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公爵令嬢の社交界事件

作者: ララさ

※誤字脱字が大量発生している可能性があります。ご注意ください。

朗らかな春の日に初めてあなたと出会った。

「これからよろしくね」

そんな風にはにかみながら、手を差し出すあなたに一目惚れした。

「もちろんですわ。これから婚約者として末永くよろしくお願いいたしますね。」

私は幸せ者だ。あなたと結婚できるのだから。


 ◆ ◆ ◆


・・・・10年後

私は16歳になった。今も王太子殿下の婚約者である。

そして、今の私は社交界を牛耳る公爵令嬢でもある。

日々大忙しだ。

「あら、最近あなたの庭が荒れているそうね?しっかり手入れなさい。」

今も王妃さまという名の目の上のたんこぶとお茶会をしている。ちなみに、『あなたの庭』は社交界のことで、『荒れている』というのは、問題のあるご令嬢がいるということ。

「ご安心くださいませ。すでに手は打っております。王妃さまにご心配をおかけして、胸が痛いですわ。」

「「うふふふふ」」

お互いに目を細めて笑う。王妃さまは、私の上司兼未来のお義母さま。話すだけで胃が痛いわ。

「それではフローディア、次の舞踏会を楽しみにしているわよ。」

その一言でお茶会が終了した。


社交界を荒らすご令嬢の名は、カロリーヌ。

最近社交界デビューを果たしたようである。

かなり可愛らしく美しい方であるが、私の仕事を増やす敵である。どんな風に荒らしているかはお察しの通り。人の婚約者を奪いまくっているのだ。

一応、私の間諜を送っており、カロリーヌさまが天然たらしか計算たらしか見分けようとしている。

舞踏会の準備で人が忙しい時によくも…

「フローディアさま。間諜から連絡が。」

私の侍女をしているエイミーの声で現実に引き戻された。なんとなく、エイミーは真剣な眼差しだ。深刻なことでも起きたのだろうか。

「何かしら?帰りの馬車の中で教えてちょうだい。」


「かのご令嬢が王太子殿下に接近し、話しかけたそうなのです。」

サァァーっと思考が冷えてくる。

「カロリーヌさまは死にたいのかしら?」

私の最愛の方に手を出したのなら、許さないわ。

それに、自分よりも身分の高い方に初対面で話しかけるのは無礼なこと。もう、天然たらしだろうが、計算たらしだろうがどっちでもいい。『穏便に解決』この選択肢が私の中から消え去った。

「それで、彼女に話しかけられた時の王太子殿下の反応はわかりますの?」

「それが…笑顔でカロリーヌさまのお相手をなさったそうです。まんざらでもなさそうに。」

これは、まずいわ。

普段の王太子殿下、いやネオバルトさまだったら相手になさらないはずなのに。もしや、ネオバルトさま浮気でございますか?

「カロリーヌさまに毒でも盛ろうかしら?」

「フローディアさまいけません!」

エイミーが慌ててたしなめる。

「大丈夫よ。わかっているわ。まだカロリーヌさまがネオバルトさまの御心を射止めた、と決まったわけではありませんものね。」

はぁ。ため息がこぼれるわ。

「あの、フローディアさま。」

「なあに?」

「大変失礼ではありますが、普段のフローディアさまならば、カロリーヌ嬢を社交界から締め上げ、社会的身分を剥奪しようとなさるのではないでしょうか?」

普段の私のイメージどんなんなのよ。でも、正解ね。

「エイミー、普段の私ならばそうしていたわ。ありがとう。我を忘れていたみたい。」

「いえ、それほどでもありません。王太子殿下が絡むと我をお忘れになるのはいつも通りですし。」

さすがエイミー。私のことをよくわかってる。

「では、いつも通りカロリーヌさまについて徹底的に調べることにするわ。情報屋を呼んでちょうだいな!」


・・・2週間後

王太子殿下とカロリーヌさまの恋の噂が社交界で話題なっている。私は二人の噂ではお邪魔虫らしいが気にすることはない。なぜなら、カロリーヌさまについてとんでもないことが発覚したからだ。そして、それを話に行くために今、王太子殿下の執務室に向かっている。 トントンッ

