24 妊娠報告
前回のあらすじ:杏ちゃんと二人きりになったよ!
「あー、あー……気の所為であって欲しかった」
「2本線が入ってる……ってことは」
うん……、妊娠検査薬が不良品とかでなければ、その……僕、妊娠しちゃった……。
「あ、杏ちゃん……どうしよう」
「え、ど、どうしよう」
ええと、ええええと。だめだ、2人そろって混乱して……ほ、報告すべきかなぁ?
いやでも……ど、どうしよう。暁さんに報告する? すべきだろうなぁ。
んで、杏ちゃん? なんで早速卑猥な妄想が始まってるわけ? 待って出産シーンで興奮するとか聞いてないんだけど?
「孕ませ、妊娠……私の子……ブツブツ」
「ちょ、あ、あの、口から漏れてる漏れてる」
「あっ……」
うーんこの。杏ちゃんは平常運転だなぁ。
まあ、ひとまず堕胎は無しで。この子達は魔法生物で魔法少女だから、無事に生まれてくれれば魔法少女として一緒に戦えるはずだから。
問題はやっぱり、僕に子育てとかの経験がないことだろう。杏ちゃんも言わずもがな……僕にちゃんと母親が務まるのかという不安が非常に大きい。
んで、暁さんとか、他の魔法少女への報告は……ううーん、どうしよう。言いにくいなぁ。
こっそり産んで育てる……それも難しいかな、僕にはあんまり自由がないから。
「ええーっと、というわけで……子供できちゃった」
「え、ずるい……」
「何がというわけで、なのかわからないのだけど。あとずるいじゃないのよ」
「……あっ」
しまった、みたいな感じで慌てて手で口を覆う鈴音。うん、メーヴェが困惑するのは当然として……妹よ、なぜにずるいと?
……もしかして、鈴音も僕を孕ませたいとか思ってたりした? いや、妹だしそれはないか。ないよね?
「えーっと、まず誰との子なのか聞いても?」
「杏ちゃんとの子、です」
「女の子同士よね? え、杏ちゃんはふたなりだった……?」
あー、混乱してるね、うん。
言葉で説明するのは難しいし、混乱を招きそうなので魔力パスでイメージを送信する。
「ええっと……え、そんなことできるの? 卵子を魔力で反応させて妊娠とか……」
「う、うん」
「フィアラル? あなたこれ、強姦になるんじゃ」
「ゑ゛」
あー、うん。まあ確かに、強引にはされたけど。
「まあ、一応恋人だから。それより……やっぱり報告すべき、だよね」
「あなたはそれでいいの……?」
「お姉ちゃん……」
え、鈴音もメーヴェも、何その目。
確かに、孕まされるとは思ってなかったけどさ。いいじゃん、フィアラルが楽しそうにしてたんだし。
「それで、産むつもりなの?」
「……うん。この子、ちゃんと僕のお腹の中で育ってるから」
僕のお腹の中で、僕の子供が……赤ちゃんがちゃんと育っていくのが、魔力反応でわかってしまう。これを知ってしまったら、もうこの子を殺すなんてことは、できない。できるわけがない。
もしかしたら、それがなければ堕胎していたかも……いや、どうなんだろう。そうでなくても、せっかく僕のお腹で産まれてきてくれた子を堕ろすというのは……。
「……計画変更ね。悪いけど、ウェーブは学校には行かせられなくなったわ」
「あ、うん。僕は別にいいよ」
「それから、昨日みたいに外で遊ぶこともできないわね。多少動く程度ならいいけど、外で万が一があったら大変よ……転んだだけでも一大事だわ」
「そう、だね」
うん……外で遊ぶのは楽しかったから、そこはちょっと残念かも。
でもメーヴェの言う通り、僕は今は僕だけの身体じゃない。自重しないと。
「それじゃあフィアラル、暁さんに報告しに行くわよ」
「えっ」
「アビスちゃんはウェーブと一緒にいてあげて」
と言って、メーヴェはフィアラルをつれて出て行ってしまった。
一緒にいてあげてって、僕まだ特にお腹が出てきたとかつわりが起こったりとかは無いんだけど。どうしよ。
「お姉ちゃん、大丈夫? 子育てとか、よくわかんないけど……一応私も、手伝うから」
「あ、たぶんそれいらない」
「へ?」
はい、と言うわけで産むことを決意したウェーブちゃんでした。
さて、魔力反応で産まれた子がどんな子になるのか、楽しみですね!




