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TS支援系魔法少女  作者: LIN
第2章 不幸属性が付いたらしい
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08 学校で襲われる

前回のあらすじ:

意識を失っている間に戦闘終了。僕は何とか救助してもらえたけど酷い大怪我をしてしまったよ!

思いのほか妹の鈴音が心配性になってる? あ、入院費用は魔法省が出してくれるから安心だね!

 あのショッピングモール事件から1週間。僕はあれだけひどい怪我をしていたのに、なんと1週間で完治してしまった。

 どうやら魔法少女の回復力はすごいらしい。リハビリもほとんど必要がなくて、僕も医者もびっくりしたよ。


 というわけで現在。久々の学校である。

 正直1週間休んでいたので、授業には微妙についていけてないんだけどね? まあいいでしょ、どうせ大人になって特別役に立つわけでもなし。


 いや、実際のところ今はそれどころじゃない。帰ろうとしたら男子数人に取り押さえられて、一番奥の男子トイレに連れ込まれた。命の危機の次は貞操の危機かよ!


 どうしようか。メーヴェとフィアラルに助けを求める? でも今回のは個人的なピンチだし、巻き込むのは気が引ける。スマホ? とられましたが何か?

 いつもは鈴音と一緒に帰ってるから、多分鈴音は今ごろ下駄箱で待ちぼうけを食らっていることだろう、そっちも心配だ。


 「なあいいだろ、元男子なんだし。ヤらせろよ」

 「ほら大人しくしとけよ」


 隙を見て逃げ出そうと思っても、3人に囲まれてはどうしようもないか。せめて飛ぶことが出来れば逃げられるのに……! ああもう! 共鳴による長距離通信!


 「もしもし、こちらウェーブ。個人的なピンチなんだけど、暇なら助けてくれるとありがたい」

 「あ? なにいってんだこいつ」

 「魔法少女のインカムを探せ!」

 「……人間相手なの? すぐいく、場所はしゃべれる?」

 「ええっ、なに!? どういう状況!?」


 メーヴェもフィアラルも応答してくれた、ちょっと嬉しい。

 なお、この『共鳴』による通信は体内魔力の振動で再現しているので、周りの音は送信できるけど受信した音は周りには聞こえない。男子には突然僕が虚空に向かって喋りだしたように見えているわけだ。


 「県立南中学校、3階の一番むぎゅぅ」

 「喋るなこのっ!」


 あ、まずい。口を押さえられたら言葉を発せない。


 「急を要するみたいね、急ぐわ」

 「南中学校、えっと、どこ!?」

 「落ち着きなさいフィアラル、あなたはスマホで調べながらゆっくりでもいいから来なさい。私は知ってるから向かってるわ」


 ありがたい、来てくれるみたいだ。一応共鳴による魔力増幅を送っておく、飛んでくるだけなら必要ないかもしれないけど。

 って痛い痛い痛い、こいつら乱暴だな!? めっちゃ力ずくで脱がせてくるやん!


 噛みついてでも抵抗したいけど、正直恐ろしい。痴漢に遭った女の子は怖くて声が出せないって聞くけど、その気持ちが理解できる。

 ……でもメーヴェの魔力反応からして数分もあれば着きそうだし、それまでは全力で抵抗させてもらう……よっ!


 「いってぇ!? こいつ噛み付きやがった!!」

 「3階一番奥の男子トイレ、3人に襲われもがっ」


 今度は僕の服を巻きつけられた、喋れない……でも必要な情報は教えたし、来てくれるだろう。


 「大人しくしろ、この!」


 僕の顔を手で押さえつけられて、男子の方を向かされる。あ、これはチャンス。


 ゴッ


 「~~~ってぇ、あぶねーなこいつ!?」

 「噛みつきの次は頭突きかよ!」


 そりゃ、魔法少女になって体が頑丈になったからね。普通の人間と比べれば石頭なわけだし、頭突きすれば威力は抜群。

 ……来た。方向からして正面玄関から入ってないな、窓を突き破ってくる気か。


 バリイイイィィィィン!!


 「無事!? じゃなさそうね、吹っ飛ばすわよ!」


 と、ガラスを見事に粉砕した直後飛び込んできたのは――魔法少女メーヴェ。

 流れるように着地して僕の状態を確認すると、風の魔法で男子3人を吹っ飛ばしてくれた。


 「ま、魔法少女だ!!」

 「逃げろ、バレたらまずいだろ!!」

 「いってぇ、覚えてろ!!」


 吹っ飛ばされた男子はすぐに逃げて行った。……た、助かった。安堵で身体から力が抜ける。


 「……手遅れには、なってなさそうね。でも服がその状態じゃ、帰れなさそうよね。フィアラル、こっちは片付いたわ」


 言いながら、メーヴェは僕の拘束を解いてくれる。

 ……僕、魔法少女の女の子たちを助けたいから魔法少女になったはずなんだけどな。現実は逆になってしまったとは、情けない。


 「ごめん、助けてもらっちゃって」

 「ここはありがとう、と言うべきところね。大丈夫……大丈夫?」

 「え?」


 え、何だろう。めっちゃ心配されてるような。


 「あなた震えてるじゃない……怖かったのでしょう? もう大丈夫よ」

 「あ、う……」


 抱きしめられて、頭を撫でられる。何だろう、ものすごく安心した。泣きそうになるけど我慢、流石にそんな情けない姿は見せたくない。

 ……我ながらしょーもないプライドだと思うけどさ。


 「ありがとう、もう大丈夫だから」

 「あら、そう? 家まで送っていくわよ」

 「そこまでしてもらうわけには――」

 「そんなズタボロの服で歩いてたら、また襲われるわよ」


 あ、確かに。……仕方がない、今日はメーヴェに甘えよう。

 何だろう、メーヴェが傍で支えてくれるだけで絶大な安心感があるよね。まあ、今さっき助けてもらったんだし当然か。


 あ、そういえば。


 「フィアラルに連絡しないと」


 そう、もう1人の魔法少女フィアラルもこっちに向かってきている。

 呼びつけておいて悪いとは思うけど、メーヴェが付けてくれたからもう大丈夫って伝えないと。


 「えと、私も合流するね。そっち、大丈夫じゃなさそう」

 「ありがたいけど、いいの?」

 「うん。私も、心配だから」


 うーん優しいね。


 「フィアラル聞こえてる? 今学校は見えてる?」

 「多分アレかなって建物は見えてる」

 「そこから逃げる男子3人とか、見えたりしない?」

 「特には……あ、今、3人組走って出てきた」


 え? まさか。


 「足止めしなさい。ウェーブ、あなたは個室に入って鍵をかけておいて」

 「捕まえる気?」

 「当り前よ、女の敵を許すわけにはいかないわ」


 そう言って、割った窓から飛び出していくメーヴェ。……いつも1人だから、ボッチになっても何も感じないはずなのに――今は、今だけはとても心細くて、寂しかった。

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