20 それぞれの恋心
メーヴェに言われてフィアラルの心の中を覗いちゃったよ!
「ああああぁぁぁぁ……」
うん、悶えてらっしゃるねフィアラル。
なぜかって? メーヴェに指示されてフィアラルの心の中を覗いた結果、フィアラルが僕に恋をしているということが判明してしまったからである。
いや、申し訳ないと思ってる。僕もなんでフィアラルが真っ赤になってるか興味があって、メーヴェの後押しもあって覗いてしまった……。
「え、ええと」
「わすれてぇ……ころしてぇ……」
「良かったわね、想いを伝えられて」
「よくなぁい……」
ど、どうしよう。フィアラルがなかなか復活してくれない。
「鈴ちゃん、どうかしら? 杏ちゃん、とってもかわいくていい子なのよ」
「あ、うん……僕としてはその、嬉しいよ?」
「ほ、ほんとぅ……?」
「う、うん、かわいいし」
ま、まあうん。可愛い女の子に好かれるというのは、嬉しいものだよ?
フィアラルなら、いいかなって思うし……あ、いや、杏ちゃんか。杏ちゃんなら、かわいくていい子だし。
でも、なぁ。
「ふふ、両想い成立ね、付き合う?」
「あー、えっと。えっと」
「ああぅ……」
い、いきなりそんな、軽いノリで付き合う? なんで聞かれても。っていうか、別に両想いではないと思う。
だって、僕は、メーヴェが――
フィアラルの感情を読み取ってみると……あー、あー。妄想が捗ってるねこれ。
僕と付き合ったあとのことを想像してさらに真っ赤になってると言ったところか……想像力が逞しいね。女の子同士だから結婚はできないよ?
まあ、ひとまず僕以上に混乱した上に妄想にふけっているフィアラルのおかげで、僕は冷静になれた。自分以上に混乱している人がいると冷静になれるって本当なんだねー。
「メーヴェ、ひとまずこの話は置いておこうか」
「えぇ……」
メーヴェが呆れたような声を出すけど、まあ気にしない。
「……まあ、ちょっとやってみるか。メーヴェ」
「?」
「ちょっと失礼するよ」
そう言って、僕はメーヴェにも強引に魔力パスを接続。
更にちょっと奥の方まで失礼して、強引に精神を包みこんだ。
真っ白な世界に、メーヴェと2人きり……この世界は僕とメーヴェだけの、精神世界。
なお現実の方では無言で見つめ合ってるだけ。あー、うん、鈴音が困惑してるね、早くしないと。
「メーヴェ」
「えっと、これは……?」
「心の中の世界、って言ったらわかるかな。僕とメーヴェの精神を直接繋いで、二人きりで話ができるようにしたんだ」
「あ、そうなの……私と、二人きりで?」
「うん」
まあ実際には、メーヴェの心の中を覗いて解決する方法もあるんだけど。本人に黙って心の中覗くのはどうかなって思うし。
いや、実際のところこの話をしたら気まずくなるんじゃないかとか、結構怖いんだけど……まあ、僕を好いてくれているフィアラルという存在がいるから、踏ん切りがついたというか。
僕が話したいこと、それは――
「その、好き……だから。付き合ってくれたり、とか」
「えっあっ、ごめんなさい」
なんということでしょう、3秒でフラレてしまった。いや、悩む時間がまったくなかったのがなんというかまた……。
「私は、恋愛とかそういうのをするつもりはなくて……それに、あなたには杏ちゃんが……その、とってもいい子だと、思うわよ?」
「いや、うん。そうだね……」
それを言われると、弱い。
実際のところ、杏ちゃんの想いに応える前に僕の気持ちを整理というか、ちゃんと踏ん切りつけておきたかった……というのは建前で、メーヴェと一緒になれたらなーなんて希望的観測をしていたわけだ。
うん……伝わってくる感情から、メーヴェは本当に恋愛に興味がないみたいだし、これは本当にだめみたいだね。
……杏ちゃん、か。たしかにかわいいしいい子だと思うけど、あの子はどうして僕を? まあ、悪い子じゃないのは確実だから、あの子と付き合うのもありだとは思うけど。
そも、女の子同士で付き合うっていいのかね。杏ちゃんには、僕なんかよりももっとかっこよくて頼りになる男性と一緒になったほうが……あー、いや。好きな人と一緒になるのが一番の幸せか。
「うん、わかった。僕の恋心が粉砕されて、これで踏ん切りがついたよ」
「あ、う、ごめんなさい」
「大丈夫……ごめんね、なんか。それじゃあ、今度は杏ちゃんと話してくるよ」
「あ、うん」
それじゃ、杏ちゃんの心の中を覗いてくるかな。
心の中を覗いた結果、恋心が判明。
答える前にメーヴェに告白して、見事に振られちゃったウェーブちゃんでした。