衣装じゃなくて、水着だよ? いいの?」


「それって、普段は見られないスペシャル衣装ってことでしょう? むしろ、奏音は反対なの?」


 依頼があった仕事という点を差し引いても、得しかないんじゃない?

 奏音は、わずかに眉を寄せて。


「バトライブって言っているからには、バトル――他のグループと戦うとか、競うってことになるんじゃないの?」


「それこそ、いつも養成所でやっていることだよね」


 私たちの所属している養成所は、養成所内の順位を、テストの評価などから決めていて、それがデビューや新曲の指針になっていたりする、らしい。

 ちなみに、現状では、ほかの参加アイドルは不明ということだ。参加の打診をして、了承の返事があったグループが参加することになるんだから、私たちのように、まだ、返事をしていないグループがあることを考えたなら、事前に告知するにしても――集客を考えたなら、するはずだけど――それらが確定してから、ということになるんだろう。

 チケットの販売はもう始まっているらしいから、なんとも、大変だとは思うけど、そこは、イベント運営側の、そして、買う側のファンの判断だから、私たちに口を出すことのできる話でもない。

 

「それに、この前のトレカの撮影だけで今年の水着を終わらせるのも、もったいないと思うでしょう?」


 レッスンやら、ライブやら、イベントやら、ありがたいことではあるけど、私たちが遊びに行くような時間は、ほとんどない。

 それも、水着――つまり、プールだとか、海だとか、少し遠出が必要となれば、なおさら。

 せっかく、買ったものだ。使わずに仕舞ったままでいて、サイズが合わなくなって着られなくなりました、なんてことも、ないとは言えない。アイドルとして、体型の維持には気をつけているのは当然として、それでも、いまだ成長期の私たちとしては、普通にしていても大きくなるわけで。

 

「それは、まあ、思わなくもないけど」


 経費とはいえ、費用は費用。その分、稼ぐことのできるときに稼ぐに越したことはない。私たちのお給料にも直結する話でもあるわけだから。

 

「それって、『LSG』とか、『iシナジー』は、参加するんですか?」


「いえ、お二組はべつの仕事が入っていますので、当事務所から参加できるのは『ファルモニカ』のみということになります」


 そうなのか。

 とくに『iシナジー』は、デビュー前だということもあるわけで、前倒し、というわけにはいかなかったのか。せっかくのイベントとはいえ。

 デビュー前なんて、やることがたくさんあるからね。デビューしてからは、さらに、だけど。


「詩音。今、由依さんたちの水着姿が見られないのは残念だなって思ったでしょう?」


「だって、由依さんと真雪さんはグラビアでも見たことがあるけど、六花さんとか純玲さんは見たことないし。あっ、トレカじゃなくて、直接っていう意味だけど」


 それから、朱里ちゃんとみなみさんも。

 一応、トレカのイラストというか写真は、今できているものは全部見せてもらっている。私たちだけじゃなくて、所属メンバー全員分を。

 でも、それはそれで良いものだけど、また、べつの良さがあるから。 


「バトル、というからには、順位を決めるということですよね?」


「はい。優勝した場合、特典もあるみたいですね」


 なんだろう。CMの出演権とかかな? それこそ、そのビーチの宣伝の。

 いや、イベントを行う時点で宣伝されているようなものだから、それはないのかな。

 あるいは、ドラマ出演権とか、協賛会社の仕事を担当できるとか、ともかく、アイドルグループを複数集めて、その中で勝ったとなれば、少なくとも、名前は売れることだろう。

 衣装での参加ではない時点で、ライブが勝負の内容、というのは、かなり線が薄いと思うけど。

 アイドルを集めておいてライブをしないというのも、どうなんだろうとは思うけど、アイドル観なんて、人それぞれだから。

 それに、順位と言われても、CDの売り上げ、みたいに目に見えるものでもないだろうし、養成所でのテストみたいな感じになるのかな?

 

「奏音はどう?」


「もちろん、参加するよ。屋外ステージで思いっきり歌えるんでしょう?」


 まあ、どちらかといえば、ほかのアイドルグループとの差というか、私たちの、対外的な現在地を確認できるというほうが、大きいとは思うけど。

 

「まあ、水着でっていうのは、ちょっと恥ずかしいけど、詩音の恥ずかしがる――もとい、楽しそうなところが見られるなら、それだけでおつりがくるし」


「そこまで言ったら、もう誤魔化しても意味ないよ……」


 奏音は誤魔化すつもりもないみたいで、裏なんてなさそうに笑っている。

 

「では、おふたりは参加ということでよろしいですね?」


「はい」


 蓉子さんに向かって、二人で頷く。

 

「当日、スケジュールの都合上、私もずっとおふたりに付きっきりというわけにはいきません。もちろん、問題があれば、いえ、気になることがあれば、連絡をくださればすぐに駆け付けますが」


 それは仕方がないというか、『LSG』も『iシナジー』もべつべつで仕事があるというのなら、当然というか。

 さすがの蓉子さんも、分身まではできないだろうし、事務所のアイドルに仕事があるというのは良いことだ。


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