「フローディアですわ。お部屋に失礼しても構いませんか?」

「は〜い!」

返事をしたのはカロリーヌさま。

王太子殿下の執務室にいらっしゃるみたいね。

ガチャッ

「失礼いたします。」

「フローディア、僕に用事でもあったかな?」

ネオバルトさまのわざとらしい声かけに笑ってしまいそう。

「いえ、ただそちらのカロリーヌさまとの噂を聞きまして。ご説明願います。」

「フローディアさま!ごめんなさい!」

待っていました、と言わんばかりにカロリーヌさまが説明を始める。

「ネオさまと私は愛し合っているわ!だから、その噂は事実なんですっ!」

その言葉を聞きたかったのよ。

「ふ、ふふふ、あははっ!」

「ネオバルトさま。笑い過ぎですわよ。」

「すまない。フローディア。こらえきれなくて。あまりにも君の作戦通りに進むから。」

カロリーヌさまは、キョトンとしている。

「ネオさま?」

「ごめんね、カロリーヌ嬢。実は君のことを騙していたんだ。」

「へ?」


・・・遡ること1週間前

「なんですって!?カロリーヌさまは隣国の後宮の妃の一人ってどういうことなの!?」

情報屋からの報告は驚きのものだった。

急いで、ネオバルトさまに伝えねば国際問題になってしまうっ!淑女教育を忘れて、廊下を全力疾走し、ネオバルトさまのもとへ駆けつけた。

「ネオバルトさまっ!」

「フローディアだ!久しぶり。会えて嬉しいよ。」

「お話したいことが、あるのですっ!」

「実は僕も君に伝えたいことがあるんだ。」

「私から話しても良いですか?」

「もちろんだよ」

「近頃あなたとよくご一緒されてるカロリーヌさまは隣国の後宮の妃です。あまり深い仲になってはいけませんわ。」

まるで私が嫉妬しているから、仲良くしないよう言ってるみたいだ。まぁ、嫉妬しているのだけれど。

「カロリーヌ嬢が隣国の後宮の妃…!?」

やはりネオバルトさまはショックなご様子。

ですが、私の方がショッキングでしたわ!婚約者が別の女性といい感じだったのですから。

「隣国の間諜にしてはお粗末だと思っていたけど、後宮の妃だったのか…」

なんか予想していた感想と違う。『間諜』ってカロリーヌさまのことかしら!?

「?待って、『ご一緒』に『深い仲』だって!?

