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輝きが向かう場所  作者: 白髪銀髪


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トレーニングの注意点とか、心がけとか……やっぱり結論は同じ

「お風呂の後とかに、自分でマッサージをするというのも効果的よ。なにも、難しいことをしようということじゃなくて、自分の手で揉んでいくとか、簡単なことでいいの」


 さすがに、両親にマッサージをしてくれ、なんて頼めない。

 むしろ、それは、中学生の娘である、私のほうから、つまり、両親の労いという意味で言い出すべき言葉だろう。

 

「それから、言うまでもなく、わかっていると思うけれど、間食とか、暴飲暴食の類は絶対にダメよ」


「はい。心しておきます」


 身体づくりのためにバランスの考えられた食生活を心がけようというときに、間食だの、暴食だのなんて、考えられない。

 もともと、そういうのはあまり、いや、ほとんど、しない。しいて言うなら、家での勉強の途中に頭の働きを良くしようと、糖分を摂ることはあるけど。

 

「それからね。トレーニングというのは、やりすぎても逆効果なのよ。家できる程度の、軽いもの、それから、体力づくりのためのランニング程度なら、毎日の習慣としても良いけれど、たとえば、ジムに通うみたいな鍛え方をするつもりなら、週に二回か、三回か、そのくらいに抑えないと意味がないわね。事務所のレッスンでもしているわけだから」


 なるほど。


「ありがとうございます、気をつけます。その、ちなみになんですけど」


「私のトレーニング計画が知りたいのね」


 現状、グラビアが主な仕事のアイドルでも、トレーニング自体はあまり変わらないみたいだし。 

 まさに、今、売れっ子なのかどうかまでは関係なく。


「はい」


 そこまでストレートに気づかれていたら、誤魔化すのは馬鹿に思える。

 真雪さんはこの道の先達。私にも、身体を鍛えること自体のノウハウはある程度あるけれど、アイドルとしての鍛練ということに関して、真雪さんのほうが遥かに熟達していることは間違いない。

 つまり、機能美と、装飾美についてということ。

 たとえば、女性アイドルの身体が女性ボディビルダーみたいでは、それはそれで美しさという概念ではあるんだろうけれど、おそらく、アイドルという意味では、その範囲外になることだろう。

 とはいえ、その自身をより良く、美しく、綺麗に、魅せることについては一流だから。


「その、運動能力という意味ではいろいろとしているのですが、真雪さんのようにきれいになるのには、どういったことが必要なのかとお聞きしたくて」


「あら、詩音ちゃんにそう言ってもらえるなんて、光栄ね。でも、ご期待に沿えるかと言われたら、難しいわね。私が気をつけていることは、しっかり食べて、よく運動して、夜更かししたりせずにちゃんと寝ること。それだけだもの。食事も、運動も、特別なことはなにもしていないわ。まあ、少し、カロリーは抑えめにしようなんてことは気にかけているけれど、それは誰でも同じでしょう?」


 まあ、個人差はあれど、女の子なら、一度は通る道だ。


「つまり、規則正しい生活というところかしら。私たちの場合、仕事のスケジュール自体が不規則だから、なかなか難しいのだけれどね。あ、でも、私の場合、夜遅くまで、みたいなことはないわね」


 それは、未成年だからとか、学生だからとか、そういった条例だとか、法律が関係してくる話だろう。

 

「それから、休むときはきちんと休むこと。詩音ちゃん、まさか、事務所でのレッスンが終わって帰ってからも、激しいトレーニングなんてしていないわよね?」


「していないです。だから、こうして由依さんにトレーニングの方法を聞いているんじゃないですか」


 そうだったわね、と由依さんがころころと笑う。

 

「私の解答はそんなところだけれど、参考になったかしら?」


「はい。貴重なお話だったと思っています」


 これがアイドル目線だということなんだろう。もちろん、個人差があるのは当然だから、絶対の正解なんてないけれど、指標にはなる。そもそも、そんなこと、なんだって同じだ。

 一般論はあるだろうけど、由依さんには由依さんの、私には私の、それぞれに合った方法がある。それを見つけるのは、時間をかけて、積み重ねていくしかない。


「家に帰った後に、身体のケアみたいな感じでできるトレーニング、あるいは、ストレッチということなら、私じゃなくて、蓉子さんに聞いたほうが良いかもしれないわね」


「え? 蓉子さんって、そんなこともご存知なんですか?」


 たしかに、由依さんたちに指導を始めたのも蓉子さんだと考えると、そういう、ノウハウも持っていることに不思議はない。

 

「ことアイドルの育成についてなら、蓉子さんは一流以上よ。ほかの面を知らないだけなんだけれどね」


 それから、少なくとも、マネージャーとしての腕前も同じくらいだろう。

 おまけに、今はまだ大学からのインターンという立場だということは、卒業論文なんかも忙しい時期かもしれないのに。 


「なんだか、考えると考えるだけ、蓉子さんにお願いするのに気が引けてくるんですけど」


 仕事多すぎてパンクしない? 大丈夫なのかな?


「トレーナーさんとか、もちろん、社長とも業務分担はできているみたいだし、大丈夫じゃないかしら」


 スタッフが蓉子さんだけではないことは知っている。

 事務所――養成所への入所試験に立ち会ってくれていたのは、蓉子さんだけじゃなかったし、それは、今受けているレッスンについても同じだ。 

 たしかに、蓉子さんは歌も、ボイスも、ダンスも、どれもこなせるけれど、他のトレーナーの方もいるわけで。

 それでも、由依さんが蓉子さんを勧めてくれるのは、もちろん、優秀で、私たちのスケジュールを全部把握しているからということもあるんだろう。

 私たちのスケジュールを把握、管理してくれているということは、無理のない範囲で、アドバイスをくれるということ。そうすれば、たとえば、身体を壊す、みたいなことを回避することもできる、かもしれない。少なくとも、その対策はできる。

 

「私も、前に蓉子さんに聞いてみたことがあるのよ。心配になって」


 その気持ちはすごくよくわかる。私だって、現在進行形で、その気持ちだから。


「でも、本人は息抜きもすごくできてるし、全然元気で、問題ありません、って言うのよ。それに、実際、蓉子さんが風邪ひいたり、怪我したり、ミスしたり、なんてところ、見たことがないのよね」


 マネージャーとしては、ミスなんて他人には見せないということもあるんだろうけど、きっと、実際に、ミスにまで発展したことがないと言いたいんだろう、由依さんは。

 

「多分、詩音ちゃんたちのデビューまでの段階も、組み上がっていたりするんじゃないかしら」


「そうなんですか?」


 なんというか、それは聞いても、そんなことありませんよ、みたいな感じで躱される未来が見える。

 目指すべき先が、あるいは、道筋が見えているほうが不安は少ないかもしれないけど、今はまだ、そこを意識させる段階ですらない、ということで。

 それは、私たちを軽んじているわけじゃなくて、むしろ逆。それなら、私たちが個人でやっておくと良いことというのも、当然、考えられているはずだ。もしかしたら、近く、普段のトレーニングの後にでも、諸注意とか、まとめとかの形で、通達されるかもしれない。

 もちろん、全部、可能性、推測の話だけど。


「詩音ちゃんは心配いらなさそうだけれど、いつまでも、表に出る自信がなくて、なんて言っていてはだめよ。お客さんに見てもらうことでできる成長というのもあるから。いつだって、自分が一番、そう自信を持っていること」


 なにより、信頼できる、その道のプロの組んだスケジュールだ。

 敷かれたレールを外れることなく、見事に走り切ることも、実力の一つ。

 

「はい。ありがとうございました、由依さん」


 

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