表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輝きが向かう場所  作者: 白髪銀髪


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

179/313

水着でファッションショー?

 どうせ、今回のトレカの撮影にしか使わないから。

 サイズだって、来年になればもっと育っているかもしれないし、同じものが着られるかどうかはわからない。アイドルとして、たとえ、グラビアなんかが主ではなくても、体型の維持には気を遣っているから、セパレートのものであれば、来年以降にも――すくなくとも、来年には同じものを着ることもできるかもしれない。

 経費で落ちるとはいっても、負担がないに越したことはないだろうから。

 まあ、ファンとしての目線で言うのなら、違う水着(たとえ、それが色違いというだけであっても)のほうが、嬉しい。カードにするということだから、集める苦労を無視するのなら、だけど。

 

「じゃーん、どうかな、これ」


 奏音が見せつけてきたのは、青地に白いフリルのあしらわれたセパレート。

 顔面天才の奏音が着るということで、大抵のものは、よく似合うだろう。

 

「よく似合ってるよ、奏音。可愛い」


 お世辞なんかじゃなくて。

 奏音のイメージからすれば、相当に地味なものでもなければ、どれでも似合うわけだから、奏音が好きな、気に入ったものを選べばいい。

 

「誰にでも言ってるんでしょう」


「そんなことないよ。奏音だけだよ」


 奏音としか、水着を選びに来たことはないからね。

 ついでに言えば、誰かと、水着で遊びに行くようなこともしたことはない。それは、水着に限った話でもないけれど。

 

「由依さんとか、真雪さんとか」


「由依さんも、真雪さんも、どっちかって言うと、綺麗系じゃない? 可愛いと言うには、畏れ多いというか」


 もちろん、この場合の畏れ多い部分というのは、身体の起伏のことだ。

 可愛いでも、綺麗でも、心の栄養であることには違いないから、そして、言われたほうも喜んでくれるとは思うけど。


「じゃあ、次ね」


 次に選んだのは、白のトップスに青いホットパンツタイプのもの。

 それから、黄色のビキニと、赤と白の非左右対称のもの、空色のワンピースタイプのもの。

 

「どれが良かった?」


「もう決めてるんでしょう?」


 はっきりいって、似合う似合わないで言えば、どれも似合っていたから問題はない。

 だから、奏音の好みで決めればいいとは思うけど、試着しているときのテンションを見ていれば、どれが気に入ったのかなんてことは、わざわざ、私から言うまでもないことだ。

 

「詩音の好みで決めたいんだけど?」


「私の好みは奏音の好きなやつだよ」


 さすがに、じゃあ、全部、なんてことは言わないだろう。

 

「……だったら、二番目に選んだやつかな。多分、そのタイプの水着はあんまり選ばれないと思うから。奏音が気に入っているならそれで」


 予想では、だけど。

 由依さんや真雪さんにどんなタイプの水着が合うのかというのは、想像しやすい。いくらでも、サンプルがあるから。

 六花さんや純玲さんは、それほどサンプルが多いわけじゃない。まったくないということもないけど。

 朱里ちゃんやみなみさんは、奏音が選びそうなものは選ばないと思う。

 

「詩音が言うならそうしようっと。じゃあ、次は、詩音の番だね」


 奏音と合わせる必要はないと言われている。

 あとは、よっぽど露出が多いなんていうことでもなければ。


「なんでも似合うと思うけど、やっぱり、ボーダーよりは、単色系のほうが良いかな」


 奏音は、自分のものを選ぶときよりも真剣に見繕っている気がする。

 

「白とかも良いけど、それよりは、色がついてたほうが映えるよね。この、セーラータイプの襟がついてるのとか」


「それだと、単色じゃないけど」


 トップスの襟の部分は白と空色のチェックで、スカートは白、中――見えている紐の部分は青色だ。

 

「ちょっと着てみて、詩音」


「じゃあ、ちょっと待ってて」


 店員の女性に断りを入れてから、試着を済ませる。

 

「どうかな?」


「やっぱり、私の見立てに狂いはなかったね」


 奏音は満足そうに、うんうん、と頷いている。

 まあ、似合っているっていうことだろうから、問題はないんだろう。


「じゃあ、これにしようっと」


「え?」


 しかし、それに決めたと言ったところ、奏音が驚いたような声を上げる。


「似合ってたんじゃなかったの?」


「それは、もちろん、詩音ならなにを着ても似合うけど」


 それなら、問題はないんじゃないの?