誤解だよ、フローディア!」

「私も誤解がある気がしてきましたわ。ネオバルトさま、カロリーヌさまと恋仲ですわよね?」

「全然違うよ、今日はそのことを君に伝えようと思ってたんだ。僕はカロリーヌ嬢のことを隣国の間諜だと思って、証拠を掴むために側にいたんだ。」

「それにしてはまんざらでもなさそうと報告がありましたが?」

「カロリーヌ嬢がけっこうチョロそうだから、僕が恋しく思っていると誤解させれるかな?と思ってだね、演技を少々。」

「なんてことっ!人の心を弄ぶだなんて!」

「ごめんよ、フローディア〜!僕の王室での仕事は外交なんだ」

そう言われると、仕方がない。罪な人ね。ネオバルトさま、カロリーヌさまはおそらくすっかり騙されてますわよ。

「ネオバルトさま、カロリーヌさまは間諜でしたか?」

「おそらくだけど、間諜ではないよ。情報を抜き取ろうとする感じがないし。でも、間諜じゃないなら何故ここにいるんだ?」

それは、かなり不思議だ。後宮の妃は後宮からでられないはずなのに。

「!ネオバルトさま。私、作戦を思いつきました!」


・・・今に至る

「カロリーヌさま、あなたは罪を犯しました。」

訳がわからないであろうカロリーヌさまをさらに混乱させる言葉をぶつけた。

「な、何を言ってるのよあなたっ!ネオさま!どういうことっ!!」

まぁ、そうなりますわよね。説明してあげましょう。

「カロリーヌさま。まず、あなたはネオバルトさまに騙されていたのです。なので、ネオバルトさまはあなたを愛していません。文句はネオバルトさまに言ってくださいな。」

「ちょっと、フローディア。僕はたしかにカロリーヌ嬢を騙していたけどね、決してカロリーヌ嬢に愛してるって言ったことはないよ。だから、愛し合っているというのは、カロリーヌ嬢の勘違いじゃない?」

ネオバルトさま、えぐい。

「そして、カロリーヌさまの犯した罪についてですが、それは偽証罪ですわ。」

「私、そんなことしてないっ!」

うん。カロリーヌさまはほぼ無実なのですが、ねえ…?私は『穏便に解決』しないと決めてしまったのです。

「先ほど、王太子殿下と『愛し合っているわ』とおっしゃいましたね?これは事実ではない、となると嘘。

偽証でございますね?」

もちろん誇張表現である。しかし、それがまかり通るのも権力である。

「そんな…!」

「あなたに選択肢を差し上げます。一つ、偽証罪を認め、隣国へ帰る。」

『隣国』と聞いた時をカロリーヌさまは目を見開いた。

「二つ、情報を洗いざらい吐く。そして、私の侍女としてこの国に留まる。どちらがよろしいですか?」

カロリーヌさま、あなたの命運を決める時よ。

「私、隣国に帰るわ。」

「何故?」

「私は隣国で王様のお妃さましてたの。私の国は一夫多妻制だから、唯一になれない。それが、嫌でこの国に来たのよ。」

たしかに、この国は一夫多妻制が認められていない。

「だけど、私に声をかけてきた貴族たちは婚約者がいたのに、私を当然のように愛人にしようとしたわ。それって、私の国と何も変わらない気がして。」

「で、何故王太子殿下に手を出したのです?」

答えによっては、偽証罪で投獄してやるわ。

「始めはこの国の王太子殿下の人柄が気になったからなんだけど、ネオさまに『私の恋人になって』って言った時に『婚約者がいるから、今は無理』って言われたの。だから、この人は一人を大切するんだ、と思って。私も大切にされたいって。」

「では、国にお帰りになると?あなたの国王陛下はお許しなりますか?」

「ええ。だって、私7歳の時から一緒にいるし。年差があるからに娘として可愛がられてるの。今回も許可もらってるし。」

カロリーヌさまは後宮育ちなのね。だから、世間知らずなところもあったのだわ。色々納得よ。

「カロリーヌさま、今回は私の婚約者に近づいたことを許します。二回目ありませんわ。」



「カロリーヌ嬢は国に帰ったね。」

「思っていたよりも早かったですわ。」

カロリーヌさまは荷物をまとめるとすぐに隣国へ帰っていった。こちらの国としては、隣国の情報が手に入って嬉しい、という感じだ。

「ネオバルトは、今回私はあなたがカロリーヌさまと浮気をされたのではないかと疑いました。」

「うん。説明しなくてごめんね。」

「私はあなたが浮気をしても、あなたを愛し続けますわ。そう確信しています。」

ネオバルトさまは、ニコッと笑った。

「フローディア、僕もだよ。」

ドキっ胸が苦しいわ。でも、嬉しい。

「では、私は舞踏会の準備をすすめますわ。」

結局、私達には仕事が待っている。

「わかった。僕はカロリーヌ嬢から渡された情報が正しいか調べるよ。舞踏会、楽しみにしてるね。」

ネオバルトさまに期待してもらえるなんて!

はりきってしまうわ。

「ええ!お任せください。それではまた。」

「またね。」




 


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