「じゃあ、今のはなに?」


「いや、せっかくだし、詩音の水着ファッションショーをもうちょっと見てみたいなって」


 そんなの、着られる水着に迷惑でしょう。

 もちろん、試着をしてもかまわないわけだから、迷惑なんてことはないだろうけど、決めたものがあるなら、ほかの試着をする時間とかも無駄になるし、試着だって、なるべく、ほかの人の手が入っていないものに決めたいでしょう?

 ほかの選ぶ人にはわからないとか、そういうことじゃなくて、気分的な話にはなるけど。

 

「そんなことをしている時間があったら、レッスンしようよ」


「水着で?」


 奏音が馬鹿なことを――。


「あの、蓉子さん。さすがに、水着でライブをする、なんていうことはないですよね?」


 まさか、とは思うけど。

 

「心配なさらなくても、そのような予定は今のところありません」


 そうだよね、と私がひと息つくのを見計らってか。


「もっとも、詩音さんがなさりたいというのなら、一応、前向きに検討させてもらいますが」


「いや、いいですいいです」


 茶目っ気たっぷりに微笑む蓉子さんに、慌てて否定する。

 どこかの海岸の音楽フェスとか、夏場には結構開催されている。

 私たちにはいつものステージ衣装があるから、それで賄うことはできるわけだけど、季節バージョンというか、そういった感じの企画が、ないとも限らなかったから、一応、確認しただけだ。

 もちろん、出演の依頼があるとか、そういうことなら嬉しいけど、それも、水着でやることかなあ? とは思う。いつもの衣装が暑そうというのは、そのとおりではあるけど。

 一応、夏バージョンもあるみたいだし。

 もちろん、水着での出演依頼、ということなら、考えるけど。


「えー。可愛い格好してライブする詩音のこと見たい」


 奏音が不満そうに頬を膨らませるけど。


「一応言っておくけど、私が出るってことは、奏音も一緒に、揃いの衣装で出るっていうことだからね?」


 私たち、二人で『ファルモニカ』なんだから。

 

「あっ、蓉子さん。その、勝手に決めてしまった感じになってしまいましたけど、大丈夫でしたか?」


 この場での責任者は蓉子さんになっている。

 もしかしたら、私たちのイメージ戦略的に、この水着ではまずい、ということがあるかもしれない。

 一応、自由に決めてもらってかまわない、とは言われているけど。

 それから、蓉子さんの意見も聞いてみたいところだ。蓉子さんも、プロデューサーまではさすがに兼任してはいないけれど、広報戦略の一端を担っていることは確かなわけだから。

 

「はい。おふたりとも、よくお似合いでしたよ。それに、ご自身の気に入ったもので臨んでいただくほうが、気分もよく撮影できるでしょうから、イメージという意味では、間違いないかと」


 もちろん、だからといって、この場で写真を撮る、なんていうことをしたりはしない。

 サイズ的にも問題はなかったから、蓉子さんに私たちの二人分を渡す。やっぱり、これが経費で落ちるっていうのは、信じられない気持ちもあるけど、そういうものだということなんだから、ありがたく受け取っておこう。

 

「撮影って、海とか、プールに行くと思う? それとも、水着でも、室内かな?」


「どうだろう。時期が時期だけに、ビーチを借り切って撮影、なんていうのは、難しそうだけど」


 由依さんたちに聞いたところ、ファッションモデルの場合、季節ものの服の撮影は、半年とか、そのくらいずらして行われるらしい。

 たとえば、冬とかにでも、水着の撮影をするとか。

 その時期じゃないと貸し切りって言うのが難しいのはわかるけど、過酷だよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